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誤字報告いつもありがとうございます。
俺の目の前に転がってきたダンジョンコア… 障壁で閉じ込められている事だし素手で持ち上げてみようか。実際美鈴の張った障壁には触った事があるので、手で触れたからといって痺れたりとかは無い事は確認済みだからな。
「あ、大樹さん牢屋に入ったらそのまま持ち上げていて。霞が殴りやすそうな場所に穴をあけるから」
「じゃあその穴を目がけて殴ればいいのね? 承知したわ」
「破壊が目的だからな? 吹き飛ばすんじゃないぞ?」
「分かっているわ、吹き飛ばしたりなんかしたら破片も一緒に飛び散ってしまうから、掃除が大変になるわ」
「ダンジョンコアの破片って言うだけで、塵一つ外に出したくないよね。私も頑張って破壊した瞬間に開けた穴を閉じてみるよ」
「そうか、それじゃあうまい事頼むぞ? 俺はこうして持っていればいいのか?」
「そうだね、高さは霞の都合の良い高さに指定してあげて」
「そう? それじゃあ大樹さんの胸の高さくらいでお願いするわ」
言われた通りに胸の高さでダンジョンコアを抱え、そのまま目一杯手を伸ばして霞の放ってくるであろうパンチから距離を取る。まぁそれでも1メートルも無いけどな… うん、コアを破壊できる威力のパンチか、正直ちょっと怖いかもな。
「美鈴、いつでもいいわよ!」
「分かった! それじゃあ穴を開けるね、3、2、1、ほいっと!」
美鈴の気の抜けそうな掛け声とともに穴が開けられ、霞が踏み込んで右腕を突き出した。先ほどの蹴りからはかけ離れたくらい普通に手を出した感じだが…
パキィィン!
あっさりと爆砕してしまったダンジョンコア… 普通っぽく見えたけど全然そんな事は無かったんだな、あれが人間の頭とかに当たったらどうなってしまうんだ? いやいや、怖いから考えるのは止めようか。霞だって目の前で爆散されたら嫌だろうし、きっとこの後も使う機会は限定される事だろう。
「ふぅ終わったね、ちょっとさっきの部屋に戻ってあの悪魔がどうなったか見てこない?」
「おいおい、ダンジョンコアと同様に爆砕されてたらどうするんだよ。まぁ確認はしなくちゃダメだとは思うが… 俺がちょっと見てこようか」
「いえ、ここは全員で行きましょう。どうせ確認が終わったらこのダンジョンから脱出しないといけないのだし、動くなら急がないといけないわ」
「そうだな。じゃあさっきの部屋までダッシュで向かい、悪魔爺さんを確認したら速攻で戻ってきて転移陣を使うぞ。そして放り出される前にダンジョンから脱出だ」
「「了解!」」
障壁に閉じ込められたまま、粉微塵に砕かれたダンジョンコアはそのまま牢屋の床に置いて外に出る。
すでに地鳴りのような振動が足元から伝わってきているので、このダンジョンも崩壊への手順が始まっているのだろう… 急がないとだな。
かなりの速度で来た道を戻って駆け抜けていく、悪魔爺さんがどうなっているのかを確認した後すぐにこのダンジョンから脱出しないといけないからな。
距離的には3~400メートル程なのですぐに黒いドラゴンのいた部屋に到着し、美鈴の張った結界の中を確認してみたが…
「うわっ、なんだか干からびちゃってるね。これってもう死んでいるのかな?」
「多分そうなんだろうな。まぁ本人が言ってたからな、ダンジョンコアが本体だって。あれだけ粉微塵に砕かれてしまってはどうしようもないんだろうよ」
「確認は済んだわね? 一応障壁はこのままにしておくのかしら?」
「いや、消滅したダンジョンがどこに消えていくのか分からないから止めておこうか。万が一違う世界に行ってしまい、そこでこの干からびたモノが復活してしまうかもしれないしな。わざわざこれ以上障壁で守ってやる事も無いだろう」
「じゃあ障壁は解除するね? よし、それじゃあさっさと脱出しちゃおうよ」
「わかった、じゃあさっきの転移陣まで急ごう!」
またダンジョンコアのあった部屋に向かって走り出す、あの何度か目撃した強制的にダンジョンから排出される謎現象… あんなの体験したくはないからな。
地揺れが激しくなってきている気がする、もうそろそろこのダンジョンも限界なんだろう。以前ダンジョンコアを取り上げた時は、即座に外に出ていたからな… 今回のはかなりギリギリなのだろう。ヤバイな。
しかし近いのが幸いし、なんとか強制排除される前に転移陣のある部屋に到着した。
「急ごう急ごう! なんかもうヤバそうだよ!」
「これほどギリギリになるなんて初めてよね、時間的な猶予が分かっただけ良しとしましょう」
「そうだな、じゃあ地上に戻ろう」
SIDE:ガスト帝国、宰相
「陛下! 陛下はどちらにおられますか? これだけ探してもいないだと? 一体どこに消えたというのだ、この大事な… それこそ我がガスト帝国の存亡にかかわる事態だというのに」
グリムズ王国側から提示されてきた停戦、はっきり言ってこれは渡りに船という程有難い提示であった。すでに3分の1以上の兵が殺され、これ以上失うと帝都はともかく国内の維持すら困難になってしまうだろう。
しかし、すでに宰相職を辞める事が決まっている俺が判断して良い問題ではない。これは陛下が始めた戦争なのだから、陛下がしっかりと皇帝として判断し、決断してもらわなければいけない事なのだ。一応保険として軍務卿には話を通してある、もしも陛下が停戦を受け入れたとしたら… 間違いなく今回の戦争責任は陛下のものとなるだろう。グリムズ王国側も皇帝一族を処刑する事になるだろうな… もしもそうなった場合、次代の主権者が誰になるかという大きな問題が立ち上がる。
「まぁ軍務卿の性格から言って、間違いなく主導権を取ろうと行動するであろうな。もしかしたらすでに停戦を受け入れる前提で陛下を取り押さえようと動いているかもしれん…」
そうなった場合、間違いなく軍務卿は強権を発動させて自分に都合の良い人事にするだろう。
まぁそれでも構わないがな、俺はもう十分帝国に尽くし働いた、もうリタイアしても問題は無いだろう。息子も娘も成人して独立しているし、跡継ぎの育成も終わらせている。後は妻でも連れて領地に引き籠って暮らしても誰も文句は言わないだろう… まぁ言わせないがな。
しかしこの国はもうダメだな、陛下の姿が一向に見つからないという事は、あれだけ不自然な作戦を立てておきながら逃げたという事なのだろう。
よし決めたぞ! もう軍務卿に全てを丸投げして家に帰ろう!




