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ドバーン!
激しい音と共に、壁だと思っていた部分が破壊されて火の玉が飛び出してきた。
「ぅおーびっくりした、危ねぇな」
「大樹さん大丈夫? 奥に何かいるわ、注意して!」
「大樹さんこっち! ひとまず合流して!」
走り寄ってきていた2人に言われて素直に移動をする、何が出てくるのか知らんが3人纏まっていた方が安全だからな。
「クックック… 避けよったか、大したものだ」
「そうかい? まぁ驚いたのは確かだけどな」
思わず返事をしてしまったが、通路の先から声だけが聞こえて来ていて何者であるかは確認できない。一体なんなんだ? 不意打ちだなんてやってくれるじゃないか。
なんて思っていたら、霞がススっと気配を消して壁の淵まで高速で移動を始めている… 不意打ちには不意打ちでお返しするって事か? まぁ霞の反応速度であれば大丈夫だと思うが… 仕方がない、ここは囮として一役買ってやるかね。
「おいアンタ… いきなり攻撃してくるなんて随分なご挨拶じゃないか、それは俺達への宣戦布告と取っても良いって事か?」
「宣戦布告だと? それはこちらが言うべき言葉だ。よくも我がダンジョンを荒らしてくれたな、返礼でも受け取ってもらおうか」
「返礼? いやいや、そんなもんお断りさせてもらうぜ」
闇の中から相手の姿が見えてきた、どんなやつかと思えば… あれ? 我がダンジョンなんて言うから魔物だと思っていたのに、どう見ても人間だよな?
「うわ、どんなのが出てくるかと思えば… ただのお爺ちゃんじゃん。何者かは知らないけど私達に喧嘩を売ったら怪我じゃ済まないよ? 直ちに降伏する事をお勧めするけど」
「降伏だと? 笑わせるな、知恵の足りない黒竜に勝ったくらいでいい気になるではない! どうせ黒竜と戦って精も根も尽き果てているのだろう? お前達こそ降伏するべきではないのか? まぁ許さんがな」
美鈴の煽りにもきちんと反応してくるあたり、間違いなくヘイトは俺達に向いているようだな。美鈴もアドリブなのに良くやるもんだ、霞の存在には気づいていないようだが… 一体どうなる事やら。
何者か分からない爺さんがそろそろ通路から出て、ボス部屋の広間に到達する。霞、一応だけど手加減を忘れるなよ? お年寄りは大切にな?
まぁ実際年寄りに見えるのは見た目だけかもしれないが、それでも精神的にダメージがありそうだからな。
「フハハハハ! 活きの良いお前達は魔物化して我がダンジョンで使ってやるわ! せいぜいこのダンジョンの守りとしてきりきりと働くが良い。なぁに黒竜の代わりをするだけだ、ゴブリンでもできる簡単な仕事だぞ」
「うわっ気持ち悪い、もう勝った気でいる。それに黒い竜? あんなの余裕で勝ったし、全然疲れてないし!」
美鈴が煽られてキレたかのような演技… うん、さすがにこれはダメだな。多芸な奴だと思っていたが、演技に関しては大根だったか…
爺さんが杖をこちらに向けながら歩いてくる、杖の先は赤くなっていて蜃気楼のように歪んで見えている… また火の玉攻撃でもするのか? 残念だがあの程度であれば見てからでも回避できるし、美鈴の障壁だって破ることはできないだろう。
「フハハハ! さぁ燃えてしまえ! そしてこのダンジョンの魔物となってしまえ! ファイヤーランs…」
バキッ!
「な? 何が起きたのだ? ゲフッ!」
いい気になって杖を突き出しながら歩いているから霞に杖を蹴飛ばされるんだ、意外と残念な爺さんだな?
その後は… 霞のボディ打ちを食らって悶絶するように蹲ってしまった… 何ともあっけない。
「いやぁ調子に乗ってたわりにはチョロかったね」
「そうね、良く分からないけど自分が強いとでも思ってたのかしらね。まぁ私に気づけなかった時点でどうかと思うけれど」
「まぁ年寄り相手にそうイジメるなって、とりあえず後で話を聞きたいから美鈴の障壁で閉じ込めておくか」
「りょうか~い。じゃあ意識が戻るまでこの通路の奥でも調べておく?」
「そうだな、起きるまで時間もかかるだろうし、奥の方を調べておくか」
「このお爺さんが持っていた杖はどうするのかしら? なかなか上等な物に見えるけれど」
「杖かぁ… とりあえず鑑定でもしてみるね」
美鈴が小走りで蹴り飛ばされた杖の方に向かって行く、まだ障壁は張られていないので霞と一緒に爺さんの監視でもしているか。
しかしこの爺さん… 人間だよな?
「どう思う? 我がダンジョンなんて言ってたけど」
「そうね、ぶっちゃけて言わせてもらうと何も分からないわね。ゲームや小説に出てくるようなダンジョンマスター的な存在なのかもしれないし、そうなると人間かどうかは何とも言えないわね」
「ふむふむ。元は人間だったけどはっちゃけてしまったとか?」
「それもあるかもしれないし、あえてその姿に偽装しているかもしれないし… こればかりは目が覚めたら本人に聞いてみるしかないと思うわ」
「それもそうだな。でもまぁお疲れさん、爺さんを殴るなんて気分の良い物じゃなかっただろ?」
「そうでもないわ、大樹さんとのやり取りは聞いていたし、傲慢にも程があるって印象しか感じていなかったわね」
「まぁそれはな…」
美鈴の足音が近づいてきた、杖の回収を終えて戻ってきているのだろう。爺さんは失神しているが、とりあえず目を離さないようにして美鈴の到着を待ってみる。
「鑑定してみたよ、『ファイヤーロッド』ってわりかし普通の名前がついてたね… 一応希少品なのかな?」
「どうかしらね… まぁミスリル素材があるから剣とかはともかく、杖に関してはこれまでもドロップは無かったし希少品なのかもしれないわね」
「とりあえず美鈴、この爺さんに障壁を張って逃げられなくしてくれ。ちなみに張った障壁は美鈴がこの場を離れても継続されるものなのか?」
「はい障壁っと、込めた魔力分は離れても消えないと思うよ。今はったやつだと… まぁ2時間は大丈夫かな? なんとなくだけど」
「2時間か…」
まぁ階段ではなく通路があるという事は、これまでの経験上このフロアが最下層であり奥に行けばコアがあると。それなら2時間もあれば余裕かな?
「よし、じゃあその2時間、この爺さんを放置して奥の方を探索しに行くか。仮に途中で目が覚めたとしても破られないよな?」
「うん、このお爺ちゃんがドラゴン以上の火力でも出さない限り大丈夫だと思うよ」
「ま、さっきの火の玉を見た限り大丈夫だろうな」
「ええ、あんな魔法で得意になってたから平気だと思うわ」
「よし、じゃあ行こうか!」
「「了解!」」
こうして爺さんを障壁で囲い、放置したまま奥に向かう事にした。戻ってきたら爺さんには色々と喋ってもらわないといけないからな… 質問とかも考えておいた方が良さそうだな、良い感じでひねくれてそうだし。




