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誤字報告いつもありがとうございます。
「ふぃ~、良い湯だった。後は暗くなるまで休憩時間だし、一眠りしておくか」
結局午後2時になってから、空腹に耐えられなくなった美鈴が声を出してお昼休憩となった。それで本日の移動はここまでとし、夜間訓練に備えて休養しようという事に… まぁ予定通りだな。
しかしなんだ… 若返った効果なのか、あまり眠くないんだよな。確かに俺も若い頃は時間的な無茶を結構やった記憶はあるし3徹とかも経験あるが、それでも平気だった訳じゃない。眠くて辛い… でもまだなんとかイケるな! という程度の物だった訳なんだが、今の状況はあまり疲れているという感覚は無いんだよ。
「これもアレか? 異世界でレベルが上がったとかの副次効果とか? まぁレベルに関しては俺が見れるステータスに書いてないから不明だが…」
まぁでも、間違いなくそういったモノはあるんだろうな。そうでなきゃ説明のつかないことだらけだし、俺のような後方支援のスキル持ちが普通に戦える訳が無いもんな。
実際にこの世界の騎士や冒険者の戦闘を何度か見たが、俺でも普通に回避できるなんて説明がつかないからな。
まぁいい。
とりあえず今晩から早速飛行訓練をしようと思っているから、正直言って楽しみで仕方がない。2機目のアパッチは今晩には間に合わないから3人無理矢理乗っての訓練となるが、そっちの方が気になるくらいだ。
まさかとは思うが、いきなりチェーンガンを撃ったりしないよな? アレってどのくらいの音が出るんだろうな… 周囲に誰かいたら飛び起きて一斉に暗闇の中を走り出してしまったら可哀想だよな、まぁそれはヘリのエンジン音でも同じか。
ともかく、訓練時に頭がしゃっきりするように、少しでも休んでおくべきだろう。よし、とりあえずベッドに寝っ転がっておくか。
「ん… ん? もしかしてすっかり寝てたのか?」
どうやら余裕で寝てしまっていたらしく、時刻を確認すると夕方の6時になっていた。
「時間的にはちょうど良いくらいか。それじゃロビーにでも行って待機するか」
美鈴や霞はどう時間を潰したのかは知らないが、時間的に夕食時なので集まって来るだろうと判断。あの2人もなんだか楽しみにしているみたいだったしな。
ロビーに移動してみると、厨房の方から話し声が聞こえるのですでに夕食の支度をやっているようだった。そういう事なら食事が完成するまで待っていればいいな、一応2人に起きてきている事をアピールしつつコーヒーを淹れようか。
「いやー、こんなにワクワクして落ち着かないなんて何年振りだろ… ヘリに乗るだけでも楽しみなのに、まさかの戦闘ヘリ!」
「チェーンガンという物にも興味があるわね、対戦車ライフルとどっちが強いのかしら」
「連射が出来る分チェーンガンじゃないの? 毎分650発とか言ってなかったっけ?」
「そう言われると、対戦車ライフルを毎分でそれだけの数は撃てないわね… 後は命中精度かしら」
「どっちにしても、日本にいたら絶対に経験できない事だよね。マニュアルを何度も見直して勉強しちゃったよ、テスト前以外でこんなに勉強できるなんてね」
「そういう物よ。私だって興味があるから知りたいと思った訳だし、まぁ文字だけでは足りないから後は実践するのみね」
なんだかすごい盛り上がってるな… おじさんドン引きだよ。まぁ俺も楽しみではあるが、何か彼女らとは興味の持ち方が違う気がするな…
「あ、大樹さん起きてたんだ。夕食ならもう何時でも食べられるからね」
「おう、いつもお疲れさん。じゃあササっと食べて練習といくかね」
「「賛成!」」
異世界生活177日目
その練習は、夕食後から翌日の朝日が輝き出す直前まで続けられた。
いやぁ美鈴と霞は元々若いからともかくとして、休憩を挟んだとはいえ2徹目の俺も元気でいられるのはすごい事だな! これだから若さというやつは恐ろしい。
そして夜間に起きた事、それは一応練習という名目になっているが、まぁほとんど遊んでたようなものだったな…
美鈴と霞は座席を入れ替えながら、目標への照準の付け方、実際にチェーンガンを撃ったりもしていた。森に向かって撃つのはさすがに火がついたら不味いから止めさせて、木の生えていない平原を撃ちまくっていたのだ。
夜間だからか、撃ち出された弾丸は熱を帯びて真っ赤になっており、軌跡が見えるんだよな… 不謹慎だがなんだか綺麗に見えた。着弾点では岩などに当たった弾丸は火花を散らし、女性陣も大満足だったようだ。
そのおかげだろうか、アパッチの操縦は結構できるようになっており、なんなら今日からでも運用できるんじゃないかってくらいまで成長したと思う。
「いやー楽しかったね、ヘルファイヤ対戦車ミサイルも威力がすごかったし、使えるね!」
「そうね、地上に大型の魔物がいるかは知らないけれど、そういった対象に向けて撃ってみるのは良いかもしれないわ。ただ、回避される可能性は高いと思うけれど」
「うんうん、チェーンガンくらいの弾速ならともかく、ヘルファイヤの速度なら回避されるかもしれないよね。まぁ着弾と同時に爆発するから、その爆風で隙を作れるって見方も出来るけどね」
「まぁ対戦車ミサイルというくらいだから、動きの素早いものは対象外なのかもしれないわ」
アパッチを格納庫にしまい、じわじわと朝日が昇っていく様を見つめながらのハイテンションな会話。
この世界に来て夜勤ともいえる行動を取った日は多々あるが、それでもそんな日はちゃんと昼間に休む時間を取っていたわけで… 完全に一晩中通して練習? 訓練? なんて事は初めてだ。多分徹夜のテンションになっているんだろう…
「さて、今日はどうする? このまま昼くらいまで休むか?」
「んー、それでもいいかもね。そろそろ2機目のアパッチが完成するはずでしょう? 完成したらそれを使って移動すれば、半日の遅れなんてすぐに取り戻せるんじゃない?」
「え? まさか2機編隊で移動をしようと考えてるのか?」
「もちろん! まぁ3人しかいないから1機は攻撃できないけどね!」
「どうして攻撃する事が前提にあるんだよ…」
「ええ? それは昨日も言ったでしょう? 空を飛ぶ魔物だっているかもしれないんだよ? 縄張りに入られたって襲ってくる魔物がいるかもしれないしね」
「そうね、それは大いに可能性があるわ。それに空中戦をするというのなら、不慣れな私達では狭いガナー席はハンデとしては大きすぎると思うわ」
「ま、まぁ言いたい事は分かるんだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫! 問題無い!」
美鈴がふんぞり返っているんだが…




