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誤字報告いつもありがとうございます。
ピピピピッ!ピピピピッ!
美鈴のポケットからアラーム音が響いてきた。という事は…
「はい、夕方5時になりました。残業する?」
「いやぁ、無理する理由なんて一つもないし終業でいいだろ」
「そうね、イエティも白トカゲもパターン化しちゃったから、単調になって集中力が持たないわ」
そんな訳で、本日の営業は終了する事になった。
マイホームに入り、腕輪や安全ブーツなど防具として使っている物を美鈴が浄化していく。その間に霞が厨房に入って夕食の支度を始めた。
俺はと言うと、銃火器のページで武器の確認だ。今の腕力ならば、ガトリングガンみたいな重そうなやつでも普通に扱えるんじゃないかな。対物ライフルを普通に使えてるくらいだしな、多分問題ないだろう。
問題があるとすれば… 品名を見て、どれがマシンガンでガトリングガンなのかわからないって所かな。
しかし、本当によく分からないな。個人的に言わせてもらえば、昔の映画にあった… 未来から来てターミネートする奴が使っていたガトリングガン? あんなやつがあればいいね。記憶だと、パトカーとかボコボコにしていたし、しまいには爆発までしてたしね。
だけどアレがなんて名称の武器なのかが分からない… 困ったもんだ。
色々と見ていくと、ガトリングガンと思われる物は大体バッテリーがセットになっていて、重量もそうだけど場所も食うようになってるな。
そういえば砲身がクルクル回っていたよな、あれってバッテリーの電力で回してたのね。完全に設置型って事か、映画で見たやつはなんだったんだろう。俺もターミネートしたかったんだけどな…
「うーん、機銃だったりバルカン砲とかっていうのも設置型なんだろうな。威力は大いにありそうなんだが…」
どうやらこれは、今後拠点を持つ事になった時に設置すればいいんだろうな。さすがにバッテリーまで背負って撃つなんて考えられないよな…
「まぁ今の所は現状のままでいいかな、物理的な攻撃力はKSVKがあれば足りてると思うし、後は… 至近距離での物量で押された時の対策くらいか。こういう時はショットガンがあればいいと思うよな」
「ショットガン? 1度にたくさん弾を撃ち出すやつだよね?」
「そうだな、猟友会とかが鳥関連を撃つ時に使っていたはずだ。これなら適当に撃ってもどこかに当たるんじゃないかと思ってね」
「なるほど、まぁデザートイーグルで十分だと思うけどね。命中率は高いし!」
「まぁそうなんだよな、これも異世界人補正なのか… 本当に外さなくなったよな」
ぶっちゃけ訓練での的当てでは100%当たるようになっていた、更に的のド真ん中には9割近くの命中率になっている。
ま、とりあえず品番からどんな銃器か判断つかない物は試作するしかないよな。
「それじゃあ夕食にするか」
「そうだね、お腹空いたし」
美鈴と共に食堂に向かった。
SIDE:第3騎士団所属、緊急輸送部隊長
「やっぱりお酒は楽しく飲まなきゃいけないわよね~」
「まぁそうだな、飯と酒が楽しみで稼いでるくらいだから」
どうしてこうなった… 今日もいつも通り、例の異世界人である女性2人を監視していたのだが、今日は向こうから話しかけてきたのだ。まぁカオリの方だが…
それからなぜか、こうして飯屋で酒を飲みながら食事をしている。
それでも観察していると、ノリノリなのはカオリの方だけで、レイコの方は胡散臭げに俺達を見ている。もしかして俺達が輸送部隊だという事がバレてしまってるのだろうか… いや、それはないだろう。何と言っても輸送任務中は鎧姿だったし兜も被っていた。
「それでさ~、ここ最近何度も私達の後をつけていたでしょう? 何か用でもあるのかな~って思ってたんだ」
「いや、それは偶然じゃないか?」
「偶然? あれだけ露骨にやっておいて? ふ~ん」
どうやら尾行してた事はすっかりバレてるようだな、とりあえず惚けてみたものの、ごまかし切れてはいないみたいだ。
「まぁいいや、今日はどんどん飲んでよ、私が奢っちゃうわ!」
なんだか知らんが機嫌は良いようだな、タダ酒にタダ飯だというなら遠慮する事は無いな。結構稼いでいるようだし。
それにしても部下達の薄情さと言ったら… みんな俺を置いて宿に戻ってしまうとはな、戻ったら説教だ!
SIDE:レイコ
どうしてこの子は…
ここ数日、私達を尾行している感じの男性パーティに突然声をかけ、なぜか食事をすることになってしまったのだけど… どうでもいいから早く宿に戻りたいわ。
しかし何と言うか、カオリは男性依存症でもあるのかな。こういうのは私抜きでやってもらいたいんだけど… まぁいいわ、ご飯を食べ終わったら私は抜けよう。
カオリから離れておじさんを追いかけようと思っていたのに、すっかり時間が経っちゃってどこに行ったのかまるで見当がつかないから、諦めて一緒にいたけれど、カオリの男癖の悪さには辟易するわね。
お金も結構貯まってきたし、本当マジで独立しようかしら。斥侯で近接戦闘もある程度熟せるカオリと離れるのは不安もあるけど、初級魔法なら一日中使い続けても平気なくらい魔力も増えたわ。毎日訓練しているからね…
もういっそ、今日これから逃げてしまおうかな。今の調子で飲んでいるなら明日はどうせぐったりしてるでしょうし、そろそろ私にまで飛び火してきそうなのよね。
私自身、この世界の男はどうでもいいって思ってるから、カオリのついでのように男にまとわりつかれるのは嫌なのよ。
それに… カオリなら1人になったとしても、きっとすぐに男連中のパーティにでも潜り込むでしょう。よし決めた! 今日こそこの町を出て独り立ちをするわ!
ご飯を食べ終わったら、目の前にいる男にカオリを押し付けて抜け出そう。防御の魔法も使えるようになったし、1人で野営しても安全に寝れると思う。それに、この国の王都を目指せばおじさん達の痕跡も見つかるかもしれない。
今の生活にも慣れたけど、やっぱりシャワーは浴びたいし、柔らかいベッドで眠りたい。元の日本的な生活がとても恋しい… カオリの言葉に乗っておじさんから離れたのは、やっぱり早まったとしか思えなくなった。
一言も喋らないで黙々と目の前にある食事を食べていく、もう決めた、今度こそ決めたんだ。カオリに引っ張られての生活はもう嫌だ、私だって成長してるんだからきっと大丈夫。
「それじゃあ私は宿に戻ってるから、どうぞごゆっくり」
銀貨を2枚カオリに渡して食堂を出たのだった。