298
誤字報告いつもありがとうございます。
「じゃあじゃあもしかして、私達って世界を救っちゃったって事?」
「まぁまだ世界がちょっと荒れた程度しか被害は出ていないのだから、そこまで言うのはどうかしらね」
「それはともかくだ、少なくとも王国と帝国の戦争で1万人以上の戦死者が出ているんだ、俺達も直接被害を被ったわけだし… やはりダンジョンコアは持ち帰らないで破壊しようか」
「そうだね、砕いてから厳重に封印だね! 箱に入れてから大樹さんのマイホームにある牢屋に入れておけば完璧じゃない?」
「ええ? 俺が保管するのか?」
「だって… こういうのって後世に必ず悪い奴が補修して復活とかさせちゃうってパターンじゃない?」
「確かにそうね、あり得る事だわ。それを踏まえたら大樹さんの牢屋は時間が止まっているから、封印場所としては最適だと思うわ」
「マジかよ…」
バチーン!!
俺達が話し合っていると、悪魔爺さんが突如として暴れ始めた!
「貴様ら… 黙って聞いていれば調子に乗りおって、今すぐ殺してやるからこの結界を解け!」
今までになかった、それこそ悪魔らしいと言うべき威圧感を放ちながら美鈴の障壁を殴り続ける悪魔爺さん。しかし美鈴の張った障壁は全く無傷でその存在を示している。透明な障壁の壁に、悪魔爺さんの血が付いているのだ。
魔法障壁も言うなれば聖属性という事なのだろう、障壁を殴るたびにその手がどんどん怪我していくのだ。しかし逆上しているのか、怪我など目もくれないで障壁を殴り続ける悪魔爺さんの姿は鬼気迫るものであった。あまり長く見ていたいものではないな。
「よし美鈴、魔法障壁の強化を頼む。それからダンジョンコアを破壊してこよう」
「わかったよ。コアはどう壊すの?」
「とりあえず破壊そのものは霞に頼むとして… 問題はコアの破片をどうやって集めるかだな」
「それなら… 最初から牢屋に持ち込んでから壊したらいいんじゃないかしら。牢屋の床なら箒と塵取りで綺麗に回収できると思うわ」
「よし、そうするか。破片を入れる箱は今夜にでも作るとして、今は速やかに行動しておこうか」
「待て!待つのだ! 取り引きだ、取り引きをしようではないか。この我がお前達の軍門に下ってやろう、そして我らの力を以てすればすぐにでもこの世界は手に入るだろう。
お前達人間は好きなんだろう? 支配する立場になり、この世界の富を全て手に入れたいのだろう? 弱者を弄び、気に入らなければ殺す… そのような事など我が力を使えばお前達の願いなどすぐに叶うであろう。どうだ? 悪い話ではあるまい」
「本当に気持ち悪いわね、人間誰もがそうとは限らないのよ?」
「うんうん。私も支配階級になるよりも、自由に暮らす方が好きなんだよね。だからその案は却下で」
「俺も同意見だな。まぁ元より爺さんと分かり合えるとは最初から思ってなんかいないぞ、だからこれが永遠の別れという事になるな」
「待て! ならばどうすれば良いのだ? 我が力をお前達の好きなように使えばいいだろう、人間は自由に暮らす事さえ力が必要になるのではないのか? 力の無い者は、有る者の食い物にされる… それがお前達の暮らす人間社会の掟ではないのか?」
「これ以上の話し合いは不毛だな。美鈴、やっちゃってくれ」
「了解!」
今まで張っていた障壁の外側に、さらに強固な障壁を展開する美鈴。今まで張っていたものと違って透明ではなく、濃い魔力が揺らいでいて障壁の形が可視化されている… どうやら美鈴はかなり本気で仕事をしてくれたようだな。
「よし、悪魔の甘言に耳を貸すなよ。それじゃあ行くぞ!」
「「了解!」」
いまだに喚いている悪魔爺さんを無視し、先ほど見つけたダンジョンコアに向かって急ぎ足で進む。
「そう言えば、さっき「我が本体」なんて口にしていたな… もしかしたら最後の抵抗があるかもしれないな、油断無く事を済まそう」
「じゃあ私がダンジョンコアを障壁で閉じ込めてみる? そうすれば何かしらの抵抗があっても防げると思うけど」
「そうね、その障壁ごと私が蹴り飛ばして牢屋に入れてみせるわ。その後の破壊については美鈴と息を合わせれば、散らかさないで砕けると思うのだけど… どうかしら?」
「なるほど、つまり砕く時に障壁の一部を開放して霞のパンチが通るようにすればいいって訳だね? 砕けた破片は障壁の中に収まるから散らかす事も無いと」
「うん、いいなそれ。それを採用しようか」
ダンジョンコアのある部屋に到着すると、美鈴が先頭になり前面に障壁を展開しながらコアに接近していく。水晶を思わせるダンジョンコアは薄く輝いているが、危機感を募らせているのか明滅しているように見えるな… ダンジョンコアなのにビビっているという事か? やはり良く分からんシステムだな、ダンジョンという物は。
俺は美鈴から少し距離を取り、牢屋へと続く扉をダンジョンコアに向かって取り出し、その扉を開いて霞が蹴り入れるのを待つ。
美鈴と霞は小声で何か打ち合わせをしているようで、タイミングでも見計らっている感じだな… 扉はすでに開いてある、こっちはいつでも大丈夫だぞ?
2人が何やら頷き合うと、霞が間髪入れずに行動を開始した。素早い動きでダンジョンコアから距離を置き、開いた分を助走して走り出し、ダンジョンコアが置かれている台座に向かって強烈な蹴りを繰り出した。スキルを併用しているのか、その蹴り足の先端は何やら光っていて、自分に向かってきている訳じゃないのにゾクリと鳥肌が立つ。それほどの圧迫感を感じる蹴りだった。
ゴキンッ!
蹴りの標的は台座だったようで、蹴りが当たった途端に台座は粉々に砕け散ってダンジョンコアは宙に投げ出されるように浮かんでいた。そのダンジョンコアを空中でキャッチするかのように美鈴が障壁で囲い込み、ある意味障壁で守られながら地面へと落下したのだった。
「よしっ! 上手くいったね!」
「ダンジョンコアを置いている台座だから、非常に硬いものだと思っていたけれど大した事は無かったわね。じゃあ牢屋に転がして入れましょうか」
「おう、準備は万端だ」
ただ扉を開いて待っていただけの俺が、ちょっと偉そうに返事をしてやる。まぁそれくらい良いじゃないか。
霞が障壁で囲われたダンジョンコアを、まるでサッカーをしているかのように蹴りながらこちらへ向かってくる。うん、それが正解だな。シュートのように蹴ってこられたらどうしようかと思っていたところだ… そんな事をされたら牢屋が破壊されてしまうぜ。




