⑥
朝の4時、なんとか寝坊することなく起きることが出来た。ささっと顔を洗い、昨日作った衣服に着替えた… 作った服は着ていたスーツと同じ色、濃紺の作業服だった。丈夫な生地でそうそう破れなさそうって事で選んだ奴だ。
4時半には他の2人を起こすつもりなので、空いた時間で昨日できなかったマイホームベースで手に入れる事の出来る道具や武器について調べる事にする。
昨日初めてマイホームベースに入った時に流れ込んできた知識に、このスキルにもレベルのようなものがあり、それを上げると制作できる物が増える…との事だ。とりあえず現状で手に入る物を確認しないとな。
いそいそとロビーに向かう、ロビーには色々と置いてある 衣服を作る装置、道具を作る装置、そして武器を作る装置だ。武器を作る装置のモニターの前に座りチェックする、すると…モニターにはいろんな武器や防具が並んで表示されていた。通販とかで売ってる3段警棒とか、スタン警棒とか…暴徒鎮圧に使われてるクリアな素材の盾とか、そして銃まで…
うーん いきなり素人が銃とか使いこなせると思えないけど、あるに越したことは無いと思い、金属っぽい鎧を貫けそうな物を選ぼう…と思ったが、うん 銃とか全然詳しくないのでわからん! 考えてる時間が惜しいので、その間にスタン警棒でも作っておこう。おっとすぐ完成しちゃった、うーんどうしよう… 強力な銃は反動があるっていうし、まぁいいや、順番に説明を読んで行こう。
現状制作できる銃の種類が余りなかったので、鎧を抜けなくても威嚇が可能になりそうな『UZI』というサブマシンガンに50発装填可能なマガジンを選び製作開始。制作完了まで10分か、十分間に合うな。
仮に鎧で防がれたとしても、相手は驚くだろう、鎧の可動部分を狙えば中身にも届くかもしれないしな。さすがにどれだけ威力があるかなんて知るわけないからしょうがないね。
専用のベルトにスタン警棒を差し、サブマシンガンの完成を待つ。しかしマイホームベースのレベルアップってどうやるんだ? 俺自身の魔力が上がればいいのか? わからん… まぁいらん期待するよりも現状でどうにかできるように準備しておけばいいよね… きっと。
待ちながら武器の項目を見ていると、総合格闘技の試合とかで付けているグローブとか、足の甲を守るような奴とかもリストにあった。 他にも肘や膝につけるサポーター、木刀位なら簡単に防げそうな腕当て、グローブだけ作っておいてやるか、この装置は正直見せられないと思うから 先に手を打っておこう。それに全部回避するのも無理ゲーっぽいから防御用の腕当てもあった方がいいな、これは今後追加していこう 今日じゃなくても問題ないな。
サブマシンガンが完成した、時刻は4時25分。さすがに5分で撃ち方の練習はできないから、せめて使い方だけでも知っておこう。
4時半になり、さぁ起こしに行こうと腰を上げると パタパタと2人が揃って出てきた
「お、朝は大丈夫だったんだ。一応すぐ出たいから速攻で顔洗って用意してね 朝飯は馬車の中で喰おう」
「はーい」
まだはっきりと起きていないのか、美鈴が寝癖をつけたままシャワー室へ入っていった。霞は十分目覚めているようで、美鈴の後について行く。
20分くらいでシャワー室から2人が出てきたので、そのまま外に出る。外はまだ朝日は昇ってなく暗かった。
「5時だとまだ暗いんだな。あの兵たちが何時頃から動き出すか時間をチェックすれば明日はもう少しゆっくりできそうだ」
「とりあえず、朝から顔だけでも洗えてよかった。向こうの馬車の子達は…って思うと哀れに思うわ」
サンドイッチをつまみながら霞が返事をする。
「でも、ハーレムだの食糧強奪だの、正直言って仲良くするなんて事は今後絶対無理。おじさんがどうしても許してやるっていう以外は共存できない」
