60
誤字報告いつもありがとうございます。
「さてさて、一応60階層クリアとキリの良い所だけど… これからどうする?」
「はいっ! 個人的な意見で申し訳ないんだけど、一度町に戻ってアレを加工できるかどうか調べたいかな」
美鈴が手をあげて意見を言う、ぶっちゃけその意見には俺も賛成したいな。
「私もそれでいいと思うわ、手甲とか装飾品とか作れるなら欲しいと思う」
「それじゃあ今日は、この後戻ってギルドで情報収集だな。主に鍛冶屋の」
「「賛成!」」
3人しかいないが満場一致のようだ。
3人揃って転移陣に乗り、1階層まで戻ってきた。昼過ぎという事で混雑はしていなく、特に何もなくギルドへと辿り着いた。
「魔石の買い取りをお願いするわ、後は優秀な鍛冶屋の情報が欲しいわね」
「お帰りなさい、タイキさん宛に伝言が届いていますが… ところで皆さんのパーティ名は何て言うんです?」
「パーティ名?」
いつもの受付嬢さんが放った言葉に首を傾げる、それに伝言? 一体誰だ?
「パーティ名はパーティ名ですよ、普通はパーティ組んだらすぐに付けるものなんですけど」
「パーティ名かぁ、何が良いかな?『ミスリルの誓い』とかにしてみる?」
「どっから出てきたんだよソレ」
美鈴が突然言い出したが、まぁ要するに団体の名称だろう? 何か面白いのは無いかな…
「パーティ名は近い内に考えとくよ、それで俺に伝言というのは?」
「はい、ハワード伯爵様からです」
「ああ、あの人か…」
伝言を書いた紙を渡されて見てみる、知らない文字だけど何故か読めるんだな… これも異世界人補正なんだろう。
「おじさん、一体なんて?」
「えーと、代官の屋敷に来て欲しい、来る前に事前に連絡を、連絡はギルド経由で、 だそうだ」
「良心的な申し出ね、普通なら『これを見たら至急来い』とか言いそうよね、貴族って」
「そうだな、まぁアレだ、行く前に連絡って言ってくれてるんだから、連絡しなきゃ行かなくても良いんだろ? まずは俺達の用事を済ませようぜ」
「そうね、受付さん… 腕の良い鍛冶屋を紹介して欲しいんだけど」
「鍛冶屋ですか… そんな腕に拘るような素材でも手に入ったんですか?」
「まぁそんなとこね、ここだけの話だけど、ダンジョン60階層の守護者の素材よ。青色の金属みたいなやつなの」
「青色ですか… まさかとは思いますが、ミスリルの可能性がありますね。 ああ、それで『ミスリルの誓い』だったんですか?」
「それは置いといて欲しいわね、とにかくそれを上手に加工できる鍛冶屋に行きたいのよ」
「ちょっと現物を見せてもらっても良いですか? それに60階層の話も聞きたいですし」
受付嬢に連れられて、奥の倉庫にやってきた。 とりあえず先に大量の魔石を勘定してもらいつつ、以前オーガの王冠を査定してくれた男性に、ブルーゴーレムの足を見せてやった。
「これは… 間違いなくミスリルだ。これをどこで?」
「60階層の守護者の足をへし折って持って帰ってきたんだ」
「ドロップではなく敵の体の一部という事か?」
「その通りだな、俺は収納持ちだから、守護者だったでかいゴーレムを討伐して、消える前に落とした足を収納したんだよ。そうしたら持ってくる事が出来たんだ」
「なるほど… 収納持ちは希少スキルで所有者が極端に少ない上、大体が王侯貴族に抱えられてしまうから、こんな事が出来るなんて今まで誰も気づかなかったんだな」
「ちなみにドロップは… 霞、見せてやれ」
霞が腰に下げていた剣を抜いた。
「これよ、この足がミスリルなら、この剣も同じ素材だと思うわ」
「これは… 間違いなくミスリルの剣だ。造りも良いし装飾も立派だ、こんな物を王家に知られれば徴収されるかもしれんな」
「冗談じゃないわ、この剣はとても気に入ったのよ、誰にも渡さないし売りもしないわ」
「ダンジョン産の剣と、ダンジョン素材で作った剣じゃ価値が違うからな。その剣だと金貨2000枚はくだらないと思うぞ」
2000枚と聞いて、美鈴が驚いた顔をしていた。
「じゃあ例えば、通常のミスリルで似たような剣を作ったらどのくらいになるの?」
「うーん、意匠にもよるが、ミスリルの素材込みで500から1000枚くらいじゃないか? ミスリルを持ち込めばかなり安くなると思うが、それでも金貨10枚はするだろうな」
「ほっほー、良い物なんだねソレ」
「ミスリルその物が驚くほど貴重品って事なのね…」
「まぁその剣だが、徴収されると言ってももちろん対価は出ると思うぞ? 男爵か、もしかしたら子爵の爵位を賜れるかもしれん」
「カスミ・キリモト女男爵だね!」
「冗談でしょう、爵位なんてもらってしまったら、それこそグリムズ王国に縛り付けられてしまうじゃない。ノーサンキューだわ」
「まぁそれは措いといて、さすがに今回はうちのギルマスに話してもらうぞ? 60階層までの道のりを」
ガシっと腕を掴まれてしまった、今回は逃げられそうもないな… 鍛冶屋の話をしないところを見ると、恐らく交換条件だと言う事なんだろう。
「ちなみに俺はサブマスターだからな? 俺も同行する」
「まじか、サブマスターが倉庫に入り浸ってたのかよ」
「何を言うか、間違いが無いように鑑定し、査定するのは重要な仕事なんだぞ?」
「まぁそれはそうだけど」
「とりあえずギルマスの部屋に行こう、案内する」
まさかのサブマスターに連れられて、ギルドマスターの執務室へと行く事になってしまった。今回は仕方が無いと諦めよう、鍛冶屋の情報は欲しいからな。
話し合いの最中に魔石の勘定を終わらせるとの事なので、これも仕方がない。ゴーレムの魔石だけでも200個近くあるからな、それにブルーゴーレムの魔石は二回りほど大きかったし、査定も時間がかかるのだろう。
「ようやっと来たか、『ミスリルの誓い』だったか?」
「いや違う、パーティ名はこれから考えるよ」
ギルドマスターに遭遇した、プロレスラーのような筋肉だるまだった… すげぇ腕の太さだな、俺の太ももくらいあるんじゃないか?
「まずは腕の良い鍛冶屋だったな? この話が終わったら俺が紹介状を書いてやるから後で行くといい。そして… 60階層をクリアしたと?」
「ああ、身長が3~4メートルくらいの青色のゴーレムだったよ。さっき見てもらったらミスリルだったみたいだから、ミスリルゴーレムって事になるのかな」
「ミスリルゴーレムか… 一体どうやって倒したんだ? 普通の武器では傷一つ付けられないだろう」
「まぁそこは個人情報という事で、言えないな」
ギルドマスターは探るような目つきで俺達を見るのだった。