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実践訓練で心身ともに疲労感があるので、今日の自主練は止めにしよう。美鈴も今日は早々に休むそうだが、霞は何やら物足りなかったらしく、1人でトレーニングルームへ入っていった。いやいや元気だなホント
異世界生活37日目
今朝もゆっくり目で行動を開始し、8時にはマイホームを出て町に向かう。午後には衛兵の詰め所に行く予定があるから急ぐ必要は全くない、しかし悲しい習慣なのか、早め行動はなかなか止められないよね。
「今日のお昼ご飯はどうする?昨日と違う店を開拓してみる?」
「私個人の意見を言わせてもらえば、今日は何かそんな気分じゃないわね」
「俺も、今日は蕎麦とか食いたいな」
「ん、それじゃあ本日はそうしましょう。昼から報奨金もらいに行くんだから、ギルドで買取と報告済ませたら1回外に出ちゃう感じかな?」
「それがいいわね、時間かかって遅くなったら嫌だものね」
どうやら今日の方針は決まったらしい、2人共若いのに決断が速いし、なにより頭がいいから安心して話ができるのがいいね。あの2人と違って
そう考えると動き出すには早い気もしたが、すでに外に出てしまっているためギルドへと向かった。
「と、言う訳で森の浅い所でもゴブリンやブラッドウルフの数が非常に多かったわ」
「報告ありがとうございます、他の冒険者からも同様の報告を受けているのです。それで近々討伐隊が編成されるかもしれません、主力は領主軍なんですけど、恐らくギルドにも支援要請が来ると思います」
「まぁそうなるわよね」
「できれば皆さんにも受けて欲しいのですけど」
「そうは言っても私達は全員Fランクよ?登録したのが最近だって理由ではあるけれど」
「1日でこれだけ狩れるのならば即戦力だと思いますよ。依頼が出されたらぜひお願いしますね」
当然だが他の冒険者からも報告は受けていたそうだ、確かに休む間もない程連戦するほど集まって来てたからな。普通にその場で血抜きや解体なんかしてたらあっという間に囲まれてしまうから大変そうではあるな。
「って事だけどどうする?」
「どうするったって、俺達は報奨金もらったら出るつもりなんだけどな…霞は参加したそうだな、討伐隊」
「ええ、でも他の冒険者や領主軍の騎士とやらの実力の程を確認したいと思ってるだけよ」
「確かにそれは気になるよな、アニスト王国の連中が追って来てた時のために、この世界の軍がどれほどのものか知っておくのもいいかもしれないな。まぁそれでも、討伐が始まるのが遅ければ待ってられないけどな」
「その方向でいいんじゃないかしら、1日や2日なら待つと言っても大した事は無いし、その間路銀を稼げるわけだしね」
「んじゃ一度外に出て、お昼の準備でもするか。食事の用意に時間をかけるなんて久々かもしれないな」
町から一度出て、防壁に沿って死角に入るとそのままマイホームの扉を出して中に入る。
「せっかく時間もある事だし、天ぷらそばにでもするか」
「いいね!私は野菜のかき揚げとエビで!」
「私もそれでいいわ」
とは言っても、天ぷらだってそんなに時間のかかるものではない。所詮素人が作る物だ、プロの料理人が見たら鼻で笑われてしまうかもしれない作り方だけどな。
食糧庫から乾燥タイプの麺と、小麦粉に片栗粉、冷蔵庫からエビと卵を用意してネタを作っておく。野菜は人参玉ねぎゴボウと定番で。作業開始だ
独身男でも簡単に作れる天ぷらそばが完成した。俺もそこそこ食べる方だが、女性陣も若いせいか良く食べる。多めに用意してた方が良いな
「はぁ~、おそばとか久しぶりだな。日本にいた頃でもいつ食べたか覚えてないくらいだよ」
「俺はカップ麺のそばは結構食べてたな」
思いの外好評だった。まぁ手軽で手抜きな料理に関しては年季が違うからな、女子高生とは経験値が違うのだよ。
食後は少しのんびりして、1時半になったので詰め所に向かう事にした。20人の盗賊団を、ほぼ無傷で制圧してあるから、犯罪奴隷とかにするんでも価値は高いだろう。もしかして初の金貨が手に入るかもしれないな。
「おお、待っていたぞ。すぐに金を用意するからちょっと待っていてくれ」
盗賊団を引き渡した時に指示を出してた人がいたので、スムーズに話が進んで行った。なんでも王都の方から商人などを襲いながら移動していて、警戒はしていたがなかなか捕まえる事が出来なかった賊だったそうだ。
なんと報酬は金貨5枚になった。意外に金になるもんだな、まぁ狙って狩るには厳しいだろうからやらないけど。
「そういえばアンタら、魔物に襲われてた領主様の馬車を助けてやったんだって?今回の盗賊の報奨金とは別に褒美を出すと言っているんだ。それで明日、夕食に招待したいそうだ」
「そうなのか、みんなどうする?」
「貴族の食事に興味あるよ!」
「私も興味あるわね」
「という事だ、了承するのはいいけどどうすればいいんだ?」
「受けてくれるか、それなら明日の夕刻に領主邸に直接向かってもらってもいいか?本来ならば来客は俺達が送迎するんだが、近頃の魔物の増加で手が足りてないんだよ。ああこれ、招待状な」
「わかったよ、別に出向くくらい大したことじゃないしな。せっかくだし貴族のご飯を堪能させてもらうよ」
「おう、頼むな!」
詰め所を出て、そのまま町からも出てしまって森に向かう。
「そういえばさっきもらった金貨5枚だけど、どうする?今分けるか?」
「私は貯金箱に入れてもらえればいいかな、それよりも服を制作してもらいたいんだけどいいかな?一応貴族の家に行くわけだし」
「そうね、それは重要だわ。なんだったら衣装代という事でその金貨で払ってもいい?」
「そうだね、5枚だから1枚ずつが個人用として残り2枚は共用分。2枚は貯蓄してもらって3枚をおじさんの取り分でいいよ」
「いや、金貨もらってもな…まぁ一応俺が持っておくか、何か入用になった時に使う事にしよう。服は1着作っても構わないが自重はしろよ?」
「「はーい」」
そんな理由で今日の狩りは中止となり、女性陣は2人揃ってモニターとにらめっこを始めた。一体どんな服を選ぶのやら…
俺はどうするかな、着飾った女性2人いるのに俺だけ普通の服だったら逆に目立ってしまうよな。まあ明日の夕方まで時間もある事だし、美鈴と霞が選んだ服を見てからでも遅くはないだろう、うんそうしよう。