「いやぁあのヤンキー君を許すとか無理だろ、一緒に居る奴らも同罪だ、とてもじゃないけど俺は無理だな。あんなのを引率する気は起きないと思うよ」
「あの与えられてた食料も分配しないで独占してそうよね、あの男」
「関わらない関わらない。それだけで少しは平穏になるよ」
あのヤンキー君の評価は2人共厳しいようだ。
5時50分になり、朝日が顔を出し周囲が明るくなる。ガヤガヤと人の声が聞こえだしてきた時、突然幌馬車の幌が開かれた
「あー、3人いるな」
シャッ
どうやら確認だけだったようだ、中を見てすぐに幌を閉じてどこかにいってしまった。まぁ無駄に絡まれなくて良かった。
「そういえば、昨日訓練してみてどうだった?」
霞に昨日のことを尋ねてみた。
「私はそんなに運動は得意ではなかったんだけど、びっくりするほど体が動いたわね」
「ほほぅ。武闘家恐るべしだな」
「私も色々試してみたけど、体力とか増えてるみたいだった。転移特典でもあったみたいな感じ」
美鈴も感想を述べる。そうなのか、そういう事なら俺も体を動かした方が良さそうだな。若さが違うとはいえ女の子に助けられるってのもなんか嫌だしな。ちっぽけだけど矜持ってやつだな。
馬車が動き出した、時計を見ると6時半 騎士達は朝飯は食べないのか、割とすぐに動き出したな。移動中の幌馬車の中でトイレへの扉を出してみる、馬車内の空間に固定されるか扉だけその場に置いていってしまうのか検証しなければいけなかったためだ。扉を置いて行ってしまうようなら、トイレなどは馬車が止まってる時にしか使えなくなるからな。
と、心配していたけどどうやら馬車の内部の空間に固定されるようで安心した。
「扉は大丈夫みたいだな、これなら移動中に昼飯を作りに行けるな」
「やっぱりお手洗いを我慢しなくて良くなったのがすごいうれしい」
「デスヨネー」
「食事の当番なんだけど、順番はどうする?」
気になっていたことを2人に聞いてみる、やはり自分で作る物は嫌いな物が入らないから安心して食べられるけど、レパートリーの少ない俺だと すぐに飽きてしまうのよね。日本に居ればコンビニだったりファミレスだったり行けるけど。そういえば言ってなかったと思うけど、俺は独身だから! 25~6の頃に結婚を考えてた彼女がいたんだけど、2股かけられてて、所謂ATM?キープ君?みたいな扱いされてたのが発覚して別れたんだよね。どうもそれ以降は人間不信というか女性不信が抜けなくて現在に至ってるわけだ…
そういった訳で、自分がひねくれて他者を信用できない奴だって自覚は大いにある。実際にこの2人の女の子達にこれ以上手の内を晒していい物かつい考えてしまう。いやーでも、台所位預けても大丈夫かな… いや、台所だから預けるとするか。料理のセンスは多分俺よりも上手なはず、食べる事は生きる事だ 明日への活力の為には女の子の手料理はきっと効果あるはず!
声をかけておいて1人で考え込んでると美鈴から返事があった。
「私が全部やる? ぶっちゃけていうと、私が一番役に立てなさそうで捨てられるんじゃないかと不安」
「俺としては、裏切らない限りは捨てるとか考えないよ。後、いいように利用するだけの奴とかね」
「それは大丈夫よ、一番の生命線はおじさんだと思っているから裏切るなんてないわ。多分美鈴さんもそう思ってるはず」
霞も返事を返してくる、まぁ俺のマイホームは便利だからな… 裏切らないというのなら俺も裏切ることは無い。
「とりあえず今日の昼飯を頼めるか? 簡単な物でいいし」
「了解したよ」
「私も手伝うわ、台所の使い方は覚えておきたいから」
女子2人組はなにやら仲良くなりつつあるようだ。