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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:ギルドマスター
「ミスリルゴーレムだと?」
ドワーフの鍛冶師はギルマスに詰め寄る。
「ああ、あの3人組のなかにおっさんがいただろ、アイツが収納持ちらしくてな、ミスリルゴーレムの足を落として、消える前に収納したんだとよ。その足を見せてもらったが、間違いなくミスリルだったぞ」
「ほぅ? アイツラはそれをギルドに売ったのか?」
「いいや、なんか作りたいものがあるとかで、それでお前を紹介したんだが… お前、何かやったのか?」
「い、いや~そんな事知らんかったからな。しかもほら、見ない顔だったし新人が俺の所に来たのかと思ってな、他所に行け!なんて言っちまった」
「はぁ?」
ガハハと笑いながら話すドワーフの鍛冶師、おいおいふざけんなよ?
「そりゃーアレか? 俺の顔を潰したってことか? あの3人組はこのダンジョンの最高到達点記録者だし、その上で領主と顔見知りみたいなんだが…」
「それでな、何とか取りなしてミスリルの加工を俺にやらせるよう言ってやってくれないか。いや~最初からミスリル出してくれりゃ俺も素直に仕事を受けたんだがよ、紹介状を出すのが遅いんだよアイツラ」
「はぁ~。あの連中は一筋縄でいかないぞ? 60階層のボスを倒せるほどの実力者だし、ハワード伯爵に告げ口でもされりゃ圧力もかかるだろうし… ホントなんて事してくれたんだよ」
「ガハハ! そこを何とかするのがギルマスの仕事だろう。じゃあ頼んだぞ!なるべく早くにな!」
言うだけ言うと、足早に部屋から出ていった。実力はある癖にあんな性格だから王都に店を構えられなかったんだろ、全然懲りてないな。
しかし、あのおっさんと小娘達は何を作りたいんだろうな。余った分は格安で引き取らせてくれんかねぇ。
鍛冶屋から出た後の足取りを確認するために、ダンジョン入り口にいる職員に連絡を取ってみるか。
SIDE:来栖大樹
さてさて、早速転移陣を利用して60階層までやってきた訳だが… コイツラを見ていると心配するだけ無駄なように感じて仕方がない。 だからといって、足元をすくわれないとは言えないだろうし、その油断が致命傷になる可能性だってある。
「うん、やはり油断せず慎重に進んで行くか」
「もちろんだよ、私の魔法で治せるって言ったって、痛いのは嫌だもんね」
「ええ、調子よく進めちゃうからついつい油断しそうになるのよね。そこをちゃんと抑えてくるんだから、おじさんの年の功よね」
「まーな! おじさんなのは自覚してるからな!」
そりゃー高校生と比べたらその通りだよ、倍以上の経験値があるからな。それに… 調子に乗って痛い目なんて結構遭ったしな。
「よし、それじゃあ61階層行ってみるか」
「「了解!」」
階段を降りて新たなエリアに入っていく、この階層に現れる魔物はどんな奴なのか…
「オークが来て、その次はオークとオーガの混成チーム。オーガの上位種がボスに出て次はゴーレムだったと。そうしたらこの先はゴーレムと何かの混成チームが出るのかな?」
「どうだろうな、俺には全然わからんよ」
「二足歩行ばかり出てきてるから、巨人系もあるかもしれないね。トロールとかサイクロプスとか」
「おお、サイクロプスならわかるぞ! でかい一つ目の奴だな!」
「そうそう、大型って括りならミノタウロスとかもあるかもしれないね」
「それも知ってるな、人型の牛だっけ。 正直言ってかなりキモそうなんだが」
美鈴と出現するであろう魔物を予想しながら歩いていると、なんとなくだが何かがいるような気配がした。
「シッ!」
霞はどうやら俺よりも先に気づいていたようで、静かにするよう合図する。俺は音を立てないようにKSVKを出して構える、美鈴は後方を確認しながら待機。
徐々に聞こえてくる足音を聞きながら、魔物の姿が見えるのを待つ。足音を聞く限り、やはり二足歩行で大型の魔物で間違いなさそうだな。
目の前はL字型に折れていて、姿が見えれば即戦闘になるだろう。霞が射線に入らないよう位置取りをして対物ライフルの銃口を向けて待つ、一応確認だけは先にしておきたいから、現れた瞬間に撃つ…という事はしない。
「そろそろだわ」
霞が小声で警告してくる、一番前にいる霞、静かに腰を落として突撃の用意をしている。
「グルァ?」
曲がり角から現れた魔物は、真っ白な体毛の大型の猿のようだった。鉢合わせになった俺達に驚いたような素振りを見せる。
「行くわ!」
あっという間に飛び出した霞が、魔物の太い足を蹴る。位置的には膝を蹴っているのでローキックになるんだろうが、霞の身長だとミドルキックくらいの蹴り位置だった。
ゴキャ!
うえぇぇ、一撃で太い足が折れて骨が見えたよ。怖い怖い…
ズシーン
足を折られた魔物はそのまま倒れ込み、隙だらけだった顔面にトドメとばかりに蹴りを放つ。
スパーン… ドサッ
蹴り飛ばされた魔物はそのまま霧のように消えていった。
「今のはなんて奴だ? 雪男みたいな猿だったな」
「わかった! アイツはきっとイエティだよ。雪男でも合ってると思う」
「イエティか、聞いた事はあるな。それよりも…」
そう言いながら霞の方を見ると、視線に気づいた霞が振り返る。
「今のはちょっと間違っただけよ! だって昨日までゴーレム相手にしてたわけでしょう? 硬い物を蹴ってばかりだったから手加減を間違えただけ!」
「デスヨネー」
まぁ蹴り一発で骨が飛び出る程へし折れるんだったら、そりゃオーバーキルだわな。初見の魔物だったからしょうがないとはいえ、無駄にリキむのは良くない。
「でも、正直に言ってゴーレムより強いかって言われたら、そうでもないかもしれないわね」
「いやわからんぞ? だって何もさせないで倒しちゃったからな。 複数相手にすることになったらゴーレムよりも連携してくるんじゃないか」
「そうかもしれないわね。とりあえず蹴った感触で言うなら、デザートイーグルでもダメージを与えられそうだわ」
「そりゃ朗報だ」
それを聞いてKSVKをしまった。
「なんか牙みたいなのが落ちてるね、これがドロップ品かな? 何に使えるかは分かんないけど」
「一応確保しておこう、売れれば問題ないしな」
スマホを見るともう6時を過ぎていたため、今日はここまでとした。考えてみたら、朝から動き回って60階層のボスまで倒したんだから、働きすぎだろう。
体を休めるのも仕事の内だ、今日の疲れを癒す事にしよう。