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誤字報告いつもありがとうございます。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。何でそこまで嫌がるんだ? ギルドマスターからの指名依頼なんて誰もがやりたがる上位ランクへの登竜門なんだぞ?」

「え? ランクに興味ないからな」

「ダンジョンで戦闘訓練ができるから重宝してただけよ」

「うんうん」


 なにやら唖然としているギルマス… 上位ランクへの登竜門という事なら、喜んで食いついてくると思ってたんだろうな。


「それに… 冒険者じゃなくなればダンジョンに入る事も出来なくなるんだぞ? それでもいいのか?」

「そういう事なら仕方がないよな」

「ええ、外にいる魔物を狩って訓練するわ」

「うんうん」


 ギルマスが困った顔をしているが、筋肉がそんな顔をしても全然似合ってないから止めてくれ。


「それじゃ、一応発見者としての義務として、魔道具があった場所だけ伝えておくよ。後は上位ランクに興味のありそうな奴を使ってくれ」

「待ってくれよ、あーもうわかったよ。ビリーカーンのギルマスの手紙にもあったけど、普通の冒険者はランクを上げたがるもんなんだぞ? その方がハクが付くし良い仕事も舞い込んでくるからな。お前たちは一体何をしたくて冒険者になったんだ?」

「え? 身分証が欲しくて?」

「ダンジョンで訓練するため?」

「うんうん」


 美鈴はネタが無いのか、俺と霞の言う事に肯定しかしていない。いや、多分口を開くといつもの毒舌が発動しそうなのを堪えているんだな… あくまで予想だけど。


「まぁそう言わんでくれよ、ビリーカーンダンジョンの最高到達点への攻略者をだな、いつまでも低ランクにしておくのはギルドとしてまずいんだ。ここはちょっと乗ってくれよ」

「別に手伝うくらいなら構わないけど、ランクを上げるのは嫌だな。Cランクから急にギルドからの支配が強くなっているからな… まぁそれに見合う特典もあるんだろうけど」


 うんうんと頷いている美鈴と霞。

 町への出入りのために、身分証にもなるギルド証を得るために冒険者登録をしたのであって、冒険者ギルドという組織のために働きたいわけじゃない。

 とりあえず希望していたミスリル製の武器防具が間もなく手に入るから、それさえ終われば別に町に出入りする必要はなくなると思っている。 つまりギルドを退会しても問題は無いと… 強いて言うならば、ギルドに登録していないとダンジョンに入れなくなるという事だけが困ると言えば困るかな。


 しかしまぁ、それはそれで未開の地に行けば、普通の冒険者では手に負えないような魔物が蔓延っているという。そういった地方に出向いて訓練をするという選択肢もあるんだよな。


 まぁこれは、マイホームベースという移動拠点を俺が持っているからできることなわけで、誰にでも出来る事じゃない。

 普通未開の地に行くのであれば、水や食料、武器防具その他道具。かなりの大荷物をもっての移動を余儀なくされるものだ、そんなんだと全然前に進まないからな。


 何より、俺達…というか、俺の目的は… 最初はアニスト王国の処刑から逃れ、帰還の手掛かりを探す事だったんだけど、今ではすっかり報復の事ばかりを考えている。

 周辺国にアニスト王国の事を報告し、各国それぞれに対応させようと思っていたけど、気が付けば自分の手でやってやろうなんて物騒な事を考えている。


 それを成すためには、こんな所で変なしがらみを作るわけにはいかないからな。ギルマスには悪いが、ランクアップは諦めてもらおう。


「ま、普通の依頼というなら受けても構わない。ランクアップは無しで頼む事になるがな」

「ちっ、お前はなかなかの頑固者だな。まぁいいだろう、とりあえずもらった絵に描いていた魔法陣については現在確認中だ。明日の夕方には詳細が分かると思う、その頃に一度来てくれるか?」

「明日の夕方ね、了解した」


 そんなこんなで、ようやくギルドを後にしたのだった。


「なんか今日は、久々に濃密な一日だったねぇ」

「まだ今日は終わってないけどな」

「でもアレね、今後はギルドに頼らない訓練方法を考えなければいけないわね」

「そうだねー、最悪はギルド辞めるって事もあり得るわけだから、野生というか野良というか… そんな感じの強い魔物の発生場所を調べておく必要があるかもね」

「それは明日調べてみるわ。用事があるのは夕方なんだし、それまでの間に出来るだけやってみるわ」

「んじゃ、本日はこれまでって事で。どうする? 今なら町の外に出られるギリギリだけど」

「そうね、正直言って町の外の方が安心できる気がするわ」

「んじゃそうしよっか」


 夕暮れ時、門が閉じられる前に町の外へと出ていった。


「明日はギルドに行くから、あまり遠くない方が良いだろ。防壁の陰になってるところでさっさと入ってしまおう」

「そうね、別に遠くても構わないけど… おじさんに任せるわ」

「そうか? そういう所面倒がらないよな、若いのに」

「んー、確かに日本にいた時なら迷わず同意していたと思うけど、今の体力なら全然気にならないわ。むしろ動きたいくらいよ」

「そうか、美鈴はどうだ?」

「私も同じかなー、多少歩いたって気にならないよ」

「そっかそっか、それじゃあ安全のために少し離れておくか」


 防壁に阻まれて、門から死角になるような位置取りをしつつ距離を取り、更に立っていた木の陰でマイホームに入った。


 さて、夕食にはまだ早いから先に風呂にでも入っておくか。引き籠り10日の疲れというか、魔力が回復しきっていないかもしれないから、制作はしない方が良いな。


「先に風呂に入ってくるわ、今日の制作は無しで頼むぞ」

「「了解」」


 女性陣が何やら話をしているのをしり目に、浴室へと行くのだった。







 SIDE:美鈴と霞


「あの魔道具の効果、いったいどんなものなのかね」

「はっきり言って分からないわよね、私達はそういった知識は全然足りていないから」

「ま、明日の夕方には分かるんだろうけど… どうする? これがどこか違う国とか組織の陰謀だったとしたら」

「それは考えすぎじゃない? ライトノベルって言うのはそういう事ばっかり書いてるの?」

「書いてる書いてる、良くそこまで人間の深い悪意を表現できるよね!っていうのが結構あるよ」

「……なんか怖いわね」

「ま、そんな事もあるかもって気構えしといた方が良いかもしれないね。おじさんなら人生経験豊富そうだから、私とは違う考え方をするかもしれないけど」

「そうね… 私たちの倍以上先輩だからね」

「んじゃトレーニングするかな」

「そうね、私も行くわ」


 2人はトレーニングルームに入っていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  はじめはちょっと嫌な感じの登場人物達でギスギスした関係だったのが、段々友情と言えないまでも仲間意識が深まっているところが好きです。親しき仲にも礼儀あり、余裕と積み重なる信用がないと仲が良…
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