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誤字報告いつもありがとうございます。
肉や野菜などの串焼きを数本買い、人ごみから離れた所で一息入れる。俺は猫舌だからな、熱々の串焼きはすぐには食べられないんだよ。
「どれどれ、そろそろ冷めた頃だろう」
一体何の肉かはわからないが、普通に売られているんだから体に悪いもんじゃないだろう。
とりあえず鶏肉っぽい塊が刺さっている串からかぶりつく… うん、思ってた通り味付けは薄いな… せっかくなので一口目は素材の味を堪能してみる事にした。
うーん、なんというか焦げた味しかしないかもしれない。ダメだな、塩胡椒を振りまこう。
皆が思い思いの屋台に向かって行動をしたため、今は俺1人で塩胡椒を独占している状態だ。まぁ必要になれば向こうから取りに来るだろうし、他所から見つけやすいように離れた所にいるんだからな。
心の中で言い訳をしつつ、買ってきた串焼きに塩胡椒をかける。串のまま屋台から出されたため、どうかけても地面にこぼれてしまうが仕方ないだろう。
「ふむ、さすがは万能調味料。これだけで十分イケるんだからすごいよな」
それにしても… クリアされたダンジョンは消滅してしまうのか。どうせ夕方にはギルドマスターと会う約束があるんだ、その時にでも詳しく聞いておいた方が良いかもしれないな。
戦闘訓練をするならば、どうせなら戦う魔物は強い方が良い。そうなると必然的に深い階層になるだろうから、うっかり消滅って事にならんよう気を付けるしかない。もしもギルドで消滅を望むのであれば… その時は遠慮なく攻略を進めればいいか。
しかし… ビリーカーンのダンジョンもマインズのダンジョンも、ハワード伯爵の領地なんだよな… ハワード伯爵にも意見を聞いた方が良いのかもしれないな。
ダンジョン産業での利益も領地の収益に数えられているなら、突然ダンジョンが消えたりしたら発狂するかもしれないし…
まぁこれについては、まずは女性陣2人の意見も聞かないとな。とりあえず今は腹を満たす事を考えるとしますかね。
鞄から水の入ったペットボトルを取り出し、口の中にある塩気を流し込んだ。
さて、次は何を食べてみようかね… もう一度露店の並びに突撃して物色してこよう。
ぶらぶらと露店を眺め、気になった物を購入して食べてみる。縁日のような活気はないが、それでも王都の民は買い食いしにやってきている。
人の流れを見ながら少しだけボーっとしてみる… そういえば異世界に召喚されてから、こうして町に溶け込むような行動は初めてかもしれないな。こうして見ていると、いろんな風貌の人がいるんだな…
「そういえば、ドワーフは見たけれど、それ以外の種族って見た事無いな。ギルドに戻ったら調べてみるのも良いかもしれない」
そう、王都で見かける人はほぼ全てが人間と思われる。俺に知識が無いから同じように見えてるだけで、違う種族もいるのかもしれないが、俺には人間に見えているのだ。
「あっ おじさん見つけた! なんか美味しいものあった?」
「おう、肉と野菜の串焼きしか食ってないからわからんな。塩胡椒があって良かったよ」
「私なんてスープを食べるために、木製の器を買っちゃったよ。そして余り美味しくなかった」
「まぁ味付けの違いはしょうがないな。むしろ日本人の味の好みの方が特殊なんだと思うぞ?」
「それはあるかもねー、霞は?」
「いや知らん、まだ何か食べてるんじゃないか?」
「霞も結構量食べるからね… 物色が止まらないのかもね」
なんて言っていれば、噂をすれば影が差す。霞がこっちに向かって歩いているのが見えた。
「お腹は膨れたけれど、満足したとは言えないわね」
「日頃良い物食べてるから、舌が肥えすぎてるんだよ」
「飯も終わったようだし、ギルドに戻るか」
ランチタイムが終わり、ギルドに戻る事になった。途中人気のない場所でトイレの扉を出してトイレタイム、町の人間はトイレはどうしているんだろう… そんな事を考えていた。
ギルドに戻ると入り口付近にあるテーブル席に着いて情報の共有を行う。
「さて、それじゃあ私から報告するわね。まずは大物、この国からずっと北に向かうと魔境と呼ばれる地域があるらしいわ。そしてそこには危険度Bランク以上の魔物が跋扈しているとの事よ… なんでもドラゴンの目撃情報もあるらしいわ」
「おお、ドラゴンなんているんだね。それはまさしくファンタジーね」
ふむ、ドラゴンですか… さすがに霞でもドラゴン相手に立ち向かおうなんて言わないだろう。ドラゴンと言えば、空を飛んで火を吐き、とてつもなく巨大で最強の生物だろう? 対物ライフルで鱗を撃ち抜けるんかねぇ…
「ダンジョンについては、結構いろんな国にあるんだって。アニスト王国にもあるって話だよ? もしかしたら勇者連中はそこで訓練しているかもね」
「そうなのね… 訓練中に大怪我でもすればいいのに。そして美鈴の貴重さを後悔するといいわ」
「そういえば、賢者って職業は回復も出来るんだろ? 怪我しても大丈夫なのかもな」
「でもゲーム的な観点で言えば、賢者って言うのは何でもできると見せかけて、魔法使いの最強魔法や、僧侶系の最強治癒魔法は使えないって言うのが多いんだよ。そこらへんはやっぱり専門家には劣るって感じかな」
「とはいえ、あくまでもゲーム的な観点での話だろ? 実際はどうなっているかはわからんからな。とにかく、あの勇者達も力を付けている可能性は高いんだし、負けてられないよな」
「そうね、個人的に言えばビリーカーンダンジョンが近いから、戻って訓練の続きがしたいわ」
「そうそう、魔道具に関しては情報が隠蔽されているのか全然無かったんだけど、ダンジョンについてはそこそこ情報があったんだ。 中でも目を引いたのは、ダンジョン最下層のボスを倒すと、ダンジョンは消滅するんだそうだ」
「それは本当? だとすると… 勢いで消滅させたらギルドから恨まれるかもしれないわね」
「それに関しては、夕方の話し合いの時にギルドマスターに聞いてみるつもりだ。ビリーカーンやマインズで試すなら伯爵の意見も聞かないとまずいだろうな」
「そうだね、ダンジョンから持ち出される素材だけで産業が出来上がっているもんね」
「どこかに未発見のダンジョンでもあればいいんだけど… そんな都合よく見つかる訳ないよな」
「おっ、おじさんがフラグ立てたよ! 新規ダンジョン… 見つかるかも?」
「探しても無いのに見つかる訳ないだろ!」
全く… でも見つかると都合が良くてありがたいのは確かだ。 でも、探す作業のために時間を使うのはちょっとね… まぁとりあえず、夕方の話し合いをしてから考えるとするか。魔道具探しとか面倒だな…