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誤字報告いつもありがとうございます。
よし、5分前には戻ってこれたな。しかし美鈴も霞も戻ってきてないし… 時間にルーズなタイプじゃないから大丈夫だと思うが、しゃーない、待つ事にするか。
5分後、ピッタリ12時に2人揃ってやってきた。ブラッドウルフを引きずりながら…
「やっぱりおじさんがいないと大変だって事がわかったよ。狩った獲物を運ぶことがこんなに大変だったとは…」
「そうよね、別に担ぐのは問題ないんだけど、野生の魔物って臭いのよね。直接担いだりしたら… ノミとか虫がくっついていそうで躊躇するわ」
「あー… 確かにそういった心配もあったな。 普通の冒険者ってそう考えると逞しいよな」
「とりあえず倉庫を出してください!」
倉庫の扉を出し、1匹のブラッドウルフが放り込まれた。
昼食前に全員がシャワーを浴び、汚れと匂いを落としてから食卓に着いた。
「いやー今回はホント思い知ったよ、収納魔法… ちょっと頑張ってみようかなと」
「そうね、私にも使えればいいのだけど… 魔力の鍛錬を増やそうかしら」
「ホントおじさんが有能すぎて、それを見極める事の出来なかったアニスト王国の王様が哀れに思えてくるわ」
「それを言ってしまえば聖女を放逐した時点で救いようは無いのだけどね」
「まぁ召喚された時に王女らしき女性が数人いた事だし、御しやすい男連中だけが目当てだったのかもしれないな。そう考えると、おっさんである俺が目をかけられる理由が無くなるからな」
「なるほど… それじゃあアニスト王国に残った勇者達は今頃、王女さん相手に子孫繁栄の作業ですか? 気持ち悪っ!」
「ま、人間の三大欲求の一つなわけだし、あの年頃の少年には抗えないんじゃないかな? だからと言っても自己責任であることは変わらないけど」
「そうね、次に会う事があれば間違いなく敵同士だし、張り倒して目を覚まさせてあげるわ」
簡単手軽な冷や麦を食べながら、話の方向は勇者達の話題になっていく。確かに同郷であるという思いはあるのだが、召喚されたあの日に袂を分かったのは間違いないので気にしない方向で考えるべきだろう。
まぁ、俺達が追放を言い渡される前に部屋を出ていっているから、追放されて処刑するつもりだったなんて知らない可能性はある。
まぁ最悪はアニスト王国と事を構える事になった時、アイツらがどういった行動を取ってくるかで決めてもいいだろう。十中八九嘘で言いくるめられて攻撃してくるだろうけどね…
「さて、それじゃあ午後からはどうする? 3人で行動するか?」
「そうだね、その方が待ち合わせとか気にしなくてよくなるから、行動範囲は広がるんじゃない? 奥に行けば違う魔物がいるかもしれないしね」
「そうね、魔物を倒しても… 引きずって歩くのはちょっとって思うわ。おじさんを頼らなくちゃいけないのは心苦しいけど」
「ま、そこは適材適所って事でいいだろ。それじゃあ森の奥に入るってことでいいな? 日が暮れたらその場で終了って事で」
「そうね、鍛冶屋に行くのは5日後だから、王都に戻らなくても問題ないと思うわ」
「伯爵の方もすぐに謁見できたりするもんじゃないと思うし、大丈夫じゃない?」
まぁ伯爵は言うほど悪徳貴族じゃないっぽいけど、王家の命令には逆らえないと思うから近づきたくないというのはあるが、狩りの最中だから仕方がないよね、泊りで狩りなんて普通だと思うし!
そんな訳で午後からは3人セットで森の奥に向かって進みだした。
「んー?」
「お? どうした、何かあったか?」
「いや、なんか魔力を感じるんだけど… 何もいないよね。なんだろ」
美鈴が何かを感じ取ったらしい、残念ながら俺には全然分からん…
「それは近いのかしら?」
「うん、そんなに遠くないと思う。あっちの方向」
美鈴が指さした方向、木々が生い茂っているせいで遠くまで見通せないが、確かに魔物がいるようには見えない。
「昆虫系の魔物が擬態してるとか?」
「うーん、昆虫にこんな魔力があるかなーって思うんだけど」
「なんにしても要注意だな、近寄らないって選択肢もあるぞ?」
「得体の知れない何かが近くにいるっていうのは不気味だわ、せめて確認だけでもしておいた方が良いと思うのだけど」
「確かにそれもそうだな、ギルドでの魔物情報にはブラッドウルフ以外は無かったんだろ? 王都の近くで物騒な魔物はいないと思うが、油断だけはしないようにな」
「「了解」」
警戒しながら美鈴の指差す方向へと進みだす、先頭は安定の霞でゆっくりと進んでいく。しかし…
「誰も… いないな」
「いないね、でも魔力は感じるんだよね。もしかしたら魔道具とかってやつなのかも?」
少なくとも魔物の気配はまるで感じられない、俺だけじゃなく霞もそのようなので間違いないと思う。それでも美鈴が言うには、魔力を持つ何かが近くにいると言う… どういう事だ?
「あっ、原因発見! なんか箱に魔石が付いてる」
美鈴が声を上げた。
どれどれと美鈴に近づき、その箱とやらを見てみる。
「おー、これは見た事無い物だな。確かに魔道具って言われたらそうかもってなるな」
「どんな効果があるんだろうね、こればっかりは勉強不足だから分からないよ」
「どうする? 持ち帰って調べてもらうか? ギルドにでも」
「うーん… 地面に刺さっていたから、土地に干渉する何かだったら嫌だよね。コレを使って魔物を追い払っているとか」
「あーなるほど、王都にいる誰かが設置したって事もあり得るのか」
「それじゃあそのままにして、見つからないように土でもかけて見えなくすればいいんじゃないかしら。場所だけ覚えておいて、情報だけギルドで聞いてみるとか」
「そうだな、王都に関係のない物だったとしたら、後で取りに来ればいいもんな。とりあえず埋めとくか」
とりあえず発見してしまった怪しげな道具、未知の物を勝手にいじくっておかしなことになっても大変だ。
とりあえず話の分かりそうなギルドに問い合わせてみるしかない… まぁ、使えそうな物ならもちろん拾っていくつもりだけどな。
「んじゃ今日は王都に戻ってみるか? 今から動けば余裕で間に合うぞ?」
「そうね、奥の方に興味はあるけれど、これを見つけてしまった以上気になるのは確かよね」
「それじゃあ戻って確認してみよっか。ギルドでも分からないようであれば、今度こそ拾っていこう」
時計を見ると午後2時を過ぎた所だ、んじゃさっさと戻って確認してみようか。