最終回
長い間お付き合いくださりありがとうございました┏oペコッ
少し長くなりましたがこれにて終了となります。
あれから… 悪魔を討伐したあの日から15年が経っていた。
俺達3人はあれからも特に変わりなく、ダンジョンを探しては潜って探索していくという生活を送っていたが、大陸の南方にあるクレスタ公国のダンジョンで再びトレントと遭遇を果たした。
一応最下層まで探索してみたが、最下層が50階層までありトレントは40~50階層の間で現れるというダンジョンだった。
そして現地の冒険者による最高到達地点は25階層という事で、まだまだトレントが発見されることは無いだろうという結論に達し、この町に定住する事になったのが10年前… そう、俺達は… というか、俺はもう55歳って事になるんだよな。美鈴と霞も同じ歳だという事で、現在は32歳のはずなんだが… まぁ相も変わらず見た目だけは10代のままなのだ。
「今日はギルドで情報収集してきたけど、さすがに若作りが過ぎて色々とヤバイかもね。受付でも「いつまでもお若いままで… 一体どんな秘訣が?」なんて迫られちゃったよ」
「まぁそうね、いまだにお肌はピチピチだもの、羨ましがられるのは仕方のない事だわ。それで、何か変わった情報はあったのかしら?」
「いやー何も無かったね。最高到達点の更新はされていないし、チラッとダンジョンに入ってみたけど大体の冒険者は15階から20階層で狩りをしているみたいだね」
「ああ、あの階層はオークが出るからな。肉はいつだって売れ筋だから稼げるんだろうよ」
「大樹さんはどうだったの? 収集の方は」
「んーと、今日はゴールドアプルが1個だけ出たな。後はチェリーばかりだ」
「ふんふん、アプルが出たなら今日は当たりだね。ストックも良い感じで貯まっているし… 後50年はこのままの姿でいられるね!」
「私はね… ちょっと20代半ばの姿というのに憧れがあったりするのよね。ちょっと7~8年は食べないでいこうかと思っているわ」
そうなのだ、やはりドロップ率を考えると5年若返るゴールドアプルとバナナスカーレットは全然出ないのだ。その代わりに1年若返るチェリーはコンスタントにドロップしていて、毎年年末になるとチェリーを食べて過ぎ去った1年を無かった事にするという生活を続けているのだ。
最初にこのダンジョンを見つけた時だけすごく頑張って数を集め、17歳まで若返ってからは常にこのルーティンで生活をしている。
しかし、もう15年も一緒にいるなんてな… 随分と付き合いも長くなってしまったよな。さすがにそれだけの時間を生活していると、もうホントいつの間にか関わり合いも深くなってしまっている。
相変わらず2人共、今後もずっと俺と一緒にいるんだと言い切っていて、ついつい情に絆されたというか… まぁ2人共なんだかんだと良い女だからな、俺もいつの間にやらすっかりやられてしまっていたという事だな。
クレスタ公国にあるダンジョン都市マリーンズでは、今まで使う事の無かったこの世界の金貨をはたいて土地と家を購入。ちょっと広めの土地に新築で家を建てて拠点にしているのだが、当然家の周囲には美鈴謹製の結界魔道具が設置されており、俺達以外の者は土地にすら出入りする事が出来ない仕様になっている。
まぁ家というのは正直言ってただのハッタリで、結局はマイホームで暮らしているんだけどね。
「そういえばね、勇者… マサキ・カンダがグリムズ王国で将軍になったらしいよ! アニスト王国を併合させた功績とからしいね」
「そうなのね、心底どうでもいい情報だわ。5~6年前に聞いた、妻が10人いるって話だけで十分よ」
そう、去年とうとうアニスト王国が滅んだのだ。まぁ大掛かりな戦争があったわけではなかったんだが、異世界からの儀式召喚を行った危険な国という事で、ガスト帝国の平定が終わった段階でアニスト王国に圧力をかけていたらしい。
当時の女王だった… 例の生かして帰した第3王女も数年は抵抗したという事だが、とうとう挫けたらしい。まぁ滅んだと言っても先ほど言ったが併合されたから、元女王が領主となり替わって統治を続けているんだがね。
「それはそうと、賢者の事は全然噂にもならないわね… どうしたのかしら」
「さぁね、興味ないから知ろうともしなかったけど、案外勇者と仲違いでもして殺されてたりしてね。知らんけど」
「さすがにそれは無いと… 言い切れないのが困るわね。それに将軍? まぁ良いんじゃないかしら、隻腕なんでしょう? 普通の仕事なんて出来ないでしょうし、冒険者をやると言っても1人ではちょっとね」
「まぁね、勇者だけあって戦闘はそこそこできるらしいから相方にも苦労するんじゃない? 寄生しか集まらないとか」
「実際見てないから何とも言えないけれど、なんとなく負けそうには感じないわね」
「そりゃー私達だってずっと現役だよ? ハーレム作って満足するような勇者と同列にされたら悲しくて泣けてきちゃうよ」
まぁひどい言われようだが仕方がない、実際そのように噂されている人物なのだから。
グリムズ王国側としては、異世界から召喚された人間という事で重宝したんだろうけど、ちょっと少年の心というか、夢を見過ぎているという印象が拭えないイメージの男だ。
