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誤字報告いつもありがとうございます。

 異世界生活53日目


 完全に習慣となってしまった早すぎる起床時間、しかし疲れなどはしっかりと取れていて不快感は無い。

 もそもそとベッドから出てロビーに向かい、いつものように顔を洗ってくる。


「今日の予定はっと、70階層に到達した時間にもよるけど、上手くいけばそのまま戦闘に入る事も考えておかないといけないよな」


 70階層の守護者を倒したら、もう一度60階層に行ってみてミスリルゴーレムの存在を確認するつもりだ。そして追加でミスリルをゲットできれば言う事なしだな、あわよくばミスリルソード… もう一度落としてくれてもいいのよ?


 洗顔を終えたら製作モニターの前に座る、マチェットが思いの外高性能だったのは良い事だけど、折れないとは限らないのでスペアを何振りか用意しておくべきだと考えたのだ。


「一応6本作っておけば、1人頭の予備は2本ずつとなる。折れるとすれば戦闘中だろうから道具箱に入れておかないとな」


 そういえば昨日、霞が貴重な情報をもたらしてきたのだ。マチェットでは出来なかった事なのだが、ミスリルソードは魔力を取り込むらしく、身体強化に使っていた魔力を吸い込んで、剣そのものに強化がかかっていたとの事だ。


 これは良い情報だ、益々ミスリルの価値の高さが窺える。魔法で強化できるのならば折れてしまう確率もぐっと下がる事だろう、いよいよ装備のミスリル化を急いだ方が良いかもしれないな。


 …と、なれば。今日の訓練はお休みにして、実戦形式という事で殲滅重視で行くべきかもしれないな。今の俺達であればそうそう時間をかけずに進めるし、余裕を持って70階層に辿り着いた方が得策だろう。


「ま、女性陣が起きてきたら提案だな。このダンジョンを切り上げて武器作りのために移動しようと言えば食いつくだろうけどな」


 確かにダンジョンの最深部まで行ってみたいという欲求はあるけれど、優先順位をつけるとすれば、それ程上位ではないんだよな。まぁ霞ならトップクラスなのかもしれないが、ミスリル製で自分好みの武器を作るとなれば、きっと武器の方が上位に来ると思う。


 熱いコーヒーに角砂糖を1つだけ落とし、ゆっくりと溶かして味わう。そういえば寝起きのコーヒーって体に悪いんだっけ? ニュースかなんかで見たような気がするが、正直言って今更だ。



 サクサクっと進もうぜ! という提案はすんなり受け入れられ、文字通りサクサクと進んでいる。まぁなんと言うか… 霞が全てを倒してしまっているだけなんだが、まぁまぁスパスパと切り刻んで終わらせる手腕は見事というしかない。

 初めてダンジョンに入った時みたいに、俺と美鈴はドロップを拾いながらついて行く係になっているのだ。


 いつものようにマップ埋めの要領で隙間なく進んで行き、午後3時には70階層へと到着した。


「ここのボス… どんなんだと思う? イエティの上位種なのか白トカゲの上位種なのか、それとも両方出てくるか」

「そうだなぁ、ゴーレムは単体だったけど、オークとオーガは部下を引き連れてたし… 複数いる事は大いにあり得る話だな」

「複数いた場合は私が先行して上位種を狙うから、おじさんと美鈴は取り巻きの排除をお願いしたいわ」

「それが一番有効的なのかな… 俺達の場合だと」

「じゃあ最初は銃を使って援護しつつ取り巻きを駆除って感じで良いかな?」

「そうだな、一応美鈴は前に出ないように考えてくれよ、守りの要なんだからな」


 とりあえず方針だけ示し合わせ、突撃する事にした。別に甘く見ている訳ではないが、道中の魔物の強さを考えると、例え守護者であろうとも霞を止められる事は無いと思う。


「さぁ、行きましょうか」


 霞がマチェットを片手にそう告げる、自信に溢れた顔をしているな… この様子だと、今回は出番が無いまま終わってしまいそうだ。


 70階層守護者の部屋に突入する。

 広めの部屋の奥の方に上位種と思われる個体が立っていた。しかも予想通りに2種類いて、金色の毛皮で体長が3メートル弱か、とにかく大きいイエティと、銀色の鱗を纏ったこれまた大きなトカゲが待ち構えていた。


 当然のようにそれぞれの上位種の傍には取り巻きが5体ずついて、合計12体を相手にしないといけないみたいだ。


「それじゃあ援護する! 予定通りにな!」

「「了解!」」


 霞が体勢を低くしながら突撃を開始した。通常種のイエティと白トカゲがそれを感知し、取り囲むように動き出したので、俺が右側の白トカゲ、美鈴が左側のイエティの取り巻きを銃撃する。


 パン! パン!


 屋内での銃撃は射撃音が反響して耳が痛くなるが、どうやら魔物も同じようで顔をしかめている。

 金色イエティにマチェットを振って牽制しつつ銀トカゲに蹴りを放つ霞、蹴られて吹き飛んだ所にマチェットを投擲して脳天に突き刺さる… 


「おいおい、あの銀色のを瞬殺かよ」

「まぁ霞だからねぇ」


 観戦しつつも取り巻き達を銃撃して殲滅を完了させると、霞は金色イエティと素手で殴り合っていた。

 いや、殴り合っていると言うのは語弊があるな… 一方的に殴っていた、これだな!


 金色イエティは胴長で短足の為、いくら身長が高いからと言っても蹴れる位置に膝関節があるのでテンポ良く両足に向かってローキックを入れていく。アレは手加減しているな、ミスリルゴーレムの足をへし折るほどのローキックがイエティに効かないわけがないからな。


 イエティのパンチを回避しながら、バシバシとローキックを入れている。


「美鈴、防御魔法の準備だけはしておいてくれ。通常種でもあれだけのブレスを吐いたんだ、上位種ならもっとすごいのを吐くかもしれん」

「わかったよ、霞もなんか上位種相手に訓練してるっぽいからブレス来るかもしれないね」


 グワアアアアアアアアァァァ!!


 とうとう両足に蓄積されたダメージに耐えられなくなったのか、両膝をついて四つん這いの姿勢になった金色イエティ。これは来るかもしれないな!


「美鈴!射線から外れよう!」

「うん!」


 イエティ、霞との位置取りを見て、直線上にならない位置まで避難したところで、金色イエティが霞に向かってブレスを吐いた。


「トドメよ!」


 驚くほど素早い動きでブレスを回避した霞が、直後に金色イエティに接近し、その顔面にパンチを繰り出した。


 ドゴッ!


 俺は見た、霞の拳が… いや、手首までイエティの顔面にめり込んだところを。


 相手を吹き飛ばすような攻撃ではなかったようで、パンチを受けた金色イエティはその場に沈んだ。それを見た霞は腰に差していたミスリルソードを抜き、イエティの首を斬り落として戦闘は終了した。

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