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異世界生活65日目
マイホームに引き籠って10日が過ぎていた。黒い作業服以外の制作はしていないのだが、やはり魔力は消耗しているようで、結構ぐったりした倦怠感があるのだ。
「結構ダルいな… 今日は外に出た方が良いかもしれないな。10日は隠れていられるって分かっただけ良しとするか」
こうなると、やはり召喚された初日にマイホームに隠れるという選択をしなかったのは正解だったようだな。
結構魔力についても鍛えてきたつもりだったが、10日でこれほど疲れてしまうんじゃ、初日程度の魔力じゃ2日ももたなかっただろう… 今日の午後までゆっくり過ごしてみて、回復してないようなら宿を取る事も考えなきゃいけないな。
まぁマイホームの使い方も平時とは違っていたのも確かだ。霞なんかは午前と午後に分けて、びっちりトレーニングルームで訓練していたからな… ホント真面目かよ!
「という訳で、今日は外に出る事にしました」
「なんで敬語なの?」
「そんな気分なんだよ、今日俺はのんびりさせてもらうから、各自自由行動にしようか?」
「そういえば、今までそんな事無かったよね。でも知らない町で自由行動ったってねぇ」
「そうね、せいぜいギルドに行って情報収集くらいしかやる事が思いつかないわ」
「そりゃそうか、じゃあギルドにでも行ってみるか。多分俺は、晩になればかなり回復してると思うから、夜にはマイホームに入れると思う」
「それじゃあ行ってみよう!」
それぞれの準備を済ませ、8時にマイホームから出る。一応周囲を伺ってみるけど人影は無し、サっと出て扉をしまう。
「さて、ギルドってどっちだったっけ?」
「いや、1回路地からでないとわからないよ」
「そりゃそうか」
10日前の事だから、すっかりと忘れてしまっていた。王都に来てからギルドと鍛冶屋しか見てないからしょうがないんだけど、まぁ装備品の完成までまだ日はあるから、これからゆっくり見て行けばいいよな。とは言っても、見る物がどれほどあるのかはわからないが…
路地から出てしまえば、なんとなく方向が思い出される。多分こっちの方向に行けばギルドがあると思うな、多分だけど… 美鈴も霞も付いてくるから合ってると思う。
「よし、道に迷った訳じゃなかったな。ギルド発見だ」
「ギルド行ったら何するの?」
「周辺の狩場情報とか知っておけば、暇潰しに狩りに行けるんじゃないか? さすがに10日もトレーニングだけだと飽きるだろ」
「そうね、とは言っても弱い魔物だったらトレーニングの方がマシかもしれないわね」
「そう言うなって、王都近辺で強い魔物が出るわけないだろ」
「そうなのよね… でも、装備が完成したらまたダンジョンに行きたいわ。私は周辺のダンジョン情報を調べてみるわね」
「そうだな、試し斬りしないといけないからな。美鈴の場合は試し殴りだけどな!」
「なんかこう、いかにも聖職者って服装でやりたいよね。それでハンマー担ぐの」
「やめろ、世界中の聖職者の皆さんにいじめられるぞ?」
「ちょっと今晩にでも、そんなコスプレ衣装があるかどうか調べてほしいな? あ、でもコスプレ衣装だと露出多めのセクシー路線になっちゃうか」
「あー、ゲームの聖職者ってそうかもな… 意外とスリット深くて太ももとか丸出しだもんな」
「そうそう、そんな聖職者いないわ!って突っ込んじゃうのよね」
「せっかくだし、情報収集が終わったら教会でも探してみる? 本物の聖職者を見てみるのもいいかもしれないわ」
「それはいいかもねー」
アホな話をしながらギルドに入っていく、そこで二手に分かれる事になった。
霞はダンジョン情報を探りにギルド職員の方へ、俺と美鈴は狩場情報を探りに依頼表の所へ。
「うーん、ブラッドウルフってどこにでもいるんだね。肉と毛皮の収集依頼があるよ」
「ブラッドウルフか、って事は近くに森でもあるんだろうな。まぁでもブラッドウルフ程度だと訓練にもならないからなぁ」
「おうおうなんだぁ? ブラッドウルフ程度っていえるだけの実力があるような言い方だな?」
ん? 俺達に言っているのか? 声の聞こえた方に向いてみると… 顔面に大きな傷跡が付いてるゴツイマッチョが立っていた。
「それだけの口が利けるんならさぞかしランクが高いんだろうなぁ? ランクは何だ?」
「俺達か? 俺達はDランクだな」
「ぁあ? Dランク風情がブラッドウルフが楽勝だと? 笑わせんじゃねーよ!」
「おじさんおじさん! これだよ! テンプレだよ!」
美鈴がなぜか興奮気味に喜んでいる、こんなマッチョに絡まれて嬉しいわけがないだろう。でもアレだな、この侮っている感じ… 髪の毛を染めた中学生のヤンキー候補生が、一生懸命背伸びしてツッパってる感じ、微笑ましいけどマッチョがやっている時点で不愉快だな… しかも酒臭いし。
しかしなんだ… どう見ても雑魚にしか見えないし、こんなに良いガタイしてるのに全然怖くない。美鈴も同様なようで、ビビっている感じが全く無いな。
でもま、こちとらゴーレムやイエティ相手に接近戦を経験しているわけだし、マッチョ程度じゃ脅威に感じないって所かな。
とはいえ、こんなギルド内で騒がれても注目されて困るよな… 外に出るか?
「おい! なんとか言えよ、ビビってんじゃねーのか?」
「あーハイハイ、分かったから帰って寝たらどうだい? そんなにキャンキャン吠えていると、良い笑い者になるぞ?」
「おじさんが煽ってる! 絶対喧嘩になるパターンだね? 私も参加したいんだけど良いかな?」
「何言ってんだ、美鈴みたいな小柄な子にボコられたら… コイツ恥ずかしくなってもうここに来れなくなるぞ?」
「いいんじゃない?それでも… この人も好きでやってるんだろうし、痛い目を見たって自業自得よね」
「霞… いつの間に戻ってきた」
「何を言ってるのかしら、これだけ騒いでいるんだから、ギルド内では注目の的になっているわよ?」
言われて周囲を見渡すと… 確かにみんながこっちを見ていた。これは恥ずかしいな… しかしギルドの職員はチラ見はするけど積極的に関与してこない、どうなってんの? 止めないの?
「なんだぁ? 女ばかり集めてパーティ組んでんのか、それならこんなおっさんなんて見限って俺のところに来いよ、可愛がってやるぜぇ?」
「うわっ、そんな恥ずかしいこと言っちゃうんだ。キモッ!」
「ええ、本当に気持ち悪いわ。早急に視界から消えてくれる?」
あれ? 俺が喧嘩売られてたんじゃなかったっけ? いつの間にか霞が一番前にいるんですけど!