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誤字報告いつもありがとうございます。
「うん、特に何も無いね。確かにこれじゃあ何も無いからって調査が終わるのも分かるね」
「じゃあ後残っているのはあの小部屋なんだが… あそこはどうだ?」
「あの部屋は魔力がこもってると言うか、ちょっと他の場所とは感じが違うんだよね。何かあるとしたらあそこだね」
「それにしても、床を見てみるとまるで過去に迷路があったかのような跡があるんだが… これは何だろうな」
「それは私も気になっていたわ、床と同じ場所の天井にも跡があるし… 以前は迷路のようになっていたけれど、改築でもしたのかしらね」
「そんな事があるのか?」
「ゲームやラノベでは、入るたびに階層が変化するっていう設定は見た事あるけど、多分そんな感じじゃない? まぁ実際どうかまでは分からないけど」
「そういうもんか…」
ふむふむ、やはり魔力を感知できる美鈴でもあの場所は他とは違うって分かるんだな。俺に至ってはこれほどいい加減なフロアなのになんであそこだけ部屋なのか? 何かあるんじゃないか? そんな感じで見たまんまでの感想だったんだが…
「もう他に見る場所が無いなら小部屋に行きましょう、いくらなんでもこれで終わりとは思えないわ」
「そうだね、じゃあ集中するから護衛の方よろしくね」
「任せてちょうだい」
先頭の霞が小部屋に入り、周囲を見渡す。やはり他の場所と同じように魔物はいないようだが、どこかに隠れているかもしれない… いや、それはないか。
霞の手招きを見て美鈴が入り、最後に俺が入っていく。そして美鈴が調べ始めたと思った瞬間…
「あれ? 隠し扉発見! その奥は… 階段があるよ!」
「おいおい、あっという間だったな。俺の緊張感を返してくれよ」
「まぁまぁ大樹さん、もっとリラックスしなきゃ疲れるよ」
「それもそうか。油断しないのと必要以上に緊張するのは別だもんな」
「そうそう、さぁ3階層に行ってみよう!」
そんな感じで気がつくと5階層まで来ていた。しかしこのフロアは今までと雰囲気がちょっと違うな。
「あれ? 開けられた宝箱があるよ? こういうのって開けられたら消えちゃうんじゃないの?」
「さぁな、さすがにそこまでは知らないが… でも開けられているって事は過去に誰かこの階層まで辿り着いているって事だよな」
「そうね、さすがに未踏破の場所で空箱があるとはとても思えないわ」
「つまり… 2階層にあった隠し階段以降を隠蔽した奴がいたって事だな。まぁ独占でもしたかったんだろうが」
「ん? 良く見たら宝箱の底に穴が開いてる… なんか通路のように見えるけど?」
「お? という事は更に奥があるって事だよな。まぁダンジョンコアが見つかっていないからこれで終わりとは思っていなかったが」
「ちょっと霞、この箱を蹴り飛ばしてみて?」
「分かったわ、ちょっと離れていてね」
俺達が離れると、少し大きめだった宝箱に向かって右足を振り抜く霞。空だった宝箱は木っ端微塵に破壊されながら吹き飛んでいった… やりすぎではないのか?
「あ、箱の下に梯子が掛かってるね。これは今まで見た事のないパターンだね」
「しかもあの宝箱、普通に壊れたけどダンジョン産じゃない感じだな。まるで宝箱でこの穴を塞いでたように見えるが」
「そうかもしれないわよ? 過去にここまで辿り着いた冒険者とかが次来る時まで隠しておきたかったと考えればあり得ない事ではないわ」
「ま、そうかもしれないな。しかしこれ、1人ずつ降りていくしかない状況だな… 順番はどうする? 俺が先に降りようか?」
「そうね、大樹さんなら梯子からでも遠距離攻撃が出来るし、その方が良いかもしれないわね」
「そういった理由なら魔法障壁が張れる私が先の方が良いんじゃない? ドラゴンゾンビを障壁で殴っても壊れなかったんだし、防御力って観点で見れば私が一番頑丈だと思うけど」
「それもそうか… じゃあ美鈴が先頭で霞がその後に続いてくれ、俺が殿で行くから。一応上方から何かが落ちてきた場合は問答無用で撃つから音に注意だな」
「音に… 確かにこんな閉塞空間で撃たれたらすごい音になるだろうね」
美鈴が先頭になって降下を開始する、梯子がかかっている通路は人間2人分くらいしか広さが無いので足元に向かって障壁を展開し、そこから周囲を囲うように張っているとの事… まぁこの狭い空間で、壁から何かが出て来たら回避するスペースも無いからな、これが一番の安全策だろう。
しかし、そんな心配も肩透かしになるくらい何事も無く6階層へと降り立つ事が出来た。
「ん、なんかようやくダンジョンらしくなってきたね。普通に迷路状になっているし、魔物の気配もあるよ」
「よし、それじゃあいつものフォーメーションだな。魔物の強さを確認してからローテーションするかどうかを決めよう」
「「了解!」」
いつものフォーメーション… 別にそんな大層なものではなく、前衛に霞が立ち、真ん中に俺が立って最後衛に美鈴という立ち位置の事だ。
何と言っても6階層に来るまで1体も魔物が出て来ていなかったから、どれほどのレベルのダンジョンなのかさっぱりと分かっていない。過ぎる心配もどうかと思うけど、やはり怪我も無く進んで行く方が望ましい。
霞が魔物の策敵をしながらトラップがないかを見て進む、これは非常に大変な作業だが霞の身体能力がそれを可能にしている。驚くべき反射神経と瞬発力で、不意打ちのように現れた魔物に対しても崩される事も無く撃破していった実績があるからな… 間違いなく安心して任せられる前衛だ。
「足音がするわ、二足歩行と思われるから武器なんかの投擲に注意よ」
「おう、美鈴は障壁の準備を」
「大丈夫、任せて!」
前方に見える曲がり角を注視しつつマチェットを構える、霞もすでにいつでも突撃できるようにスタンバイを完了させているようだ。
そして前方曲がり角から槍の矛先が見え、その後に二足歩行のトカゲが現れた。硬そうな黒い鱗に覆われ、いかにも防御力が高そうに見えるが…
「アレはリザードマンかな? もしかしたら竜人かもね」
「それは強いのかしら?」
「弱くはないと思うけど…」
コソっと会話していたつもりだったが、前方に現れたトカゲの耳にも声が聞こえたらしく、こちらを確認してきた。槍だけではなく中型の盾まで持っているな… 突然ファンタジー要素が濃くなったんじゃないか?
「単体だから先行するわね」
「おう、気を付けてくれよ」
霞が駆け出し、トカゲ… リザードマン? と、戦闘が始まった。




