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カレーを食べながら、マイホームへの扉の大きさを変えられないか試してみよう。変えられるのならわざわざ馬車から出なくて済むしな。うん、サイズは変えられるようだ。ちょっとかがまないといけないけど許容範囲だな。それに、先ほど頭に入ってきた知識にトイレのみに繋がる扉とシャワー室に繋がる扉を個別に出せるみたいなので、明日からは休憩時間で馬車が止まるのを待つ必要が無くなるってのがいいね。そして扉を見えるようにする方法もわかった。
早速トイレの扉を出してみる
「この扉が見えるか?」
「おっ 見えるよ」
「そうか、この扉の向こうはトイレになってる。好きに使っていいぞ」
「そ、そう? それじゃちょっと使わせてもらうわ」
あっ 霞が反応を示した、きっと我慢してたんだな。さて、馬車内に扉を出せる事がわかったからわざわざ外に出る必要はなくなったな。いまだに普通に動いている俺の腕時計は、午後6時半を指している。6時頃には暗くなっていたから夜明けは4時過ぎくらいか… 夜明けには出発するって言ってたからその前には馬車に戻ってこないといけないな。今ここでマイホームベースに引きこもって隠れてしまえば逃げられるかもしれないが、まだこのスキルわからないことが多すぎるから、これは最後の手段に考えておこう。
1人で考えにふけっていると、2人とも食事が終わってたようで片付けをしていた
「おじさん ごちそうさま! もう1回マイホームに連れていってほしいんだけど良い?」
「ん? 何かあったか?」
「いや、あの様子なら間違いなくお風呂があるでしょ! 入りたいんだけど」
「あー風呂ね、確かにこの狭い馬車の中で汗臭いのは嫌だよな」
「でしょでしょ? お願いします!」
かといって、俺の切り札であるマイホームベースにほいほいと信頼関係のない人間を入れるのは抵抗があるな。あ、シャワー室への扉があったっけ! それを出してやろう。
「この扉の向こうはシャワー室になっている 使っていいけど…俺の魔力で賄っているみたいだから節水で頼むな」
「えー?シャワー室? 湯舟がいいなぁ」
「我儘言うなよ、 まだ魔力がどのくらいあるかとか、マイホームを使う事でどのくらい消費するとかわかんないんだからな」
「んーわかった。 使えるようになったらお願いする」
「把握出来たらな」
美鈴が舐めたことを言ってきたので とりあえず断わっておく
「私も使っていい?」
霞が手を上げて言ってきたので了承する。これで『お前はダメだ!』なんてやるのはさすがに大人気無い、向こうの馬車の連中にならバッサリ断わってやれるけどな。
なんて考えていたら2人揃って中に入っていった。まだこの時間だと見回りが来るかもしれないから俺はマイホームベースに入らないで待ってた方がいいな。
SIDE:鈴木美鈴
シャワー室の扉を開けて中に入り備品を確認する。入り口から見て右側に高級リゾートのプールにあるような簡易壁で仕切られた個別シャワーが並んでいる、左側には銭湯の脱衣所のようなスペースに籠が並び、その奥には洗濯機も並んでいた… これはうれしい。
しかし食料を取られた時には焦ったけど、あの馬鹿ヤンキーについて行かなくて本当に良かった。マイホームと聞いた時点では家か何かを出せる能力なんだと思っていたけど、想像よりずっと優秀なスキルみたいだ。自分が聖女のスキルを使いこなせるようになれば、病気や怪我の心配はかなり減るので、安心して寝る場所と食事にシャワー、言う事無しだわ。あのおじさんは私も霧本さんの事もまるで信用してない感じなのがまずい。なんとか仲間扱いになってもらえるようにしなきゃいけないね… 一緒にいればご飯とお風呂は安泰だし、この異世界でも日本同様の暮らしが出来るかもしれない。なんとか信用を勝ち取らないと!
SIDE:霧本霞
一緒にシャワー室に入った鈴木さんはキョロキョロと周囲を見渡し、すぐに服を脱ぎだして洗濯機と思われる機械に服を放り込んだ。なるほど、洗濯できるのはいいわね。真似をして隣の洗濯機に自分の服を入れてスタートボタンを押し、シャワーを浴びる。
しかし失敗したわ、これ程使えるスキルだったなんて。マイホームと聞いて… 確かに意味不明で使えないと思い、かなり印象の悪い態度を取ってしまった。多分日本人の普通はこの世界では通用しないと思うのよね、だから衛生面や食事の面が一番困りそうな問題だったけど、このスキルがあればそれらを解消できる。戦闘面でどうかわからないけど、このスキルがあるだけで一緒に行動する価値は十分ある。なんとか最初の悪印象をどうにか解消して味方につけないといけないわね… 国境までの時間でなんとかしないといけない、媚びを売っても通用し無さそうなのが難点よね… なんとか考えて生き延びるために共存の方向へ進めよう。とりあえず武闘家の能力を使いこなせれば、戦闘要員として見てもらえるかもしれないわ。
先にシャワー室から出てきたのは美鈴だった
「いやーシャワーだけでも使えるっていいね、洗濯も出来るし鏡台もあるしドライヤーも。 結婚してください!」
「何を言ってんのこの子は… 子供に興味はありません」
「そりゃーおじさんから見たら子供かもしれないけど、今の現状では日本に帰れない可能性の方が大きいじゃない? そうなったら持ってる常識が限りなく近い人の方が重要だと思うのよね。たとえ格好良い異世界人と出会ったとしても、常識が合わなかったり汚かったり臭かったらとてもじゃないけど一緒に居られないよ」
「そういうもん? 愛さえあれば~とかよく言うじゃん」
「愛だけじゃお腹は減る~ともよく言うじゃない?」
「まぁうん そうかもね」
そんなことを話していると、扉が開き 霞が出てきた
「シャワーありがとう。とても助かったわ」
「どういたしまして。それじゃあ俺も入ってくるかな、一応周囲を窺っていたら 見回りをしてる気配があったから、外には出ない方がいいかもな。俺はそのままマイホームについて調べるから朝まで戻ってこないけど、夜明け前には戻るから」
「え? 私も連れてって欲しい。 こんな汚い馬車じゃきっと寝れないし虫とかも嫌だし…お願い!」
美鈴が超反応で返事をする…けど、うーん どうしたもんか。
「私もお願いするわ。 あなたに頼ってばかりで心苦しいけれど、私に出来る事があれば 出来る限り尽くすつもりでいるわ」
おいおい、手のひらがくるっと大回転してるよ。まぁ俺が同じ立場だったら同じ事やると思うけどな…
まぁしょうがない、ここは大人の余裕を見せておくか、一応釘だけ刺しておこう
「ぶっちゃけるけど、正直言って俺の切り札を見せるのは抵抗がある。だから約束しろ、マイホームの中では俺の言う事は絶対だ、必ず守ると」
「私はそれでいいよ、私を抱きたいっていうなら脱ぐし?」
「子供に興味は無いって言っただろ。どうなってんの?聖女の脳みそは」
「私も構わないわ、私で役に立つことがあるなら言ってくれれば…」
なんか簡単に同意が取れてしまった。まぁ下手な詮索さえされなければいいしな、それに… うっかり抱いてしまえば情が移ってしまうかもしれないし気を付けよう。