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誤字報告いつもありがとうございます。

 SIDE:冒険者ギルド、グリムズ王国王都支部ギルドマスター


「それは本当か?」


 先日持ち帰られた王都の近郊にある森の中にあったという魔道具、その魔道具に描かれていた魔法陣を模写した絵の解析結果を聞きながら頭を抱えたくなっていた。


「間違いないですね、これは魔物寄せの魔法陣です。悪意のある何者かが設置したと考えるのが妥当かと… 恐らく複数を設置していると思われます」

「全く… 王都を狙おうなんて、この国の者じゃ無いな。アニスト王国の事は報告を受けているが… いくらなんでも行動が速すぎるだろうから、他の手の者の可能性もある…か」

「大至急これらを回収しないと王都が危険に見舞われます、場所の特定は?」

「これを発見した冒険者には夕方会う事になっている、そいつらなら見付けた場所が分かるだろうし、ある程度の説明は受けている。この魔道具は何個設置すれば効果的に機能するんだ?」

「そうですね… はめ込んでいる魔石の大きさによりますが、4~5個もあればかなりの数の魔物を引き寄せられるのでは…と」

「4~5個か… おい!ちょっと受付に行って『雪月花』の連中がいないか見に行ってくれ、もしいたならすぐにここに連れて来てくれ」


 近くにいた職員に声をかけておく、約束は夕方だが、朝から来ているという報告は受けている。すぐに捕まれば、今日この後行動してもらうしかない。


「ですがギルマス、当然のように魔道具というのは高価な物です。大量に設置されているとはとても思えません」

「しかし、実際にこうして王都近郊に設置されている。王都を攻めるつもりがあるという事だろう… もしそうなら、そこでケチる事をすると思うか?」

「うーん… さすがにそこまでは予想できませんが、相手によるとしか。もしも敵がどこかの国家であり、この国を攻め落とそうとしているならケチる事は無いでしょうね」

「そこなんだよな… これがクーデターの類であれば、必要以上に王都を壊したりはしないだろうし、ただ魔物を誘導して、軍が動いて手薄になった王都を強襲… そんな感じだろう。とりあえず調査が先だな」


 これは王城にも報告書を上げないとまずい案件だな、書類に関してはサブマスにやらせるとして… まずは『雪月花』の連中に魔道具の回収を頼み、1個だけでも持ち帰ってもらって解析するしかないか…





 SIDE:来栖大樹


「『雪月花』の皆様ですね? ギルマスから緊急での呼び出しが出ています、至急来てください」

「お? 調査していた魔道具がそれほど危険な物だったとかか?」

「はい、詳しくはギルマスの方から…」


 俺は2人に目配せをし、ギルド職員の後を付いていく事にした。

 魔道具が危険だった? まぁ魔法に関しちゃ俺達は素人以下だが、ギルドマスターが慌てるくらいの何かがあったって事なんだろう。

 回収は頼まれると思っていたけど、もしかしたらそれ以外にも何か頼まれるかもしれないな… とりあえず注文した武器が完成するまでは王都を出られないんだ、その間であれば仕事として受けるのも良いかもしれん。

 問題は… 数日所か何ヶ月とかかる仕事だった場合なんだよなぁ、ここは要確認だな。



 ギルド職員に連れられて入った部屋には、ギルドマスターとローブを羽織った男がいた。まぁギルドマスターと一緒にいるんだから怪しい奴というわけではないんだろう、さてさて… 何が起こったのか聞かないとな。


「さて、約束の時間よりだいぶ早いが、呼び出してすまんかったな。先日の魔道具に仕込まれた魔法陣の解析がついさっき分かったところなんだ、それゆえの緊急招集だと思ってくれ」

「それは別に構わないさ、ちょうどギルドにいたんだしな。でもまぁ、こうして慌てて呼び出したって事は、危険な魔道具だったって事かい?」


 ギルドマスターが神妙な顔で話を進めてくる、俺達『雪月花』にリーダーの設定はしていないが、対外的には最年長の俺が前に出るしかないからな… 霞には後方で話を聞きつつ、考えをまとめてもらうとしよう。


「あの魔道具はな、魔寄せの魔法陣が描かれていることが分かった」

「魔寄せ? そのまんまの作用があるのか?」

「ああ、そのまんま、魔物を呼び寄せる効果がある魔法陣だったんだ。本来であれば、森に巣食う魔物を一網打尽にするために開発された物なんだが… 当然悪用する事例も多くあってな、最悪は国攻めにも使われたという記録もあるんだ」

「ああ、なるほど。魔物を呼び寄せて消耗を狙うって事か… 確かにそのやり方なら味方の損耗は考えなくていいからな」


 ふむ、魔物を呼び寄せる効果か… 確かに使い方次第では危険物扱いになるよな。


「本来であれば、魔道具というのはコストが大きく、そこらにいる悪党程度じゃ用意できる代物じゃないんだ。しかし、わざわざ王都の近くにそれを設置してあったという事は、よほど金を持っている者が主導しているか、最悪はどこか別の国家が何かを成すために用意したという可能性まで出てくるんだよ。

 そこでだ、魔道具を設置した者が何を考えているかは分からんが、起動されていないという事は時機を計っているというのが濃厚な線だ、お前達『雪月花』には大至急魔道具の回収を依頼したい。お前さんは収納持ちだと報告は来ているから本当に丁度いい、発見済みの魔道具を回収後、速やかに収納して隔離し、ギルドに持ち込んできてくれ」


「私達が見つけた魔道具なら場所も把握しているから数時間で戻ってこれるけど、それだけでいいのかしら?」


 霞が前に出てきて会話に加わってくる、何か気になる部分でもあったのかな? まぁ頭の良い霞の言う事だ、黙って聞いてみるか。


「さっきの話の通りだと仮定すれば、魔道具が1個だけというのは考え難いと思うのよね」

「その通りだ、すでに見つかっている魔道具は、魔術師ギルドが解析するために急ぎで回収してもらいたいんだ。魔法陣の書き方や魔道具自体の作り方で、関与している者がどんな連中か解るかもしれないからな。それが済んだらさらに王都周辺の捜索をやってもらいたい」

「なるほど、それなら急いだ方が良さそうね… おじさん、もう出る?」

「そうだな、注文してある武器を受け取る前に騒ぎを起こされちゃかなわんから、出来る事はさっさとやった方が良いだろうな」


 そんな訳で、昨日見つけて埋めておいた魔道具を回収に行く事になった。緊急事態なので依頼料とかの話は出来なかったが、そんな事よりミスリル装備の方が大事だ… すぐに終わらせよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一気読みしました。大変面白いです。ありがとう!
[一言]  一気にきな臭くなってまいりました。
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