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「このKSVKというのは、重さはどれくらいなの?」
「データとして載っていたのは12㎏って書いてたな。普通であれば、戦場を担いで運んで運用するもんじゃなさそうだ」
「12㎏… 片手で持ててしまうわ。女性としてこれはどうなのかしら」
「別に気にしなくてもいいんじゃないか?見た目がマッチョになってる訳じゃないし」
「そういう問題じゃないのよね… やっぱり女性として、しなやかな強さには憧れるけど、こうも物理的だと…ね」
霞が何を求めているかは判断がつかないが、悪いけどそんな話に付き合ってしまうと日が暮れてしまう。ダンジョンだけど…
「まずはアレだ、コレを試してみよう。とは言っても、美鈴には厳しいよな」
「そうね、美鈴は小柄だからこの長い武器は持ち歩けないんじゃないかしら」
「俺もそう思う」
美鈴は小さいのだ。正確な身長は聞いていないが、恐らく150~60センチ程度。 この身長で140センチの対物ライフルを担いだら… なんだか可哀相になって来るよな。
とりあえず使ってみないとどうにもならないからそろそろ外に出よう。
─SIDE:ハワード伯爵─
「…という事なんですよ」
「そうでしたか、それならば競合しなくていいですね」
「はいっ」
ビリーカーンのダンジョンへと向かう馬車の中、窓の外を見ながら我が娘と王女殿下の会話を聞きながらぐったりしていた。
王命で殿下の婿にタイキを迎え入れる事は、彼女の中ではすでに決定事項のようで、一緒にいる女性たちをどうするか…を、我が娘 キャサリンと話し合っているのだ。
「なので、カスミお姉様は私に譲っていただければ後は何も申しません」
「もちろん構いませんよ?なんでしたらもう1人の小柄な女性も連れて行ってくださっても問題は無いですね」
「しかしですね、ミスズは少し怖いのです。我が家の執事を睨みつけていましたから」
「異世界人というのであれば、何かしら役に立つのではなくて? でもそういう事でしたら一緒に連れて行きましょうか」
本当に何を言っているんだ?王女殿下は。勇者と共に召喚された者だから、どんな能力を持っているかは全く分かっていないというのに、下手に煽るような事だけはしないで欲しいものだ。キャサリンには後で説教が必要だな…
しかし、いい加減そろそろ釘を刺しておかないといけない気がするな。
「恐れながら殿下、タイキを含む3人の異世界人はこの国とは何ら関係もありません、陛下のお言葉に従わない可能性もあるのです。どうか慎重な行動をよろしくお願いします」
「大丈夫ですわ、第4王女である私の婿になれるのです、褒美としては十分ではありませんか?」
「そもそもの価値観が違うと思われるのです、機嫌を損ねて国から出ていく…程度であればまだいいですが、敵対してしまうには謎の部分が多すぎるのです。どうかご自重くださいますよう…」
「ハワード伯は、私では力不足だとおっしゃいますか?」
「そうではありません、私達が暮らす世界とは全くの別世界なのです。生まれが違えば持っている常識も異なるのです、まずはじっくりと観察して、判断なさいますよう…」
クリスティーヌ殿下は、プイっと目を逸らして窓の外を眺め出した。これは聞いてはもらえなかったようだ、今後も苦労しそうだな。
いくらタイキが温厚そうに見えるからといっても、はっきりとアニスト王国を敵だと言っているのだ。一国を敵に回しても対処できるような事も言っていたしな、強敵は同郷の者だとも…
まぁいい、ビリーカーンについたら殿下よりも先に接触して、子供のすることだから怒らないよう話を通さないといけないな。
─ビリーカーンダンジョン─
ドパーン! ゴシャァァ!
「うわー、破壊力というか貫通力に引いちゃうね」
「ええ、これはひどいものだわ」
KSVK対物ライフルをゴーレムに向かって試射したのだが… 頭部に命中した弾丸は岩石をものともしないでめり込んでいき、なぜか後頭部の方から爆発したかのように炸裂したのだ。その衝撃で魔石が飛び出し、ゴーレムは動きを止めたのだった。
「撃った時の衝撃もデザートイーグルとは比べ物にならんほどだったけど、さすが異世界人補正といった所なのか」
「1発で仕留められるんなら人数分あった方が良いかもね? 一応上位種対策のためには」
「そうだなぁ、オーガまでは… 普通に生物であるならデザートイーグルで十分な気はするけど、こういった無機物相手には良いかもしれないな」
「他にも出てくるかもしれないからね、こんなやつ」
単純な破壊力はハンドガンとは比べ物にならなかった、射程も長いという事だから使いどころを間違わなければ十分すぎる戦力となるだろう。
ゴーレムでこれなのだから、オーガに使ったら… きっと形容しがたい状態になるだろうな。
「有効射程は1,500メートルだったっけ」
「え?そんなに届くんだ?」
「そんな事書いてたと思う」
とりあえず効果は抜群だったので、倉庫に入れて先を進んで見る事にした。
「これさ、もし上位種がミスリルゴーレムとか出ちゃったとして、ドロップにミスリルが出てきたりしたら… いよいよ武器とか作れるんじゃない?」
「それはいいわね、ミスリルのナックルとか作れるなら欲しいわ」
「だな、ちょっと進行速度を速めるか」
「「賛成!」」
まぁ速めるといったって、すでに未踏地帯なのだからマップなどは存在しない。結局虱潰しに探るしかないんだけど、俺達の体力はこの世界の者とは比較にならないみたいだからきっと進んでいるんだろうと思いたい。
ピピピピッ ピピピピッ
なぜかアラーム音が響き渡った。
「あ、午後6時にセットしてたんだった。 夕食の時間だよ!」
「もうそんな時間か、途中で試射とかしてたからあまり進んだ気はしてないけど、マップ無しで5階層も進めばいい方か」
「そうね、罠とかの心配もしながらだから速いと思うわ」
そんな訳で、55階層で今日の進軍は終了とした。
「それじゃあおじさん、今日も3種類お願いします!」
「ああ、了解だよ。もうどうせならびっくりするほど綺麗になってくれ」
「!、任せてよね!」
今日も化粧品を3種類作るそうだ… それが終わったらKSVKを2丁作っておくか。遠距離攻撃の要になりそうだしな。
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