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誤字報告いつもありがとうございます。
「よし、誰にも見つかってなかったようだね、おじさん回収よろしく」
「おう、一応発動されたりしても大丈夫なように牢屋に入れておくか。あの空間なら物も置いていないし平気だろう」
「それで美鈴、他に不穏な魔力を感じる場所とか分かるかしら?」
「んー、私もまだそこまで精度が良いわけじゃないからね… 近づかないと分からないかな」
「そう、それじゃあ他の魔道具は探して歩くしかなさそうね」
「これ1個だけかもしれないぞ?」
「とりあえずギルドに持って行こう。魔術師ギルド? だかが解析するらしいからね」
「魔術師ギルドなんてあったんだなぁ… 今までの町じゃ見かけなかった気がするけど」
とりあえず最初の用件が済んだので、エス〇ードを駆り出して王都へと戻る。王都の防壁や城なんかが目視できる距離なので、4~50㎞/hで走って1時間かからないくらいだ。
「今は午後3時前… これを引き渡してすぐに王都を出れば、今晩は森の中でマイホーム入りだな」
「それはそれで問題無いんじゃないかしら? それよりも、あるのかどうかわからない物の探索の方が大変だと思うけれど」
「それな、まぁ昨日見つけた時みたいに、魔物を狩りながら森の中を進んでいけばいいんじゃないかって思うけど」
「魔術師ギルドの方で魔道具を解析したら、仕様が分かるかもしれないよね。複数の魔道具を連携させるには半径何キロ以内とか、そんなやつ」
「まぁあるかもしれないけど、解析を待つのはダルそうだな」
「まずはコレを届けてからで良いんじゃないかしら、もしもそういった範囲とかがあるのなら、ギルドマスターが別の冒険者を手配するだろうし」
「それもそうだな」
馬車が付けたであろう轍にタイヤを合わせ、王都へと急ぐのだった。
「おう、早かったな。早速だが預からせてもらうぜ」
ギルドマスターは魔道具を受け取ると、横で待機していた先ほどの魔術師ギルドの人に渡す。
「それでは早速鑑定してきます。結果はここと王城でいいんですよね?」
「ああ、内容にもよるが、さすがにこれは内々で判断して良い物じゃないだろう。それで頼む」
魔道具を受け取った魔術師ギルドの人が頷いて部屋から出ていった。
「んじゃ俺達は、当初の予定通り森の捜索でいいのかな?」
「ああ、魔術師ギルドの方の鑑定、解析が終わるまで待ってられんからそれで頼む。一応2日後にはギルドに一度顔を出してくれ、鑑定結果が出ていると思うから」
「わかった。それじゃあこっちは森にいるからその間の連絡は取れないものと思ってくれ」
ギルドから出る。時刻は4時半を過ぎたくらい、まだまだ明るいが、普通この時刻から町の外に出る奴は少ないようだ。
「今日は森に着いたら終了かな? 時間的に」
「そうだな、さすがに暗い中で森の中ってのは良くないだろう。ぶっちゃけ俺は虫が嫌いだからな」
「ああ、確かに嫌だよね。耳元でプーンとかって羽音が聞こえたら… 暴れちゃうかも」
「おじさん、今更だけどマイホームに虫除けスプレーなんて物あったかしら… いくら聖女様が居ると言っても、この世界の蚊に未知の伝染病とかうつされるのは勘弁してほしいわね」
「いやぁ、虫除けスプレーなんて物は見た事無いな。でも強化魔法を使っていれば、蚊程度の攻撃なんてどうにでもなりそうじゃないか?」
「そうだけど… 気持ちの問題よ」
確かに蚊という生き物は、あらゆる病原菌を媒介する事で有名だ。それ以前に、寝ているところに羽音が聞こえた日にゃ、殲滅するまで落ち着いて眠れないからな!
蚊取り線香が非常に有効なので、時期になると常備していたもんだ。
そんなこんなで1時間が経ち、目の前には先ほどまで入っていた森が広がっている。そして日はすでに傾いており、もう間もなく沈んで真っ暗になるだろう。
「さて、この森の奥行きがどれほどのもんだか知らないけど、魔物を引き寄せて王都に何かするのが目的ならば、奥の方には設置していないと思うんだよな」
「そうね、むしろ奥にいる魔物をこっちに引き寄せたいと考えるでしょう」
「…となると、さっきの魔道具があった位置くらいの場所から王都に沿って移動してやれば見つかるのかもしれないな」
「それじゃあ明日は魔道具のあった位置まで行ってから、王都と平行に移動する感じかな?」
「多分それでいいと思う。そのついでに魔物が居れば狩りをする… そんな感じで行こう。魔力の探査は美鈴に任せる事になるが…」
「それは構わないよ、出来る事を出来る人がやる… 団体行動の基本だよね」
森に入る手前で車から降り、ガレージに車庫入れをする。そのままマイホームに入って本日の営業は終了だ。
マイホームに入ると、3人それぞれが散らばって行動を開始する。さすがに2ヶ月も暮らしていると、それぞれの行動ルーティンが決まってくるもんで、個人行動が始まる。
美鈴はクリーンの魔法を使って自身を清潔にし、そのまま厨房に入っていき夕食の支度を始める。意外にも美鈴が色んなレシピを知っていて、すっかり夕食担当になっているのだ。
俺が担当すると… カレーとチャーハンが交互に来るので、早々に飽きられてしまったのだ。
霞は夕食までの僅かな時間を使い、トレーニングルームに入ってしまう。勤勉なのは良い事だけど、オーバーワークになっていないか最初は心配したもんだ。しかし、誰がどう見ても、俺達3人の中では一番体力があるのは歴然で、日中の行動では運動量が足りていないとの事だった。
まぁ、動く分食べているので、カロリー消費のためという側面もあるそうだ。
俺はというと、日によってまちまちだ。夕食前にお風呂に入る時もあれば、車用の燃料、ガソリンの残量をチェックしたりして明日に備えたりしている。
もちろんトレーニングもしているぞ? 持っている職業?加護? どっちでもいいが、その関係で、俺が一番戦闘向きじゃないのは理解しているからな。
もしも、霞でも対処できないような魔物が現れた場合は、即退散となるだろう… そんな時、体力が無ければ逃げる事も出来ないからな。
それに… この世界に来てから起きている現象、なぜだか体が引き締まっていくこの現象に、実は喜びを感じていたりしている。
ビールっ腹でたるんでいたはずの腹がすっかり引き締まり、中学や高校時代のようにシックスパックの腹筋が出来上がりつつあるのだ。
他にも腕とか、血管が筋肉に押し出されて、かなりマッチョな感じが出てきている…
風呂場で秘かにポージングしているなんて事は内緒だ。