何かにつけて「俺は勇者だ」と触れ回り、かなりの敵を作ったって言われているな、まぁ会ってないから何とも言えないが、多分こちらから会うなんて事は一生無いだろう。
それにしても賢者か… 聞いた話ではグリムズ王国側に雇われて、ガスト帝国との戦争に参加していたって事だけど… その戦争でやられてしまったという事なのかな? 賢者というイメージとしては、魔法系の上位職だと思っているんだが、やはり混戦で… 更には接近戦となれば力を上手く発揮できなかったという事なんだろうか。まぁ見ていたわけじゃないから真相は闇の中というやつなんだがな。
翌朝、今日も飽きもせずに40階層へと向かってトレントの乱獲を行う。美鈴も言っていたが、すでに50年分のストックはあるんだよ、それも3人分でな。
しかしすでに生活のルーティンに組み込まれているというか、ついつい暇になるとダンジョンに入っちゃうんだよな。まぁ家まで建ててしまっているし、そう軽々と住処を変えるという事も出来ないため仕方のない事とも言えるが… ある意味自業自得な状況なんだよな。
「さて、今日もいっぱい狩りをするよ! 運動するとご飯が美味しいからね!」
「そうね、さすがにトレントが相手なら戦闘とは言えないし訓練とも思えないわ。運動というのが適切よね」
自宅を出てから真っ直ぐ門へと向かう、ギルドには寄る用事はないからな。依頼を受けるわけでもないし、ただ定期的に生存報告というか、魔石を換金しに行く程度だ。そうしないと冒険者証が失効してしまうからな。
門から出ると、踏み固められた道を進んでダンジョンへと向かって行く。ダンジョンと町は少し離れていて30分ほど歩かなくちゃいけないのだ、この辺は安全対策なんだろうけどマインズダンジョンのように併設してほしかったな。
「あれ? おじさん? それに美鈴と霞? なんで?」
「え?」
急に声をかけられたと思うとそんな言葉が聞こえてくる… という事は?
「あらレイコじゃない、思ったよりも若く見えるわね」
「そうじゃないでしょ! なんで? 15年振りなのに当時と見た目が変わっていないってどういう事なの?」
「あら、それは企業秘密よ」
やはりレイコだったか、15年振りだな。という事はもう30代なんだろうけど… うーん、20代半ばから後半に見えるな。若作りという訳でもないだろうに、大したもんだな。
それに一緒にいるのはカオリじゃないな? 黒髪の男性だが… まさか?
「ねぇレイコ、カオリはどうしたのよ。それにそっちの人… まさか日本人?」
「カオリはね… かなり前に結婚するって言って別れたよ。今どうしているかは分からない。それでこの人はね、なんと賢者なんだよ!」
「へ、へぇ」
「5~6年前くらいかな、マインズで知り合ったんだよね。ああジュンジ、この3人は聖女の美鈴と武闘家の霞、そしておじさんよ」
「どうも、ジュンジ・イガラシだ。それにしてもおじさん? どう見ても俺より若いんだけど」
「そう! 本当にどうなってんの? 何でおじさんまで… どう見ても10代じゃない!」
レイコがギャーギャー騒いでいるが、これは面倒なので対応は美鈴と霞にお任せしようか。
賢者であるジュンジが俺の事を胡散臭げに見ているが、まぁ教えてやる必要も無いだろう。しかし… この2人が来たという事は、すぐにでも40階層へと到達してしまうんだろうな。そうなると俺達の秘密がバレるという事になるな?
「大樹さん、もうこのダンジョン潰してしまおうよ。そしてまた違うダンジョンを探しに行かない?」
「そうは言ったって家はどうするんだよ、ダンジョンを潰した後では価値なんて無くなるぞ?」
「別に良いんじゃないかしら、どうせあの家もただの張りぼてだった訳だし」
「それよりもこの2人を取り込んで機密にさせた方が良くないか? こんな話は広まると貴族がダンジョン封鎖してくるぞ? 多分だけど」
「うーん、でもそれをするとレイコだとこっちにすり寄ってくるんじゃない? カレー食べたいって」
「そうね大いにあり得る話だわ」
「とりあえずダンジョン進みながら考えようよ、レイコの相手は疲れるよ」
「ちょっと! 何をコソコソしているの? さっさと白状しなさいよね、その若さの理由を!」
喚いているレイコに対し、スルスルっと霞が接近していき鳩尾に手を当てる…
「はぅっ!」
「はい、じゃあレイコはお任せするわね。私達はこれで失礼するわ」
なんと! 触っただけに見えたが地味に打撃を加えていたようでレイコが膝をついているではないか… 委員長もすっかり脳筋になってしまったな。
しかしまぁ面倒だったのには違いない、賢者にレイコを押し付けて俺達は小走りでダンジョンに向かって行く。
すでに55歳になってしまったが、何事も無ければ最低でも後50年は今の姿のまま生きていく事になるだろう。うん、軽く100歳超えられるな。
だけどまぁ、きっとこの先もこの3人で暮らしていくんだろうな。そしていつかは子供とかも出来たりするんだろう… しかし、もし子供が出来たとしたら、俺達の若さをどう説明するつもりなんだ? 兄弟姉妹のような家族が出来てしまうのかもしれないが、それも良いんじゃないかと思ってしまう自分がいる。
それじゃあ今日もダンジョンに入りますかね、いつも通りに。
誤字報告いつもありがとうございます。




