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 異世界生活45日目


 俺達は50階層まで進んでいた。40階層を越えたあたりからオーガの上位種と思われる個体が現れたんだが… 霞の敵ではなかった。


 もうどんだけ強いんだよこの子は、正直言って、50階層の上位種複数に囲まれると、俺だともう1人だと対処できないレベルだったんだが、霞はそれでも手加減する余裕があった。


 霞が数多くのオーガを受け持ってくれるおかげで、俺と美鈴はなんとかタイマンに持ち込んで訓練に集中している。


「どうかしら?そろそろ前に進めそう?」

「んーこれはどうするか悩む所だな、俺と美鈴の近接戦闘の訓練を一旦やめて、前に進んでもっと強い敵を相手に銃火器も含めたトータルバランスを上げるべきか、このまま近接戦闘をするべきか」

「私は皆に合わせるわよ」

「そうは言っても、ここに出るオーガじゃ訓練になってないんだろ?」

「それはまぁ… だけどおじさんと美鈴に怪我をされても困るわ。じっくりと鍛えていくのは悪い事じゃない」

「まぁそうなんだけどな」


 まぁ実際問題、タイマンであればオーガの上位種相手に近接で戦えているんだから成長の余地はまだあるとは思うが、それだと霞がいつまでも足踏みしちゃうって事なんだよな。


 現状俺達の最強火力なんだから、何かあった時のためにと考えると… 悩ましい。


「とりあえず50階層をクリアしてみようよ、1階層に戻れる転移陣があるかもしれないし、倉庫に溢れかえった素材を処分しに戻るのも有りだと思う」


 そうなのだ、30階層以降は1階層に戻れる転移陣が現れたのだ。 30階層の守護者の部屋、40階層の守護者の部屋にそれがあったから、50階層にもあるのではないかと。


「それもそうだな、一度戻って倉庫を空けるか。オーガの上位種の情報も売れそうだしな」

「わかったわ、それじゃあ守護者を倒しに行きましょう」


 50階層の最奥部、罠などを確認してから中に入った。

 部屋の中に立っていたのは全部オーガ、しかし体格や肌の色が違うなどの差異が見られた。


「一番奥にいる偉そうなオーガ、オーガロードとかって名前だと思うよ! 他のは多分ジェネラルとかそんな奴」

「大雑把だなおい」


 俺達に気づいた上位種のオーガ達、前衛にいた5匹が向かってきた。


「私は奥に行くわ!あの5匹をお願い!」

「了解」


 所謂ボス部屋で訓練などと言ってられない、デザートイーグルを懐から抜いて構える。射線に霞が入らないように位置取りをしつつ攻撃開始した。


 最初の銃撃で2匹が倒れる、俺と美鈴の弾丸がきっちりと急所に命中したのだろう。残った3匹は銃声に驚いたようで、走っていた足を止めた。


「チャンスだ!さくっと仕留めてしまおう!」

「わかった!」


 銃弾が効く状態で、敵が距離を取って立ち止まったとなればただの的でしかない。 あっという間に前衛の5匹を倒せたので霞の状況を伺うと…


「あれ? もしかして遊んでるの?」

「遊んでるというか虐めているというか… オーガが可哀相だな」


 どうやら俺達が前衛の5匹を倒している間に、オーガロードと思われる個体の周囲にいた取り巻きをすでに倒していて、オーガロードとタイマンで殴り合いをしている霞の姿が見えた。

 殴り合いと言っても、霞は全ての攻撃を回避しつつ殴っている。それも打撃の威力を確認しているかのようで、どうやらここでも手加減をしているらしい。


「霞!こっちは終わってるから好きにしてていいけど、油断だけはダメだからな?」

「了解したわ! 私もちょっと打撃スキルの確認をしたいから、巻き添えにならないように離れていてちょうだい」


 打撃スキルだと? 何か必殺技でもあるのか? これはぜひ見てみたいものだ。


「美鈴、下がるぞ」

「はいよー」


「崩拳!」


 霞がそう口にしながら放たれた拳、オーガロードの肩口に当たったかと思ったら、そこを起点に全身に衝撃波のようなものが走っていくのが見えた。


 ドパーン!


「きゃあ! これはひどいわ」


 殴ったはずの霞が悲鳴を上げた… なぜならオーガロードは爆発四散し、返り血を全身に浴びてしまったのだから…


「これは… 使いどころを考えないといけない技だったわ」

「すげぇな、爆発したぞ」


 すぐさま美鈴が近寄っていき、クリーンの魔法をかける。


「ありがとう、助かったわ」

「今の技って、ゴーレムとか出てきたら使えそうだよね」

「次はそういった使い方をするわ」


 オーガ達の死体がダンジョンに吸収されていき、牙やら皮などがその場に残った。


「あっ オーガロードの所、なんか王冠が落ちてるよ! お宝だね!」


 確かにお宝に見える、しかしそれを何に使うのかと言われると返事に困るような物だった。でもまぁいいか、物好きが買い取っていくんだろう。


「よし、転移陣もあるな、それじゃあ一度戻ろうか」

「「了解!」」


 


 SIDE:第3騎士団所属、緊急輸送部隊長


 異世界人を護送中に全員取り逃がしてしまい、王命にて冒険者を装って後を追って来ていた部隊がマインズの町に到着していた。


「よし、今日は宿をとって休もう。明日からは異世界人についての情報収集を開始する」

「「はい」」

「まずは旅の疲れを癒す事を考えるか、異世界人の容姿と名前は憶えているな? 今日は休む予定だが、万が一見かけたら報告しろ」


 活動予算が少ないため、まずは安宿を探す事から始める。


 明日からは本格的な捜索活動に加え、滞在費用も稼がなければいけない。そのため、気合いを入れ直すという名目で酒場に行き、安酒をあおっていたのだった。


「隊長…」

「どうした?」

「あの角のテーブルを見てください」


 部下に言われて目線を動かしてみた、するとそこには…


「アレ…ですよね?」

「間違いないな、女が一人しか見えないが、周りにいる男連中は無関係の冒険者みたいだな」

「どうします?」

「アイツも飲んでるようだし、飲み終わったら尾行して宿を突き止めようか」

「はぁ… せっかく飲めると思ったのに」

「まぁそう言うな、これが終わらんと王都に帰れないんだから」

「そうですよね、手っ取り早く拉致して残りの連中の居場所を吐かせてしまいましょうよ」

「待て待て、一般の冒険者がいるうちは自重しろ。間違っても追われる訳にはいかないんだからな? ここはアニスト王国じゃないんだ」


(異世界人の女、確かアイツはカオリだったか… 職はセッコウだったはずだな。しかしこの世界にはセッコウという職は無い、恐らく異世界ならではの職なのだろう、油断は禁物だな)


 隊長は油断なく、カオリと男連中の動きを注視するのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 伯爵らと会話したのが38、39日目。一週間くらい時間が経ってる。 真面目に受け止めてたら、カオリとレイコは国にとって地雷。 憤死されちゃ困るから監視目的程度でも人を向かわせる。吉と出る…
[気になる点] 斥候はカオリだったのでは?隊長さんが勘違いしている設定かな
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