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誤字報告いつもありがとうございます。

「おいおい、何の騒ぎだぁ? ギルド内で喧嘩なんて良い度胸じゃねーか」


「おじさん、あの人はここのギルドマスターよ」

「マジか、ビリーカーンのギルドマスターとタメ張るくらいのマッチョじゃないか。筋肉で人の価値でも決めてるんじゃないか? この国は」


 突然割り込んできた男を見て、霞はギルドマスターだと教えてくれた。なぜ知ってるんだ? とも思ったが、ギルド職員相手に交渉しているから知ってても不思議ではないか。


「ギルマス! コイツラが生意気言ってやがるからよぉ、ちょっと人生の厳しさってやつを教えてやろうと思ったんだよ」

「何言ってんだオマエ、この3人はビリーカーンのダンジョンの最高到達パーティだぞ? オマエなんかが相手になるわけないだろ。確か… 60階層までクリアしたんだったか?」

「いえ、王都に来る前に70階層までクリアしたわよ」


 ざわざわと周囲が騒ぎ出す、ビリーカーンのダンジョンは王都から近いと言えば近いから、入った事のある冒険者も多数いるのだろうが… 個人情報をさらっと晒すギルドマスターもどうかと思うぞ?


「はぁ? そんな事信じられるわけないだろ! だってコイツラDランクなんだろ?」

「そうだ、ビリーカーンのギルドマスターが何度もランクアップの試験を受けるよう言ったらしいが、断られたと言っておったわ」

「ふざけんじゃねー! そんなの認められるかよ!」


 なんだこの我儘なガキは… いい年こいて頭の中は子供のままかよ。こんな奴の相手をするのは非常に嫌だな… どうすっかな。


「おじさん、ここはビシっと拳でわからせたらいいと思うよ! 私がやろうか?」

「こんな酔っ払いの相手をしたって意味なんかないだろ、美鈴がストレス発散したいだけなんだろ?」

「そうとも言うね!」

「いや待って、ここは前衛である私の出番だと思うの」

「いやいや、ここは回復職である私がやった方がダメージは大きいと思うよ? まさかヒーラー相手に接近戦で負けたなんて知られたら… もう冒険者なんてできなくなるだろうしね!」


 美鈴も霞も言いたい放題だな… 


「オマエラ好き勝手言ってんじゃねーぞ? 俺を誰だと思ってやがる?」

「ん? ただの酔っ払いだろ?」

「うん、しかも臭い」

「ええ、もう視界に入れるのも嫌なくらいだわ」

「殺す!殺してやるよオマエラ!」


 やべ、ついつい一緒になって煽ってしまった。まぁいいか、自分から絡んできたんだし、せいぜい恥でも掻いてくれ。


「待て待て! ギルド内で騒ぐなって言ってるだろ! やるんなら訓練場に行け!」

「おう上等だ! 逃げんじゃねーぞオマエラ、生まれてきた事を後悔させてやるぜ!」

「プッ そんなの子供でも言わないよね。『生まれてきた事を後悔させてやるぜ!』だって、笑っちゃうね」

「いいからさっさとその訓練場とやらに行きましょう? アナタ1人じゃないわよね? 仲間も呼びなさいな」


 しかし、娯楽に飢えているんだな… どいつもこいつも目をキラキラさせて観察しているし、まぁ美鈴と霞の見た目も理由なんだろうけど。

 この世界で黒髪は全然見かけないし、みんな西洋人っぽい顔立ちだから、俺達のような東洋人顔は珍しいんだろうな。

 俺は自他共に認めるおっさんだけど、美鈴と霞は高校生の17歳だからな。若い盛りには堪らないのかもしれない…


 いつの間にか霞が先導するような立ち位置になっていて、興味深そうに俺達を見ていたギルドマスターが訓練場へと案内してくれた。

 俺に喧嘩を売ってきた男の仲間が3人いたようで、一緒になって訓練場に入っていく。


「よし、じゃあせっかくだから俺が見届け人になってやる。殺すのは厳禁だからな?」


 ギルドマスターがなぜかそう宣言し、見届け人をやるようだ。見届け人ってどういう事だ? これは決闘扱いって事なのだろうか… まぁいいか。


「それじゃあどういう風にやるのかしら? まとめて戦う? それとも1対1? どちらでも構わないけれど… 選ばせてあげるわ」


 おや? 霞ってこんなキャラだったか? 随分と女王様系な雰囲気だしてるじゃないか… まぁ今後舐められないようにって対策してるのかもしれないが、打ち合わせしてないから心境は窺い知れないな…


「どこまでも舐めてんじゃねーぞ? それじゃあパーティ戦で決着をつけようぜ、行くぞオラ!」

「偉そうに言ってるけど… 貴方たちは4人でこっちは3人、さらっと有利な方を選ぶ当たり、程度が知れるわね?」


 おおう、霞さん煽る煽る… しゃーない、俺もいっちょ乗ってやるかね。


「じゃああれだな、アンタらが可哀想だから俺は素手でやってやるよ。良かったな?」

「じゃあ私も素手で行くね、あーでも、直接触りたくないから手袋だけするかな」

「そうね、手袋は必須だわ。私もあんなのに触れたくないし」

「キサマらぁ… 行くぞ!」


 戦闘開始となった。


「あの偉そうな野郎は俺にくれ、アイツがこの騒動の元凶だからな」

「わかったわ、それじゃあ残りはもらうわね」

「じゃあ霞だけ2人でいいよ!」


 俺の意見は受け入れられたようで安心した、あの酔っ払い… 張り倒してやる! わざわざ面倒な事しやがって、しかもギルドマスターのせいで必要以上に目立ってしまったじゃないか! マジ許さん。


 


「「「「すいませんでした…」」」」


 開始数秒、まさに10秒にも満たない間にケリがついてしまった。しかも俺の出番は無し… 解せぬ。


 相手方の3人が真っ直ぐ霞に向かい、1人だけが美鈴に向かっていき… もう瞬殺でしたよ。接敵するまでの移動時間の方が長いくらいだった…


「よし、それじゃあ今回の事はこれでおしまいだな! お前らは今後、こんなにも若い女にコテンパンにされた冒険者として名が残る事になるだろう。それがお前らに対するペナルティだ」


 ギルドマスターが良い話風にまとめていて、なにやらすっきりとした顔の美鈴と霞。俺だけ不完全燃焼のようだ…


「しかしアンタ、あれだけ俺に絡んできてたのになんで俺の方に来なかったんだ?」


 酔って絡んできていた男に問いかけてみた。その男は霞のローキック1発で足を痛めて動けなくなり、ダウンしたんだよな。


「そんなの決まってるだろ? 戦いは勝てそうな奴から倒して頭数を減らすもんだろ」

「馬鹿だな、よりにもよって俺らの中で最強の子に襲い掛かるなんてな」

「知らなかったんだよ! 知ってたらこんな事…」

「ま、自業自得だからかける情けも無いがな」

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