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「さっ! 今日もがっつり行きますか!」

「そうね、夕方まで頑張りましょう」


 あれからたっぷり2時間ほど化粧品をチェックして、ようやく出発となったのだ。俺?待ってる間は寝てたよ。


 2人は必要な化粧品のチェックが済んだらしく、書き綴ったメモを手にしながら元気に振り返ってきた。ああ、夜に作ってやるって言っちゃったっけ…


 そんな訳で、元気に51階層を進むことになった。


「ん、なんか魔力を感じるかな」

「何かいるのか?」

「いると思う、魔法的な何かをしている奴が」


 という事は、多分オーガではないんだろうな。魔法的な何か…か、一体どんな奴だ。


「なんか来るよ!」


 美鈴が声をあげた、霞がススっと警戒しながら前に出る。俺も初見の敵だろうからと思ってデザートイーグルを構えながら後に続く。


 なにやら小刻みに地面が振動しているな、地震か?


「これ、足音じゃないかしら。近づいてくるわ!」


 現れたのは、俗にいうゴーレムというやつだった。岩の塊のくせに人型を形成しており、俺達を見るなり走ってきた。


「アレは銃が効かなさそうだな、重そうだし膝の関節でも狙おうか」

「そうね、それじゃあ行くわ!」


 霞が走り出してゴーレムに真っ向から向かい合うと、殴りかかってきたゴーレムのパンチを掻い潜ってローキックを当てた。


 ガシャーン!


 大きな音と共に、ゴーレムの片足が木端微塵になってしまった。


「あら、硬そうだったから強めに蹴ってみたのだけど、意外に柔らかいのね」


 違うと思うぞ? 俺が蹴っても同じようには絶対にならない。 でも確認しようと俺も近づいて腕の部分に蹴りを出す。


 ガキンッ


「痛えええぇぇ、十分硬いって!」

「そうかしら? ちゃんと当たった腕は折れてるわよ?」


 片足が吹き飛び、腕も1本失ったゴーレムが倒れた所に霞が顔面を狙って蹴りを出す。

 当然轟音と共に炸裂する顔面… 何これ怖い。


 炸裂した頭部から魔石が転がり落ち、そのゴーレムは活動を停止した。


「弱点は頭部の魔石って事か」

「そうみたいね、この魔石が魔力を出していたみたい」

「弱点が分かった所で、霞以外対処できないんじゃないのか?」

「どうだろうね、霞は余裕みたいだったけど、私の目から見ても動きはそんなに速くないし、いけるんじゃない?」

「そうか? マジで硬かったぞ」


 これだけ硬いとなると、普通の武器じゃどうにもならないよな。建設現場なんかで使う、大型のハンマーかなんかで叩かないときついんじゃないかな。このままだと霞だけに負担をかける事になる…


「やっぱアレだよ、蹴り足に魔力を集めて強化する… 所謂身体強化ってやつを使う時だよ!」

「え? そんなことできんの?」

「だって、訓練する時に魔力の循環をやってたじゃない? その要領で、体の隅々まで張り巡らせれば行けるんじゃないかと思うけど」

「うーん、他に手が思いつかないからやってみるか」


 いきなり実戦でぶっつけ本番というのは本来やっちゃダメなパターンだが、こちらには霞というゴーレムすら圧倒する存在がいるから、せっかくなのでやってみようという事になった。


「じゃあ霞、少し負担が増えるかもだけどよろしく頼むよ」

「任せてちょうだい、こういう時じゃないと活躍の場が無いから頑張るわ」

「いや、別にそんな事思っちゃいないんだが、頼りにしてるよ」


 普段は循環させている魔力だが、右足の膝から下にかけて魔力を集めて固定させてみる。うん、なんとなくだけどコーティングされているような気がするな、試しに蹴ってみるか。


 霞に任せていたゴーレムは、気づくと全部粉々にされてしまっているので、霞よりも前に出てゴーレムと対峙する。


「そぉいっ!」


 ゴーレムの大振りパンチを回避してから、ひざの関節部分に向かってローキックを入れてみる。


 ゴキン!


「お? 確かにこれは足が痛くないかも?」

「ホント?次は私がやってみるね」


 美鈴も同じように… というか、ほぼ全身に魔力を纏わせてゴーレムに向かって突進していく。 小柄な美鈴がゴーレムに突進している場面を見ていると、もう違和感しか感じないけど多分大丈夫だろう。魔力の扱いは俺よりも遥かに上手だからな、伊達に聖女ではないって事だが… 相変わらず肉弾戦をする聖女って言うのはひどいな。


 全身に魔力を纏った美鈴の動きはすごかった、なにせ速いの一言だ。 問題があるとすれば、美鈴自身がその速さに対応できていないので、ゴーレムになかなか攻撃を当てられていない事だな。これは要訓練だ…


 ゴシャッ


 美鈴の蹴りが当たり、ゴーレムの足がへし折られていた。なにこの子、本当に怖い。


「やったよ!」

「だけどアレね、今晩からしっかりと訓練して、体の最適な動かし方を覚えるべきね」


 両手を挙げて喜んでいる美鈴に声をかける霞、なんとなく『そんな蹴りじゃ甘い!』的なニュアンスを感じるのは気のせいか。


 しかし全身に魔力を纏わせるのか… 俺の魔力でも出来るのだろうか、とりあえず最悪の場合に遭遇してしまった時のために覚えておくべきなんだろうな。


「もしかして、この魔力を纏う方法を霞がやったなら、どんな結果になるんだ?」

「え? 普段から手足にやっているわよ? そうじゃなきゃ殴った手や蹴った足が壊れちゃうでしょう」

「そりゃそうだな、全身に魔力を纏ったら?」

「普段よりずっと速く動けるわ、これも訓練は毎日してるわよ?」

「さすがだな、もう勇者なんかよりもずっと強いんじゃないか?」

「言ったでしょう?負けるつもりは無いって」

「んで、賢者と大魔導士の魔法は美鈴の結界魔法で対処できるとしたら… 現状でもう勝ててしまうんじゃ?」

「そうかもしれないけど、念には念をって言うでしょう?」

「全くだ、その意見には大賛成だ。それじゃあ晩まで突き進んでみるか!」

「「了解!」」


 そんな訳で士気も高まり、晩までかけて53階層まで進めた。 一応ゴーレム相手に銃弾を当ててみたけど、予想通りほんのちょこっと削れただけで、全然ダメージになっていなく、それよりも跳弾の方が危ないので使用を取りやめた。



「それでは… 朝にお願いしていた事、やっていい?」


 夕食後、美鈴と霞が制作のモニターの前に陣取り声をかけてくる。


「マジでお手柔らかにな?必要な分を必要な数だけな?」

「もちろんわかってるよ!ダンジョン内でおじさんの魔力が切れたら大変だもんね。だから数日に分けて製作するね?」

「本当におじさんには頭が上がらないわね、ふふっ、今日はこの3種類にしてこっちは明日にしましょう」

「そうだね、優先順位は間違えないようにしないとね」


 なんてこったい、化粧品ってのはそんなにたくさん使うものなのか…


 そうは思いつつも、一緒にいる女性が綺麗になるってんなら特に問題は無いか。 とりあえず身体強化? それの練習をするためにトレーニングルームに入ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  デザートイーグルが役立たず扱い・・・・  地球のハンドガンとしては最強クラスなのに。(涙目)  異世界怖い。
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