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誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活174日目
今朝はいつもよりも余裕をもって8時半にマイホームを出て、60階層の転移陣を使用して1階層へと戻った。
その足でギルドへと向かい、50階層以降の魔物と60階層のボスについての情報をギルドに提供し、ボス部屋のドロップとしてカオリの持つミスリル合金の短剣を見せてきた。そして攻略情報には俺達【雪月花】とカオリとレイコが共同攻略として最高到達点60階層突破として名を残す事になった。
「うーん、勇者達の向かった先は分かったけど… まさかビリーカーンとはね」
「正直言えばあまり行きたく無い町よね… でもしょうがないのかしら」
「まぁいいだろ、何も情報が無いよりは」
「そうだよ! サムライについてなんか何にも無いんだよ? これはもう予定通り森を越えて南側の国々を回らなきゃダメっぽいし」
ギルドを出て、すぐに町の門も潜り抜けて最後の打ち合わせをする。
「まぁ分かっていると思うが、日本にいた頃と違っていつでも簡単に連絡を取ることは出来ない状況だ。危ない事には首を突っ込まないようにな」
「うん、分かった。とりあえず何か知らせたい事があった場合は、ギルドに伝言を残しておけばいいんだね? それも日本語で」
「それは任せる。この世界の人間に知られたくない情報であれば、日本語の方が間違い無いだろうしな」
「じゃあ行くね、補給物資が無くならない内に終わらせたいから」
「おう、気をつけてな」
カオリとレイコはそう言い残すと、南東の方に向かって走っていったのだった。
「ふぅ、これで落ち着けるね」
「とりあえず今日は西に向かって移動をして、時間に余裕をもって大樹さんに例の果物を食べてもらいましょう。一応身の安全を考えたらマイホーム内の方が良いのかしら?」
「うーん… 身体に多大な影響が出る果物だからねぇ、外の方が良いんじゃないかな。マイホームに影響が出たらそっちの方が不味いでしょ」
「それもそうね。この辺の魔物であれば、どんなのが来ても私だけで対処できるから問題は無いわ」
「……マジで食べるの?」
「そう決めたでしょ? もしかして怖くなった?」
「まぁ怖くないかと言われれば、普通に怖いよな。だって若返るんだぞ? ある意味夢のような事じゃないか」
「とりあえずこの場で話す内容では無いわね、移動しましょ」
とりあえず人目が無くなるまでは歩きで移動だな。
現状勇者の足取りを追うという事になってはいるが、これは美鈴が考えたカオリ達と別行動を取るための口実なので、実際に追うという事はしない。
グリムズ王国もきな臭い空気が出て来てるので、最初に考えた通り帝国にあるダンジョンを潰して回るつもりだ。
しかし若返りか… 20歳分も若返ってしまったらどうなってしまうのだろうか。この世界に来た頃の弛んだ体はすでに引き締まっているし、別に若返らなくてもいい気はするんだけどな。
だけど、いくら引き締まったからといっても40年生きてきた肉体はきっと正直なんだろうな… あと10年15年もすればすぐに衰えてきて、自分の思う通りに動かないという事になるんだろう。
しゃーない、腹をくくるしかないか。怖いけど。
人気が無くなるとガレージから車を出して乗り込む。今日はエス○ードな気分だな。このまま夕方の4時くらいまで走行し、そしてゴールドアプルやらバナナスカーレットを食べる予定だ。
しかし… こういった物を一気に食べて大丈夫なもんなのかね? 確か在庫は… ゴールドアプルが3個にバナナスカーレット7本だったよな。
19歳までって話だったし端数もあるから、バナナを4本、チェリー1個でいいのかな? バナナ4本ならなんとか食べれそうだけど… その辺の話もしておくか。
「ところでな? 今日食べる果物はもう決まっているのか?」
「え? うん、決まってるよ。在庫の数を考えたら、各種3個ずつ残るように揃えているからね。アプル3個はそのまま在庫、チェリー4個あるから1個食べる。バナナ7本あるから4本食べると… 全部3個ずつ残るでしょ?」
「ふむふむ、そういえば集めている時にもそんな話をしていたな… まぁ了解だ、頑張るよ」
何を頑張るのかは置いといて、とりあえず移動しないとな。
そして何事も無く午後4時になり、日はかなり傾いてきている。
「そろそろ街道から逸れて、安全そうな場所をキープしないとね」
「そうね、今日はそのまま泊まる事も考えて人気の無い所がいいわ。大樹さん、左側に大きな岩があるからそこにしましょ」
「お、おう」
とうとうその時が来てしまったな。ぶっちゃけダンジョン探索での対ボス戦よりも緊張してくるよ… とりあえず霞の言う通り左に逸れて、ちょっと遠くに見えている大岩に向かって進みだす。街道から陰になりそうな場所に着くと車から降り、周囲を索敵。
「どうやら魔物の類はいないようね、私達が見張っているから一気に食べてしまってちょうだい」
「19歳相当の大樹さんか~、ドキドキしちゃうね!」
「んー、そんなに良いもんじゃなかったと思うがな… まぁ約束だし、躊躇わずに行くか!」
ええい! もう腹は決めたぞ!
倉庫にしまってあったクーラーボックスを取り出して、バナナを4本とチェリーを1個取り出すと、大岩の横に座り込んで準備は完了。
「じゃあ行くぞ。俺に何かあったら後は頼むぞ」
「そんな、死にに行くんじゃないんだから…」
もうヤケだ! まずは1個しかないチェリーから!
さすがに1年分だと変化は感じられないな… うん、普通に美味しい。次はバナナ、一気に食べるなら流し込むための水が必須だな。収納魔法にしまっておいた水入りのペットボトルをそっと取り出し、皮をむいてがつがつと口の中に放り込む。
……ん? なんか体が熱くなって来たな? これも意外と美味しいが、もちもちしているため水を飲んで流し込む。よし次!
もりもりと食べていき、本当に一気に4本食べてやったぜ!
熱く感じていた体はどんどん熱を増している感じがして、頭のてっぺんから顔の皮膚、首に肩と、もう全身の表面がものすごく熱い… ちょっと熱めのお風呂に頭まで沈み込んでいるようだ。ヤバイな… 頭がボーっとしてきて意識が飛びそうだ。ああでも、美鈴と霞が周囲の警戒をしているから倒れても大丈夫か?
おっさんとしては若い者に情けない姿を見せるのは抵抗があるが、まぁこの2人にならそんな姿を晒してもいいか…
直後、俺は意識を失ったようだ。




