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誤字報告いつもありがとうございます。
昨日と同じ曲がり角からイエティが現れた、前回同様驚いた顔を一瞬したが、すぐに戦闘態勢に入ったようだ。
「えいっ!」
美鈴を囲むように薄い光の壁が見えた、アレが防御魔法なんだろう。
イエティは先頭にいた霞に襲い掛かろうと走り寄ってきたので、打ち合わせ通りに後退し、美鈴よりも下がった場所で立ち止まった。
イエティは唸り声をあげながら、一番前に立つ事になった美鈴にターゲットを変えたようで、間合いを詰めてからパンチを繰り出してきた。
美鈴はそのパンチを回避するように後ろに飛び、イエティのパンチが障壁に当たる。
バチィィ!
電線がショートしたかのような音が響き、その反動で出した手が跳ね返ったかのようにイエティの体の後ろまで押し戻した。
「コイツのパンチなら十分に防げるようだな、じゃあ次は手加減して攻撃し、少し追い詰めてみよう」
「任せて、行くわ!」
霞が、待ってましたとばかりに飛び出し、イエティの脹脛辺りに蹴りを出す。
俺でも普通に見えるくらいだから、相当に手加減してるのだろう。だがそれでも、イエティは躱す事ができずに被弾する。
「グアァァ!」
痛かったのか、牙をむき出しにして吠える様は威圧感がすごかった。
俺もデザートイーグルで左腕を攻撃、銃弾は貫通したようで、ダメージは与えているようだった。
その後も霞が前衛で殴ったり蹴ったりしていたのだが… イエティの動きがすっかり悪くなって、そろそろ倒れてしまうんじゃないかと思った瞬間、ソレは突然やってきた。
「ゴアアアァァァ!」
大きく吠えたと思ったら、その口から白い何かが吐き出されたのだ。
「美鈴!」
霞がすぐに回避したが、その吐き出された何かは後方にいた美鈴に向かっていたのだった。
「多分大丈夫!」
両手を前に出し、先ほど見せた防御魔法を発動したようだが… どうやら美鈴の前にある壁を越えることは出来なかったようだ。
しかし、イエティの攻撃が通った後はとてもひんやりしていて、床の一部は凍っているようだった。
「霞!もういいぞ!」
「了解!」
霞が飛び出し、ブレスのようなものを吐き出した格好のまま動かないイエティの頭部へ飛び蹴りを当て、それがトドメになったようで消えていくのだった。
「いやいや、本当に氷系のブレスを使うとはな」
「それでも結構追い詰めないと使ってこなかったね」
「それならそれでいいさ、使わせないで倒せるならそれが一番だ。ただ、この情報はギルドに教えてやらんといけないな」
「そうね、ここまで来れる冒険者が居るかどうかは別として、もし対峙して倒しきれないでいたら喰らってしまうわ」
「防御魔法も十分のようだしな、やっぱり危険な作業だからこれで検証は終わりにしよう。次からは普通に戦うという事で」
「「了解」」
戦闘が終了し、イエティがスキルを放った場所を見てみる。
「おおう、これほど凍り付くなんて… 体に浴びたらと思うと怖いもんだな」
「うんうん、空気も冷やされているし、回避できたとしても影響はありそうだよね」
「見つけ次第即攻撃、反撃を許さない感じで攻めればいいわね。実践訓練も良いけど、わざわざ痛い思いをするつもりは無いわ」
「その通りだ、美鈴もそのつもりで用意してくれ。虐めすぎると反撃されるから攻撃力高めで頼む」
「わかったよ。対物ライフル使えばいいんですね」
「アレはオーバーキルだっての」
イエティが消えてった場所を見ると、今回も牙が落ちており、それ以外には白い毛皮もあった。おや、意外とモフモフしていて手触りが良いなコレ… 何かに使えそうだし倉庫に入れてしまおう。
その後も探索を進めていき、63階層に到達したあたりからイエティの他にも白いトカゲが現れるようになった。
この白いトカゲは、地球での生き物に例えれば、コモドオオトカゲの体長を3メートルくらいにした感じだ。全身真っ白なのでアルビノかと疑ったが、出てくるトカゲの全てが真っ白だったので、こういうもんかと納得した。
イエティは追い詰めないとブレスを吐かなかったが、コイツは最初からポンポンと吹雪のようなブレスを吐いてくる。まぁ威力を見れば大した事は無かったが、直撃すると氷の粒がバチバチと当たり、視界を遮られるのだ。
そしてその隙をついて迫って来て噛みつこうとしてくる、割と危険な奴だった。
「白トカゲの牙と皮が落ちたよ、倉庫によろしく!」
「了解」
名前が分からないのでどうしようかと話し合った結果、『白トカゲ』で落ち着いた。
コイツの落とす牙は用途が分からないけど、皮はワニ革のように見た目が良く、真っ白なのできっと何かに使えそうだと思って、捨てずに回収している。
ちなみに攻略法としては、出合い頭に速攻で吐いてくるブレスを美鈴の障壁…本人曰く魔法バリアーで防ぎ、直後に近づいて噛みつこうとしてきたところを霞が蹴り飛ばす。これで終わってしまうのだった。
こう言えば63階層なのに弱い魔物みたいに聞こえるが、見た目以上に足が速いので、ブレスに対して防御姿勢を取っていると、あっという間に詰め寄られてしまうので、かなり危険な部類だと思っている。
しかし、美鈴の魔法バリアーの防御力は大したもんだ。白トカゲの突進にも負けない強度だったし、吹雪のブレス程度を、少し寒いか?程度で抑えている。
「なんだかんだ言っても聖女ってのは、守りに関してはホント万能だな」
「そう?魔法を使う機会が少なかったし、攻撃手段も蹴りとか銃とかだったから、自分が聖女だって忘れる所だったよ」
「まぁそれはな、聖女が暇なら平和で良いだろう」
「ま、お荷物にはなりたくないからさ、役に立てて良かったよ」
確かにここがダンジョンであり、まとまって出てくる魔物の数が知れてるから3人で十分対処できている訳だが。これが外にいて、大量の群れに遭遇してしまった場合は相当厳しい戦いになってしまうんだろうな。
やはり数の暴力に対抗する何かを考えておかないといけないよな…
そうすると、サブマシンガンのような速射タイプで威力のあるやつを作ればいいって事か。しかし銃火器に対する知識があまりないから、名前…というか品番見ても、それがどんな銃であるか想像もつかないんだよな。
一度思い切って一通り作ってみるのも良いかもしれないな。