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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:ハワード伯爵
「皆良く聞け! まずは厳しい戦闘を耐え抜き、ご苦労である。ガスト帝国は我らからの停戦を受け入れた… つまり、我々の勝利である!」
「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
「これから細かい調整が残っているが、少なくとも皇帝の一族は今回この場で処刑するものとする。これについては帝国の軍務卿も納得している事であり、現在皇帝一族を捜索し捕縛してくるという事だ。
一応我々の勝利で終わったが、まだまだ油断はするなよ、交代で見張りに立ち、今の内にしっかりと休養を取ってくれ。以上解散!」
ふぅ、思ったよりも早めに決着がついて何よりだったな。まぁ誰が立てた作戦か知らんが、どうにも素人感丸出しのばかげた策であった。敵ながらこれで死んでいった兵士達が哀れに思えてくるな… まぁ我が国も他所の事は言えないんだが、こちらの癌であった軍務卿はすでにいないから、これから改変していけば良いだろう。
そして、陛下より賜った指示書によると…
勝利した場合は即座に皇帝を確保して処刑。生かしておくと帝国兵の士気が戻るかもしれないからだな。そして皇族も同様に確保し、人質として連れ帰れる者を選択して来いと… これは難しいな、どう選別して良いものか悩む事になるだろう。
そして最後に、帝国の自治は認めるがグリムズ王国の支配下に置くという事だ。当然今後は帝国を名乗る事はできなくなるし、グリムズ王国の一領地として扱われる事になるから領主を決めなくてはならない。
「うーむ、これは帝国内で決めさせた方が早いのだろうが、それをやると碌な人事にならないだろう。反乱の目を残すわけにはいかないし、これについても頭を悩ませる事になるだろうな」
とりあえず一部ではあるが我が軍がすでに帝都の中に入っている、まずは皇城を掌握する事が必須となっている。そちらが落ち着くまで総司令官である俺が迂闊に入る訳にはいかないだろう…
だがしかし! これで今回の遠征の目的の半分は終わらせた。残りの半分は政治的干渉なので面倒なのは確かだが、ひとまず落ち着く事が出来るだろう。
特にこれだけ遠くまでの遠征だ、兵士達の士気だっていつまでもつか分からない状況だ。それに連れて来ていた冒険者達もそうだ、普段は行軍なんてしないであろう彼らにとって、心理的負担も大きかったはずだ。まぁ戦勝に浸ってはっちゃけてしまわないよう目を配る必要はあるが、あの者達にもしばしの休息を… だな。
SIDE:来栖大樹
「ふぅ、今回は危なかったな、間に合わないかと思ったぞ」
「そうだね、まぁ放り出されたとしても大きな怪我はしないんだろうけど、結構大胆に投げ出されてたから喰らいたくはなかったよね」
そう、俺達は無事にダンジョンからの脱出に成功していた。
さすがに今回は、ダンジョン内に俺達以外の冒険者が入っていなかったため、誰も放り出されずに静かにダンジョンは消えていった。
「さて、ダンジョンをクリアできた事だし、今日の所はこれにて終了とするか?」
「賛成! なんだか今日は気持ちが疲れたよ」
「そうね、まさか悪魔を名乗る者と対峙するなんて思いもしなかったし、あの傲慢な態度を思い出すだけでイライラしてしまうわ。今日はもう休みましょう」
色々とバタバタしていたが、現在時刻は午後4時… まぁ言うほど早上がりという訳ではなかったな。
とりあえずダンジョンがあった場所は大きな岩陰にあったため、この場所でマイホームに入っても何も問題は無いだろう。今日は熱い風呂にでも入って晩酌でもしますかね。
夕食前に風呂を済ませ、美鈴と霞が支度をしている最中からすでにビールを飲みだしている。いやぁこういうのって久しぶりだよな、少なくともこの世界に来てからは初めてかもしれん… 晩飯前に飲むなんて。
美鈴と霞もすでに汗を流し終えていて、それでも夕食後にはトレーニングをするそうだ。いやいや、元気だね。俺も肉体的には若返っているはずなのに、どうもそこまで鍛えなきゃって感じにはならないんだよね。まぁ若返る以前より遥かに体が軽くなっているのは認めるけど、やはり気持ちはあまり若返らないようだ。
「さー準備できたよ、ご飯にしよう!」
「おー、待ってたぜ」
しかし、女性陣が食事を作るようになってから飯の時間が待ち遠しくなっているよな… まぁ自分で作ると… うん、分かっている。カレーにチャーハン、ラーメンでローテーションされちゃうからな。まぁ同じものを何度食べても飽きる事はあまり無いが、それでもバリエーションが多いと楽しくなるよな。
食べる事は生きる事、その大切な食事を楽しんで味わいながら頂けるというのは本当に贅沢な事なんだ。日本にいると飽食すぎてその価値観がすっかり低くなりがちだけど、やはり美味しいというのは正義であると声を大にして言いたいな。
この世界の食事事情はあまり芳しくないから、カオリやレイコもマイホームで食べれる食事に執着したんだろうしな。まぁ大量に持たせたのはレトルトだが、それでもこの世界の食事よりも美味しいからな、まぁ今頃はあいつらも飯でも食べているんだろう。
「さーて、じゃあこの後はどうするの?」
「どうするも何も無いわ、あの悪魔が帝国を操っていたらしいから起きている戦争でしょう? 少なくとも戦地に近づく事だけはあり得ないわね」
「そうだな、戦況がどうなっているかは知らないから近い内にギルドで確認しないといけないけど、グリムズ王国が負けてしまうなんて事があれば、グリムズ王国の王都も近づけなくなるな」
「まぁ別に食料とかの補給なんて必要無いんだし、特に王都に行く用事なんて出来ないから大丈夫じゃない? それよりも、またいろんなダンジョンに行ってみてアプルとかバナナとかのドロップがある所を探さないとね」
「そうね、今度はダンジョンを潰さないで、いつまでも収穫できるようにしたいわね。なんならそのダンジョンに住み着いても良いくらいだわ」
「そうは言うけどな、ダンジョンマスターなんて言う存在がまた出てくるかもしれないぞ?」
「そうかもしれないけど、あの悪魔が作ったって言うさっきのダンジョンの方が特殊だったんだと思う。あの悪魔だって大昔にアニスト王国が召喚したという悪魔本人かもしれないでしょ? 多分もうダンジョンマスターなんて出てこないんじゃないかなー」
「それはそうと… 今日は私もビールを頂いてもいいかしら? 悪魔を討伐した記念日という事だし」
「そうだね! 日本ではともかくこの世界ではすでに成人しているはずだもんね!」
良いとも悪いとも答える前に、美鈴は席を立ってグラス2個とビールを持って戻って来る。
「じゃあ、今日もお疲れさまでした… 乾杯!」
なんだかノリに任せた乾杯の音頭につられ、ついつい俺もグラスを掲げてしまう。うん、まぁ良いんじゃないかな? お祝いだというなら酒は外せないもんな。




