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「グロウ、どういう事だ?身分はともかく客人であると伝えていたはずだが?」

 

 ハワード伯が隣にいた執事を睨みつけた。


「はっ、直ちに調査いたします」

「終わった後で調査しても遅いだろうが!普段どのように教育しているのだ!」


 なんだか内輪揉めが始まったなぁ、茶番にしか見えないんだが。しかしまぁどうでもいいか、これで帰る前にちょろっとアニスト王国の事を教えてやれば十分だろう。しかし貴族と言うのはこうまで認識がかみ合わないんだな、認識を改めて違う方向から話を広める方がいいかもしれないな。

 問題は異世界召喚の事を知る者が市井にいるかどうかなんだよなぁ、多分いないんだろうな。こっちの方をどうにかしないとダメだな、最低でも帰れるのか帰れないのかはっきりさせないとモチベが続かない。


「俺達は行くところがあるのでこれで失礼しますね、それでは」

「ちょっと待ってください」


 ふと見ると、大人しくしていたお嬢さんが身を乗り出して口を開いた。


「先日は助けていただいたのに直接礼を言えなくて申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」

「いえいえ、先ほども言いましたが通りかかったついででしたので気にしないでくださいね」


 そう言った後、振り返って2人を見ると頷いてきたので部屋を出ようと立ち上がった。


「そう焦らずとも、本日のために用意した食事があります、是非ともご賞味いただきたいと我が家の料理人が作ったものです。間もなく用意が整いますのでもう少しお待ち願えればと思います」


 このお嬢さんはなんでこんなに引き留めてくるんだ?名前知らんけど。というか、自己紹介も何もやってないじゃんか!俺も大概だったな。どうするかと思って美鈴と霞の方を見てみる、うん、なんかお嬢さんに見惚れてやがった。確かに可愛いと思うけどさ!どうすんだよこれから!


「お嬢様がこう言ってるんだし、少しくらいなら?」


 美鈴!お前手の平返すの速くない? ちらりと霞を見ると目が合った。


「まぁ私もそれでもいいかな?」


 お前もか…

 伯爵と執事のやり取りもいつの間にか終わっているし、まぁいいか。


 一度立ち上がったのをまた座るというのは中々に恥ずかしいが、しょうがないから座るとしよう。何事も無かったかのように紙コップを手に取りカフェオレを一口。ふぅ落ち着いたぜ



SIDE:ハワード伯爵令嬢キャサリン


 なんとか思いとどまってもらえたようですね、見た感じこの男性が指揮を取っている感じなのでしょうが、女性側の意見を割と簡単に受け入れたのには驚きました。


 しかし…美しい艶のある黒髪、明らかに違う国の者だと思われる風貌、先日助けていただいた時にも思いましたが、華奢に見えるのにゴブリンを吹き飛ばすほどの戦闘力、なんて素敵なんでしょう。

 もう一方の女性も我が国ではあまりいないとされる短い髪の毛、あの眼鏡も我が国では見かけない物ですよね。 ああ、詳しく聞いてみたいですわ、夕食が終わった後に私の部屋に招待したら来て下さるかしら、もちろん男性の方はいりませんが。


 髪の短い方の女性は治癒魔法が使えるとも言っていましたね、ぜひ2人共私の専属侍女になって頂きたいですわ。美しくて強い方と可愛らしくて治癒魔法持ち、そんな方達を連れて王都にでも行ったら…素晴らしいですわ!

 男性の方は収納系の魔法を持っているとの事ですし、お父様がきっと雇い入れするでしょうし、このまま帰らせてしまう訳にはいきませんね。少し席を外して作戦を練りましょう、失礼をした侍女達にお仕置きもしておきませんと、また同じような事をされては困ります


「お父様、グロウ、お客様にはもう少しお待ちいただいて、急ぎ夕食の支度を整えるよう伝えましょう」

「まぁ待て、まだこの者達の名を聞いておらんし、お前も名乗ってないだろう」

「そうでした、これは失礼いたしました」


 あのお姉さま方の名を聞けるのですね?楽しみです。




SIDE:来栖大樹


「私はキャサリン・フォン・ハワードと申しますわ。よろしくお願いします」


 やっと会話が普通になったな、まぁ名乗られたからにはこちらも返さんとまずいよな。名乗りを聞く限り名前が先で姓が後なのね。


「俺はタイキ・クルスといいます」


 名前だけ名乗り、隣にいる霞にバトンタッチの意味を込めてチラ見する


「私はカスミ・キリモトです、よろしくお願いしますわ」

「ミスズ・スズキ、よろしく」


 名乗りつつ頭を下げて礼を取ると、伯爵家の親子がなんだか目で会話してるな、何を企んでるやら。


「では夕食の支度を急がせてくる、しばしここで待たれよ」


 そう言うと3人は部屋から出て行った。


「どう思う?なんだかあのお嬢さん、2人の事を熱心に見てたような気がするけど」

「ええ、かなり見られていたわね。悪い感じはしなかったけど…」

「多分あれだよ、霞に惚れちゃってるんだよ。なんかこう、お姉様!って感じの雰囲気出てたじゃない?」

「いや、そこまではわからんけど」

「それはつまり、目を付けられたという事なのかしら」

「あーなるほど、そういえば街道で助けた時、霞が戦ってるところ見られてたもんな。あり得るかもしれんな」

「そんなこと急に言われても困るわ」

「私の方はチラっとしか見てこなかったけど、霞の方はガン見だったもんね。あらあらまぁまぁ、私、GLも嗜むから理解あるよ!」


 ジーエル?グランドレベルの事か?美鈴は偶に良くわからん単語を使うからな。何かの略なんだろうけど、まぁ聞くのも野暮な気がするな


「それじゃあ、とりあえず食事は頂くという方向でいいな?それと美鈴の予想が正しければ、あのお嬢さんは霞に何かしらのアプローチをしてくるかもしれないって事だが…」

「それは大丈夫だと思うわ、私自身ガールズラブには興味ないからそのままお屋敷を出てもいいわ」


 ガールズラブでGLか!まぁ世の中にはそういうジャンルも確かにあるよな… ん?美鈴はそれも嗜んでいるのか?恐ろしい子だな

 だけど、せっかくだから勇者の情報を流しつつ、この国の召喚事情についても聞いてみるとするか。答えてくれはしないだろうけど、反応を見つつ判断するか。


 そんなこんなで、更に30分ほど待たされたのだった。 

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― 新着の感想 ―
【気になる】 誤字報告では伝わりにくいと思い書き込みです。前話で倉庫に紙コップを放り投げて証拠隠滅してるので、今話で何事もなく紙コップのカフェオレを飲んでるのに違和感を感じました。 仮①②を書き込みで…
[気になる点] ・何事も無かったかのようにティーカップを手に取りお茶を一口。 貴族家からは何も出ず、自分たちで用意した物は収納したはずですが、どこからカップが?
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