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誤字報告いつもありがとうございます。
「いやー、まさか霞に起こしてもらうなんてね… びっくりだよ」
「そこまで言わなくても良いんじゃない?」
「いやだって… 今日でこの世界に来て54日?55日? この間私より早く起きれたのって1日くらいしかなかったでしょ」
「そ、そうかしら… まぁいいじゃない」
ささっと洗顔を済ませて朝食をとる、時刻はもう5時半だ。
「よし、それじゃあ王都に行くとするか。まずはギルドに行って鍛冶屋関係の情報収集だな」
「「了解」」
外に出るともう明るくなっていた、しかし動いている人は周囲にいなかったので、これも予定通り… 結果オーライだ。
2人は白いワンピースに作業服の上着を羽織っている、日本だと違和感しかない組み合わせだが、色合いが良いのか問題は無さそうだな。 俺はいつもの通りグレーの作業服の上下だ、腰にはマチェットではなくサバイバルナイフを下げている。
王都と言えば、その国最大の町だろうから人も多分多いのだろうし、人が多ければおバカな奴の比率も上がっていると思う。
一応門にいる衛兵が横柄な奴だったら… という対策でマチェットは道具箱に入れているのだ。サバイバルナイフだったら刃渡りも短いし、理不尽に没収されたとしても影響は少ないだろう… 多分。
「おー、すでに結構人が並んでいるね」
「この辺はさすが王都って感じだな、今まで通ってきた町じゃ無かったもんな」
「町の中に入れるまで時間かかりそうね、仕方ないけれど」
すでに100人以上の列が出来ていて、その最後尾に並んでみる。
じわじわと動いてはいるので、並んだまま日をまたぐ… なんて事にはならなそうだ。通信が生きていればなぁ、スマホで並んでいる間の暇潰しが出来るんだが… 仕方がないか、さすがに文句を言った所で何も変わらない。変わらない所か、むしろ時間を食う羽目になるだろう。
気が付くと2時間ほど経っていた。100人以上いたと思われる列も順調に進んでいき、もう間もなく俺達の番になるだろう。
「出入りのたびにこれじゃあ、一度入ったら用事は全部済ませた方が良いかもしれないね。予定としては… ギルドで情報収集して鍛冶屋を探して、それからどうするの?」
「どうって、鍛冶屋が見つかったとしたら頼むだろ? デザインやら何やらで結構時間がかかると思うんだが。頼んだら頼んだで、完成までどのくらい時間がかかるかも分からんしな」
「そうね、デザインもそうだし、私の場合は防具だから… サイズ合わせも必要になると思うわ。マチェットに関しては見本を貸してあげるんでしょう?」
「そうだな、マチェットのサイズはアレでいいと思うから、そのまんまミスリルで複製するって感じでいいと思う。予算に関しては、今までダンジョンで稼いだ分を3等分してあるから、その中で各々考えてくれ。装飾入れたりだと結構取られると思うけどな」
「ん、そういえばあまり気にしてなかったけど、ダンジョンでどのくらい稼げてたの? 私達」
「端数抜きにして金貨600枚だな、だから1人分として金貨200枚… これを予算として考えてくれ。共用分として金貨100枚キープしてあるから、全部使ったとしてもなんとかなるぞ」
「金貨200枚かぁ… ミスリル装備のイメージだと足りない気がするけど、ミスリルその物を持ち込みだからなんとかなるかな?」
「ならんかったら諦めて金を稼ごうぜ。最悪王冠を売ってもいいしな」
「そういえばそんな物もあったね、巨大ハンマーは今回は諦めかな」
「あれ本気だったのか」
「本気も本気、せっかくだからやりたい事で出来る事ならやってやろうと思ってね」
「まぁ個人の趣味をとやかく言うつもりは無いけど、ほどほどにな?」
「はーい」
ようやく俺達の番がやってきた。待ち構えてた門衛は、そこそこ整った鎧装備を身に纏い、俺達を護送していたアニスト王国の連中を思い出す。
「身分証を出してくれ」
3人揃って冒険者ギルドのギルド証を提示する。
「王都への用件は何だ?」
「王都の鍛冶屋に武器防具の製作依頼… かな。後は観光も少しある」
「そうか、王都には駐在している貴族も多いから余計な事だけはするなよ。冒険者はすぐに騒ぎを起こすからな…」
そんなこと言われたってな、俺達には関係ねえよ! 声には出せないが、心の中では文句を言うのだった。
「さて、ようやく入れたな。早速ギルドに行くか」
「「了解」」
門をくぐり、城下町に入っていくと… 石造りと木造が入り乱れた不思議な景観がそこにはあった。俺達3人は… まるで田舎から出てきたばっかりのお上りさんのようにキョロキョロし、異世界初の大都会の景観を見て回った。
「思ってたよりも都会だね! 今まで通ってきた町が田舎だったのかな?」
「伯爵領の領都もそうだったけど、それほど田舎だとは感じなかったけどな。やっぱり王都が特別って事じゃないか? なんせ国を代表する都市なわけだし、見栄もあるだろう」
「ギルドを見つけたわ、ほらあそこ」
「おっ、さすがだな。んじゃ行くか」
王都のギルド、今まで通ってきた町のギルドを例えるなら… 大型の集会場とかそんな感じだったけど、王都のギルドは完全に役所のようだった。清潔感もそこそこあって、飲み処が併設されていない。ギルド内にいる冒険者の身なりも随分とマシに見える、都会効果かな。
とりあえず邪魔にならない場所に集まり、中の様子を伺ってみた。
「うん、ここまで役所のようだとどこに行けばいいのかわからないね?」
「そうだなぁ、受付にも種類があるみたいだし… 総合受付みたいなのがあればいいんだが」
「新参者だというのは間違いないのだから、少し聞いてくるわ」
「すまん、頼んだ」
霞がカウンターの並ぶ受付に向かって突撃していった。ギルド内には冒険者も結構いるし、いつまでも様子見してられないもんな。
丸々任すのはアレだし、俺も少しは情報収集するか。
依頼表が提示されているスペースに向かっていき、出ている依頼を確認する。どうやら商人の護衛がメインのようだな… ランク別で分かれてはいるが、低ランク用の護衛依頼は無いらしい。
そういえば、俺達3人はダンジョン攻略の実績だけでいつの間にかDランクまで上がっていたな。Cランクになるにはギルドが用意した試験に合格しないと上がれないらしいが、別に上げる必要も無いだろう。ランクが上がるとメリットも増えるが、その代わり責任も増えるからだ。
Cランク以上になると、緊急依頼や強制依頼、指名依頼などが受けられるようになり、緊急と強制依頼に関しては断る事が出来ないという事だ。この世界の常識としては、常に上を目指すものであり、ランクが低いという事は、そのまんま実力が低いと評価される。それでもCランクに上がれる冒険者はそこそこ実力者という扱いなので、Dランクでいても特に問題は起きないだろう。
レベル帯としては、Dランクが一番多いみたいだしな。
どれ、報酬額も見ておくか…