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誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:賢者君
今回の侵攻部隊はハワード伯爵がまとめる事ですっかり落ち着きを取り戻したグリムズ王国軍。
あまり好戦的ではないハワード伯爵だったが、ここまで来て何の成果も無く帰還する事は出来ないという判断で帝都へと向かっている。
帝都の前に陣取り、戦うのではなくこちらに有利な条件を付けて講和に持ち込む腹積もりのようだ。まぁ無駄な損害を出すよりも遥かに建設的な決断ができる貴族のようだな…
聞いた話では、この軍を仕切っていた軍務卿という立場の貴族は… なんと『突撃!』しか言わないタイプの将で、被害と利益の計算が出来ない奴だったという。
そんな話を聞けば、暗殺した奴って案外帝国じゃなくて身内だったりしてな。
「ふはは、いよいよ明日には帝都に着くのか… ようやく俺の技を見せる時が来たみたいだな」
完全にやる気になっている勇者、本当にこいつはどうしようもないな。魔物を殺すのとは違うんだぞ? 相手は普通の人間だというのに戦う事を喜んでいる。勇者と名乗る事がこれほど不釣り合いな奴もいないだろうが、物語では結構こういう奴はいたんだよな… まぁ本人もそういった類の小説や漫画などを読んでいる可能性はあるが、傍から見ればそれがどれほど滑稽なのかが分かっていない。
「お前本当に大丈夫なのか? これはゲームでも芝居でもない、本当の戦争なんだぞ?」
「もちろん分かっているさ、でもこういったシチュエーションでもない限り人間を殺すなんて事はないだろうからな。まぁ良く言うだろ? 1人を殺せば犯罪者、1000人殺せば大英雄ってな! ここは勇者としての俺の名声のために散ってもらうのが一番さ!」
ふむ、まさかここまで病んでいたとはな。
正直こいつとの付き合いはここまでかもしれないな… 戦争の英雄になりたければ好きにすればいいさ、俺には付き合いきれんってだけだから俺は俺で勝手にやるさ。
それにこいつ、聖女と勇者はペアになる運命だとかほざいてやがるから、もう既に俺とは分かり合える事は無い。
俺は俺で命の危険が無いよう立ち回らないといけないな、これ以上こいつに付き合っていたら最前線まで連れていかれそうだし隙を見てはぐれるとするか。
ま、この依頼が終わってグリムズ王国に戻るまでは一緒にいようと思っていたが… まぁ仕方がないな。
そして歩く事数時間、そろそろ夕方かという時間帯になってとうとう視界の奥に帝都らしき大きな街の防壁が見えてきた。ハワード伯爵の指示で行軍が止まり、今日はこの場所で野営となるようだ。
目測だと帝都に到着するには後3~4時間はかかるかという距離だ、何をするにも明日の朝からという事だろう。すでに敵国のまっただ中だ。見張りは交代制だが、個人的にもある程度注意を払っておいた方が良さそうだな… 魔力は温存しておきたいが、少しばかり魔法を使うとするか。
翌朝、眠い目をこすりながら出立の準備を整える。昨晩は夜襲を警戒していたが、どういう訳か何事も起こりはしなかった。この国の皇帝はアホなのか?
勇者はすでに目をギラつかせて尋常ではない雰囲気を出している… お前、味方からも引かれているのに気づけよ?
「では、これより前進する! 両サイド、後方からの奇襲に警戒しつつ進め!」
いよいよ始まるか、他所様の戦争に首を突っ込むのはどうかと思うが、まぁ仕方ない。嫌だけど俺にだってこの戦争で得られる名声は、聖女を探すために必要だからな。それがあれば今後グリムズ王国の貴族や軍に絡まれる事があっても、それらに対処する切り札になるだろう。
よし、この戦争が終われば俺は…
SIDE:ガスト帝国、皇帝
「フハハハハ! 虫けら共が近寄ってきておるわ。さぁ早く来るのだ、そして殺し合え!」
すでに帝都の周辺には人間の魂を回収するための魔法陣を展開済み、後は予定通り近づいてきた敵兵に帝国兵をぶつけるだけだ。そして殺し合えば勝手に人間の魂が我が手に入るのだ、これほど楽な事はあるまい。
「む? 何者かは知らんが我がダンジョンの最深部に辿り着いた者がいるな… 先日の侵入者なのだろうが、それにしては早すぎる。どうするか…」
隠してあった5階層以降への道、それを突破した者がいるのは感じていた… が、まさかこれ程早くに10階層へと辿り着くとはどれほどの手練れなのか。
配置してあったリザードマンを排除して進んだのか、それとも逃げ回りながら偶然下層へと辿り着いてしまったのかは不明だが、いくら広くないとはいえこれ程早くに辿り着くには実力も必要だろう。
「防衛するために一度戻るか… しかし今からでは移動もままならんな。帝都からダンジョンまでは結構離れているからな」
ここでの戦闘で得られるはずの魂を放棄する訳にもいかぬ、魔法陣が起動していても、吸い取った魂は直接受け取らんといけないからな。
「まぁ良いだろう、ダンジョンの守護者は黒竜だ。あれを討伐できる人間など存在しないだろう、それこそ過去に現れた勇者とかでない限りな。向こうの様子を窺いながらこちらで魂の回収をするしかないな、まぁいざとなれば回収した魂を使って転移すればいいだけだ。それも惜しいとは思うがな」
こちらはもう少し接近してきたら帝国兵が突撃する、すぐに大量の魂が手に入るだろう。そうすれば自身の力も復活し、今度こそこの世界を我が物と出来るだろう。
それに黒竜が侵入者を屠れば、その分の魂や魔力も手に入る。それがあれば黒竜の強化も出来るからな、黒竜をダンジョンから解き放ち、共にこの女神が作った大地を瘴気の渦まく魔界へと変えてやろうぞ。
皇城の最上階から近づいてくるグリムズ王国軍を眺める、そしてそれに相対する帝国軍の姿も。
「さぁ!始めるがよい!」
予定されていた区域に侵入を確認、今ここで戦端が開かれた。
SIDE:来栖大樹
「ちょっとどうしよう、かなり頑丈そうだよ?」
「どうするって言ったって… どうするんだ?」
「紛れもなく小説なんかに出てくるタイプのドラゴンよね、多分空も飛ぶだろうし火も吐くのではないかと思うわ。ちょっと色々と試したい気持ちもあるけれど、ここは予定通りに遠距離から火力の高い攻撃をするのが一番だわ」
「そうだな… 対物ライフルをつるべ撃ちにするか、1人は攪乱用にスモーク弾でも撃っておくか?」
「それだとこちらからも見えなくなるわ。最悪美鈴の障壁に頼る事になると思うけれど、対物ライフルを撃ち込む方が…」
「よし、それじゃあ装備変更、戦闘準備だ!」




