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異世界生活47日目
4時だ、もう目覚ましなんていらないな。 結局昨晩は、2人で共有するという化粧品を3種類製造していたようだが、ぶっちゃけ大して魔力は消費していなく、特に問題は無かった。 まぁ2人には言わないけどね!
それにしても、俺の魔力の最大値と、制作する時に消費する魔力量をデジタルで知りたいもんだ。それが出来ればもっと計画的に色々とできそうなんだが、無い物ねだりをしても仕方がない。
そして身体強化の訓練は、晩までしっかりと実戦で使っていたので問題なく練習する事が出来た。ただ…全身に纏った時の瞬発力はすごいもんで、見えているのに意識が追い付かないとか妙な感覚が何度もあり、万全に使いこなすにはもう少し時間がかかりそうだった。
これはアレだな、高速思考とかそういった技能が必要になるやつだな。普通に使いこなすには反復練習するしかないよな、今日は1日強化した状態を維持してみて、魔力の消費具合と体の動きと意識の連動をうまくできるように考えよう。
ホント… 段々俺も人間離れしていくなぁ、美鈴や霞程じゃないけれどね!
昨日途中で止めてしまった製造のラインナップの写真撮りの続きをしながら、考え事を続ける。
「うーん、ゴーレムに有効な武器って一体なんだろうな」
美鈴が感知した限りでは、頭部にある魔石を使って動いているみたいだが、そのボディは岩石と似たような物だった。ゲーム的な知識で考えると、多分これからアイアンゴーレムとか出てくる可能性がある。さらに上位種とかになれば、ミスリルゴーレムだったりと、更に硬そうなのが控えているかもしれない。
とりあえず現状現れている岩石ゴーレム、ロックゴーレムというやつか… こいつらならばなんとか破壊は出来ているが、アイアンゴーレムとかになれば… 難しそうだな。
やはりダンジョン産の不思議金属を使った武器とか手に入れたい所だな。
「おはよう、今朝も早いね」
「ああ、おはよう」
美鈴が起きてきた。その手には昨晩作ったやつだと思われる瓶を持っていた、顔を洗ったついでに化粧するのだろう… ご苦労なこった。 しかし、この手の事を口に出してしまうと、女性陣は必ず反発するので黙っておく。
「おはよう、霞は?」
「おはよう、霞ならついさっき洗面所に行ったよ」
おや? と思って時計を見る。まだ6時になったばかりだ、霞が起きるにしては早い時間だ、そんなに化粧品が嬉しかったのかな…
写真撮影も終わり、朝食を取りながら今日の動きを話し合う。
「という訳で、きっとこの先アイアンゴーレムとか、もしかしたらミスリルゴーレムといった上位種が出るかもしれない。その対策をだな…」
「それは、とりあえず出会ってしまった時に蹴ってみてからでいいんじゃないかな?さすがに岩や鉄を切れる刃物って無いでしょう」
「そうなんだよな、銃火器についても弾の口径のせいなのか、少し削れるだけで跳ね返っちゃうから怖いよな」
「なんかこう、ナパームとか対戦車砲とか爆発系が欲しいよね」
「リストには無いけどね!」
「対戦車といえば…」
美鈴と無駄口を言い合っていると、霞がなぜか手をあげて参加してきた。
「対戦車ライフルって言うのがあったはずだけど、あれは大きくて重そうだけど、戦車の装甲を撃ち抜くための武器じゃなかったかしら?」
「あっ、そういえばそんなのがあった気がするな。確かに大きいから、持ち歩く都合で除外したんだっけ」
「それだ! 今の私達の腕力なら重くたって問題は無いし、対戦車用ならアイアンが出てきても抜けそうじゃない?」
確かにその通りかもしれないな。せっかくなのでリストを広げて見てみるか…
あったよ、KSVKというロシア製の対物ライフルというのが。全長1,400mmとか長いだろ!弾丸の口径が12.7㎜とこれもまた大きい。
「試験的に1丁だけ作ってみたら?効きそうなら人数分用意するって事で」
「そうだな、朝から魔力は使うのは気が引けるけど、準備は万端じゃないといけないよな」
早速制作する事にした、完成までかかる時間は2時間ほど。
「それじゃあ完成までは昨日と同じやり方でゴーレムを壊していこう。なんとなく倒せば倒すほど体が軽くなっていってる気がするんだよね」
「そうね、やっぱり個人にもレベルという概念があるのかもしれないわ」
「使える魔法も増えていくしね! 何より体の芯から丈夫になっていく感じがするよね」
「ええ、結構鍛えているのに筋肉質にならないのもいいわ」
「そういや、俺は腹のぜい肉が消えたなぁ」
「うんうん、引き締まったよね」
朝の7時半、マイホームから出て戦場へ…
ドカン! ドゴン!
以前動画で見た、巨大な破壊鉄球で建物を壊しているかのような音がダンジョン内に響き渡る。もちろん俺達がゴーレムを壊している音だ…
外に出てから常時使い続けている身体強化にも慣れてきて、今では魔力の消費を抑える方法も見つけた。直接攻撃する箇所、拳と膝から下は強めにかけているが、その他の場所は通常通りという場所により変化も覚えたのだ。
「おじさん、いつの間にか10時過ぎてる。対物ライフルもう完成してるんじゃないかな?」
「おっ、もうそんな時間になったか。身体強化が上手く使えるようになってから、ゴーレム壊すのが捗ってたから夢中になってたな」
「じゃあ一旦休憩にしましょうか」
10時の一服、まぁ社会人である俺にとっては馴染みのある休憩だな。
目に見えるゴーレムをすべて破壊し、魔石を回収してからマイホームに入る。早速霞は厨房に向かって10時のおやつを用意するようだ。
「うわぁ、大きいねぇこれ」
「うん、全長1,400㎜もあるんだよ。普通に使うなら、スタンド立てて地面に置いて撃つ物みたいだな」
「ほー、でもこれなら担いで撃てそうだよね」
「そうなんだよなぁ、いつの間にやらマッチョになっちゃったからな」
「おじさんはそうだよね、でも私と霞はプニプニのままだし!マッチョじゃないし!」
なんだ?筋肉に敵対意識でもあるのか? まぁいい、下手に刺激しない方が良さそうだ。
とりあえず3人並んでおやつを食べる事にした。