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異世界生活46日目
よし、いつも通り目覚めたのは朝の4時だ。 まだ若い美鈴と霞はこの時間には絶対に起きてこない、さぁマイホームが強化されたのか確認しないとな!
熱いお茶を片手に『製造』のモニターを見る。 武器は… 増えてないな? 防具っと、これも増えてない。 あるぇー?もしかして特に変化無し?
道具はっと、これは元々多かったから何が増えたかわからんなこりゃ。
「おお? 車両が増えているぞ! スズキのエス○ードかよ… 気持ち大きくなった程度か」
それでもまぁ、軽四のジ○ニーよりは居住性は増えるだろう。ジ○ニーは乗り心地を求める車じゃないからな、アレは悪路を走破するためのマシンだ。エス○ードは一応兄貴分という立ち位置なので、作っておくべきだな。
「朝からダンジョン攻略するって時に魔力を消費するのはどうかと思うが、やってしまおうか」
製造開始! グっと魔力が吸い取られた感覚が来る、さすがに衣服や銃弾を製造するのとは消費量が違うって事か。
ついでにパーツの方も確認してみると、悪路を走るための足回り部品、大きめのタイヤとホイール、グリルガードなどの保護部品も増えていたので、それも作っておこう。
ゆっくり寝て回復させたはずの魔力を使い込み、早朝からぐったりしてしまったが後悔は無い。ただ問題は… ダンジョン攻略しているから試乗はまだまだ先だという事くらいだ。
久しぶりに自分のステータスを開いてみる。すると、スキルの所に書いてあるマイホームベースに+1と書いてあった。
「これは… レベル1みたいな感じなのかな?」
美鈴や霞もそうみたいだったが、ダンジョンに入ってゴリゴリ戦っていたらスキルや魔法が増えてたらしいから、きっと戦闘による経験値的な何かの作用で上がったって可能性があるよな。
という事は、この先に進んで強い魔物と戦っていればまた上がるかもしれないな! なんだかモチベが上がってきたぞ!
とりあえず少し休むか、さすがに倦怠感があるまま戦いに出る訳にはいかないからな。
「どうせならHPとかMPも数字で表記して欲しいよな、せっかくステータスが見れるようになっているのに」
こういった感覚に頼った感じでないとダメなんだろうけど、何事もデジタルで育った日本人にはじれったいと思ってしまう。
しかし、マイホームのレベルアップを期待していただけに、少しがっかり感があるのは否めない。いや、車のグレードが上がったのは素直にうれしいよ? でももう少しこう…なんというかね。 装甲車とか作れればいいなとか思っちゃうわけよ、我儘言ってるのは分かってるけど。
後はグレネードとかロケットランチャーとかもロマンがあっていいよね、重火器で魔物を倒すなんて…ゾンビ化した連中を撃ちまくって脱出するあのゲームみたいだし!
俺もあのゲームは結構やり込んだな… 1から3まで遊んでたな。ナイフ縛りとかもあったけど、俺はあえてクリア特典のロケットランチャーで無双するのが好きだった。
いつか製造できるようになる事を祈ろう、そして容赦なく撃ちまくるんだ。
1時間ほどボケーっとしていると、少し体が楽になったので、改めてモニターを覗き込む。他に変更点が無いかどうか。
「これはアレだな、全ての品目をメモしておかないと増えたかどうかなんて気づかないよな。でもメモを取るなんて面倒だな…」
「スマホで写真撮ればいいんじゃない?」
「ぅお! いつの間に背後に?」
気づいたら美鈴に後ろを取られていた、いくら集中していたとはいえ気づかないとは…
「おはよー、今来たんだよ。それで何か増えてたの?」
「ああ、車が増えていたよ。次からの移動は軽じゃなくなるぞ」
「本当?それはうれしいなー。やっぱり機動力の差があるから、前衛の霞はすぐ外に出れるように助手席にって思ってはいるけど、後ろは狭くてねぇ…特に足の置き場が」
「まぁ軽だからな、次からは多少広くなるからいいんじゃないか?」
「まぁ、今はダンジョン攻略中だから使わないんだけどね」
美鈴はそう言いながら洗面所に消えていった、顔を洗ってくるのだろう。しかしそうか、スマホで撮っておけば確かに楽ではあるな。
ポケットに入れてあったスマホを取り出し、ページ毎に写真で記録していく。こうして見ると、衣類が増えているのか? 普段着っぽい服や一般的な作業服、ツナギとか、良くてもちょっとお洒落っぽい物しか無かったはずだ。
それなのに、今見ると防刃ベストとか迷彩柄の頑丈そうな衣類がある。これは気づかなかったな、今晩にでも作っておいた方が良いかもしれないな。
美鈴が戻ってきたので声をかけてみる
「衣類が増えてるみたいなんだが、どのくらい変わっているかわかるか?」
「どれどれー?」
美鈴が食い入るように画面を見ている、これはきっと時間がかかるやつだな。後にすれば良かったかもと後悔しながら朝食の準備を始めたのだった。
いつでも食べられるように用意をしてロビーに戻ってくると、美鈴はまだ画面を見ていた。
「おじさん… お願いがあります!」
「な、なんだ?」
「あのね、この世界で生きていくうえで絶対に必要かって言われたら必要ではないと思うんだけど、どうしても欲しい物が追加されてたの。多分霞も大賛成してくれると思う」
「だから、それはなんだ?」
「化粧品…」
「マジで?そんなのが増えてたの?」
「うん、基礎化粧品が大体揃ってるね」
「そうか、まぁそれは女性にとっては大事な物かもしれないな。夜にならいいぞ、今は車を制作中だし、結構魔力を削られたからな」
「ホント?そしたら霞が起きてきたら必要な物をピックアップしておくね!」
「お。おう。お手柔らかにな」
化粧品かぁ、確かにそれだと俺は気づかないよな。普通の一般男性、それも40男にとっちゃ化粧品なんて全く必要性を感じないからな。 まぁこれは俺だけがそう思っている可能性もあるが…
朝の6時半には霞が起きてきた。朝食をささっと済ませたと思ったら、美鈴と共にモニターに釘付けとなってしまった。
「おーい?ダンジョン行かないのかー?」
「ちょっと待って!」
「ええ、少しだけで良いから…」
これは… しかし女性も色々と大変なんだな、16~7の子ですらこれだけ必要とされるんだから、お肌の曲がり角と言われる世代からしたら、死活問題になってしまうんだろう。 恐ろしや…




