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誤字報告いつもありがとうございます。
サクサクと歩いて森から脱出、そしてすぐに車に乗り込み王都へと向かう。
さっきの道具は埋めておいたが、一応スマホで撮影をしておいた。上手く説明できなくて、話が伝わらなかったら写真を見せてやろうかって話し合いをしている。
「でもさー、最悪写真見せるって言ったってどうするの? もし問題のある物だった場合、毎回見せろって事になるんじゃないかな。最終的にはヨコセってなるかもよ?」
「それは嫌だなぁ。んじゃ絵でも描くか? 最初に言っておくけど俺に絵心は無いぞ!」
「特徴さえ伝わればいいんだろうし、絵心は必要ないんじゃないかな。まぁ必要に迫られれば私が描くよ」
おっと、王都の防壁が見えてきた。さすがに車の事を王家に知られれば… 徴収とかあるだろうな。
「よし、んじゃ降りて歩くぞ。ギルドで時間がかかるようなら今朝までいた場所に行ってマイホームに入ろう」
「「了解!」」
SIDE:勇者君
「よし、それでは今日の訓練内容を伝える。今日は近郊のダンジョンに入ってもらい、実際に魔物と戦ってもらう。もちろん3人での連携も訓練に含まれるのでそのつもりでやってくれ」
今までの2か月間、ずっと城内にある訓練場で騎士を相手に訓練していたが、とうとう魔物と戦う事になるのか… それに賢者と大魔導士のやつらと会うのも2か月ぶりだ。
俺はそれなりに訓練を積んでいたから魔物が相手でも平気だと思うが、他の2人はどうなのか… 特に大魔導士の奴は肥満体だったからな、あんな奴に合わせて動くのだったらトロ臭くて面倒になりそうだ。
騎士に案内されて馬車が置かれている場所にやって来た。すると、名前は知らないけど賢者の奴が先についていたようだ。
「よう、久しぶりだな。訓練の調子はどうだ?」
賢者の奴が馴れ馴れしく話しかけてくる、正直お前などどうでもいいが、まぁ俺の役に立つというなら使ってやらんでもない。まず変に角が立つようなことは止めて、様子見をするべきだな。
「騎士を相手に訓練してたけど、まずまずだと思うぞ」
「そうか、俺も魔法の訓練はやっているけど… 俺以上の使い手が居なくてつまらなかったぜ」
なんだコイツ… 俺は出来る奴だとアピールしてんのか? 勇者である俺を相手にマウント取ろうとしてるのか? あまり舐めないでもらいたいもんだ。
思わず「フッ」っと声が漏れてしまった、それが聞こえていたのか、賢者の奴は目を細めて睨みつけてくる。 しょうがない、空気を変えるか
「ところで、大魔導士の奴はまだなのか? 随分太っていた記憶があるんだが… 大丈夫なのかね」
「まぁそれは… 俺も気になってた事だけど、2か月も訓練すれば多少は絞られたんじゃないのか?」
なんて軽口を聞いていると、大魔導士が現れた。
「お…お前、本当にあの大魔導士なのか?」
そこに現れた男は… まだまだ太いが、以前の記憶にある大魔導士よりも脂肪が半分近く削れたような姿だった。
「ふひ、そうだよ、俺が大魔導士だ。体重が随分と減ったから見違えたんだな? まぁそれはしょうがないね。ふひ」
姿が多少見れるようになったと言っても、相変わらずキモイなコイツ… ふひってなんだよ。
しかしアレだ、以前見た肥満体で、常に汗をかいてるような感じでなくなってたのは良い事だ。そんな奴とダンジョンに入るとか嫌だったからな、こいつも使えるうちは使ってやるか。
馬車に乗せられ移動を開始する。
近郊のダンジョンとは言え、馬車だと1日かかるらしい。食料などを積んだ馬車も同行しているし、ダンジョンの前には冒険者が作ったと言われる町があるという… それなら食べ物に関しては問題ないだろう。
それよりも… 他の連中はどこに行ったんだろうな。武闘家と言われてた女… 結構好みだったんだが。
まぁその内会えるだろう、その時までに勇者としての力を見せつけて、俺の愛人にでもしてやるとするか。王女は最近顔を見せないから欲求不満気味だし、女の方も勇者の愛人になれるというなら食いついてくるだろう。
なんせこの異世界で頼れる人間がいないから、同じ日本人で強い俺の傍にいれば安心感が違うだろうからな。
しかしケツが痛ぇな… まだ動き出して数分しか経っていないが、馬車ってやつはもうこりごりになってきた…
こうして勇者、賢者、大魔導士の3人は、僅か4名の護衛騎士に連れられてダンジョンへと進みだした。馬車が2台のため御者が2名いるが、その2名は戦闘職ではないため守るべき対象になっているという。
SIDE:遠くからそれを見送る3人の王女達…
「ようやく実戦訓練にこぎつけたわね… ま、私は勇者の血さえ手に入れられれば好きにしてもいいってお父様に言われているから、アニスト王国初の女王にでもなってみるわ」
「何を言ってるのお姉様? 賢者の血を受けた私が女王になるに決まっているでしょう?」
「2人ともおやめください。私は… やっとあの気持ちの悪い大魔導士から離れられただけで幸せなのですから」
「「そ、そう…」」
父である国王から言いつけられた命令『大魔導士の血を取り込む事』… いまだに大魔導士に触れる事すらできていない第3王女は思案する。
「もういっそ、ダンジョンで死んでくれませんかね? あの男。2ヶ月かけて減量させても、ちっとも体重が減りません」
第3王女は、直属の配下にひっそりと命令を下す事にした。
『大魔導士を事故に見せかけて殺せ』と。
「ところで、お姉様方はあの者達と肌を合わせたのですか?」
「まぁ一応ね、勇者の血を引く私の子となれば、間違いなく優秀な人材となるはずよ。私たちの次の時代も安泰ね」
「何を言ってるの?お姉様。力だけの勇者よりも、智者の頂点である賢者の血を引く子の方が王に相応しいわ。勇者の血を引く子であれば、騎士団長辺りが妥当なところね」
「なんですって?」
「なによ!」
些細な事ですぐに言い合いを始めてしまう2人の姉をため息交じりで見つめる第3王女、2人の姉が子を設けるのであれば大魔導士の血を引く子などいらないのではないか? そう思ってしまっている。
そう思いつつ、口論している2人の姉を置いてその場を後にした。
「次代の王の話なんて、今やっても意味ないでしょう。貴女達2人だって、今後何があるか分からないというのに…」
第3王女はニッコリと微笑みながら自室へと向かう、2人の姉を押しのけて、王位に就くための策を入念に練らなければと気合を入れなおした。