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狩りは順調だった、というかエンカウント率は非常に高かったのだ。3~5匹の群れたブラッドウルフを見つけて狩っていると、戦闘音や唸り声に誘われたのかゴブリンまで数匹集まってくる。

 俺が後方で銃撃しながら探知機で確認しているので不意打ちにはなっていないし、美鈴も銃で参加しているしで殲滅力も非常に高いから危険度は少ないが、放っておいたらいつまでも戦闘が続いてしまうような状況だった。


「森の中ではゴブリンの死体はどうするんだろうな」

「まとめて放置でいいんじゃない?ブラッドウルフが処理してくれるよ」

「そういうもんか、じゃあ魔石だけ取ったら集めて放置って事で。ブラッドウルフだけ牢屋に入れとくか、そうすれば腐らないだろうしな」

「でも、わらわら集まってくるから血抜きもままならないよね」

「最悪牢屋で保管して後で血抜きすればいいだろ、わざわざ危険な事をする事は無い」

「じゃあとりあえず集めて牢屋だね?」

「そうしよう」


 気が付くと周囲は薄暗くなってきていて、夕暮れに近づいているようだ。暗がりで魔物の相手なんか冗談じゃないので、血の匂いが充満している現場から離れてマイホームへの扉を出し、中に入った。


「マイホームの中で血抜きとかできる部屋とかないのかな?」

「あーどうだろうな、俺自身も気づいてない事も多々あるとは思うけど」

「まぁでも、内部が血の匂いで溢れても嫌だから明日外でやろっか」

「それが無難だな。俺もちゃんと自分のスキルを把握しないとダメだなこりゃ、時間のある時にやっておくか」

「うんうん、それがいいよ」


 日課の訓練をやって、割と長く感じた1日が終わった。



 異世界生活36日目


 扉を開けると森の中なので、無理して早くから行動しなくても…という事で、今朝はゆっくりしている。この時間を利用して、昨日話していたマイホームの部屋について調べてみる事にした。


 トイレにシャワー室への扉、これは単独で直行する扉を出すことができる。ガレージと牢屋も同様だ、ロビーを経由しないといけないのが客室への扉×10、トレーニングルームと浴室、厨房。ロビーに設置してあるのが衣服や道具などを作る装置と、体のサイズを測ったカプセルのような物。


 こんなもんか、初期状態から増えた気がしないな、気づいたのは牢屋くらいか。

 うーむ、目に見えて成長していく霞に、訓練のたびに新しい魔法を覚えていく美鈴、そんな2人を見ていると俺自身は成長しているのか不安になって来るな。後方支援の専門家であり、移動旅館だっていうなら設備的な成長があってもいいと思うんだけどな、まぁ現状でも満足できるレベルではあるのが救いだけど…


 まぁ無い物は仕方がない、ある物をいかに有効活用できるか…だよな。


「おはよー、おじさんいつも朝早いよねー」

「おはよう、俺は寝るのも早いからその分早く起きるんだよ」

「顔洗ってくるー」


 寝惚けた顔をしていた美鈴がシャワー室に消えていく、俺の年代だと朝起きてすぐにシャワーとかしないけど、若い女の子はそういった面でも大変そうだな。まぁ習慣になってるんだろうけどな


 ほどなくして霞も起きて来てシャワー室に入っていく、それじゃあ朝食の準備でもするか。といっても今朝はパンだけどね、楽だし早いし味付けは個人で好きなようにできるし、俺は断然バター派だな!


 朝食を終えたら扉を開けて森に戻る、昨日結構な量を狩っているのでそのまま町に戻って売り払う算段だ。宿に泊まる予定が無いため、街中で扉を出して誰かに見られるくらいなら、昼から狩りに出てそのままマイホームで泊まり、朝に戻って買取してもらうって事で話はついていた。すでに門衛に生きたまま入れられる収納を見せているため、隠せる手の内は隠しておこうという事になったのだ。


 まぁ俺の能力は、軍事利用しようと思えばかなり有用な自覚があるので、そこは隠した方が良いと思う。



SIDE:ハワード伯爵家


「おお、無事に帰ってきてくれてよかった。昨日の内に帰ってくると思って待っていたんだが、魔物に襲われたと聞いた時には背筋が凍るような思いだったぞ」


 伯爵家の玄関ロビーで当主である男性が疲れ切った表情をしているが、怪我も無く帰ってきた娘に対し安堵の表情を見せた


「10匹以上のゴブリンに追われまして、逃げている途中で馬車が壊れてしまい覚悟を決めたのですが、通りすがりの者に助けていただきました」

「ほほぅ、それでそのお前達を助けたという者はどこにいる?礼をしなければいかんからな」

「それが…ゴブリンを倒して燃やした後に去っていってしまったのです」

「なんだと?おいっグロウ、どういう事だ?お前が付いていながら」


 グロウと呼ばれた老執事が一歩前に出て頭を下げる


「3人組の者達だったのですが、1人は単独で15匹のゴブリンを屠り、1人はゴブリンに殴られて怪我をしていた馬を癒し、1人は見た事も無い乗り物を操っておりました。素性も分からないため、安全のためにそのまま行かせました」

「ふむ、それでその者達は去っていったというのか」

「はい、去っていった方角から考えると、このギースの町に立ち寄っている可能性があります」

「そうか、何か企むような輩であれば、その場で何かしてきただろうからとりあえず敵ではないだろう、見かけたらせめて礼くらいしないとな」


「旦那様、もしかしたら昨日警備隊からの報告にあった盗賊団を捕縛してきた者が、男1人、女2人の3人組だったとの事です。なので同一の可能性があります」


 ロビーで控えていた鎧を着た騎士の1人が言葉を出した


「ほほぅ、それについても礼を出さねばと思っていた所だ」

「報奨金を昨日の時点で3日後に、という話を付けていますので、恐らく明後日には詰め所に受け取りに来るものかと」

「そうか、それならばその時に我が伯爵家に招待すると伝えるよう令を出してくれ」

「承知しました」

「15匹のゴブリンを単独で屠る者に癒しの者、それに先ほどの盗賊の件と同一人物ならば、生きたまま収納する事の出来るスキル持ちが組んでいるという事になるな。これは抱え込むべきだろうか」


 思案している伯爵をよそに、娘とお付きの侍女は浴室へと向かって行ったのだった


「グロウはどう見る?」


 騎士から盗賊についての報告を聞いていたグロウが向き直る


「ゴブリンとの戦闘も本気を出していたようには見えませんでしたし、20人もの盗賊をほぼ無傷で制圧したというのならば…その戦力は私では測りきれないと思います」

「ふむ、欲しいな」

「私としては反対です。あまりにも得体が知れませんので」

「まぁそれは明後日に分かるだろう、連絡は任せる」


 グロウはため息を飲み込み頭を下げるのだった

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