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誤字報告いつもありがとうございます。
製造のセットを終えてマイホームから出ると、時計は9時を表示していた。早朝から動いていたせいかあまり時間が経っていないな… まぁ今から真面目にダンジョン攻略を始めても、60階層に着くには1日半から2日といったところか… ま、ある意味予定通りになりそうだな。
それに、先ほどの怒りを鎮めるためにも必要な時間なのかもしれない。
怒りに身を任せて王の首を落としたにもかかわらず、いまいちスッキリしなかったからな… 最大の災厄である王を斬ってそれなんだから、王女や近衛騎士を相手にした彼女達はもっとスッキリしていないだろう。気を散らすための時間が必要だと思う…
通常であればかなりの高難易度であるマインズダンジョンの50階層から更に潜るんだ、出てくる魔物だって油断はできないし、気分転換にはちょうどいいだろ。
「じゃあ前衛はこれまでと同じで交代でね、独占しないでみんなで順番に手を出そう」
「なんかもうパーティという体裁すら無いよね… このメンバーだと」
「それは仕方がないわ、魔物が弱いんだもの」
「それは言えてる…」
いや、何とも頼もしい限りだ。
異世界生活173日目
じっくりと攻略していたからか、ようやく60階層に辿り着いた。
まぁじっくりというか… 皆がストレスを発散するかのように魔物を追い回したせいなんだけどね。
50階層以降はゴブリンの上位種や亜種、オークの上位種と亜種がメインで出て来ていて、人型の魔物だからか… かなりエキサイトして戦闘をしていたな。
しかし赤い髪の毛のゴブリンなんて初めて見たよ。そういった事に詳しい美鈴が言うには、それがゴブリンの亜種でレッドキャップと言うらしい。
しかし、俺を含めたこのメンバーの身体能力ではまるで相手にはならなかった。魔物が複数出ればこちらも複数人出て、とりあえず1人1殺という形でのローテーション。もちろん俺にも出番は回ってきたのでレッドキャップの実力は把握済みだ。
製造の方も順調に進み、予定していた物資は全て完了している。
カオリとレイコはやはりというか、かなり食に飢えていたようで大喜びだったのが印象的だった。それもまぁ仕方のない事なんだよな… 俺達も何度かこの世界の食事を食べた事はあるが、なんといっても味が薄いんだ。塩ですらケチってるんじゃないかと思うくらいに… 聞けば胡椒は貴重品らしくてとても高価で、塩胡椒砂糖なんかはそうそう手に入らない物らしい。当然今回製造した物の中には上記の3種類も多めに入っていた。
それに… 今更だとは言いつつも、ヤンキー君をどう料理するかなんて話もしてたなぁ… ああ怖い怖い。
話し合いの結果、60階層をクリアすると同時にダンジョンから出て隊を分けるという事になる。俺達はギルドで勇者達の動向を探り後を追うという事になっていて、カオリとレイコは神聖教国の方… 大陸の南の方に向かうという事で決着がついた。
なんせヤンキー君たちの情報が全く聞こえて来ていないから、間違いなく俺達とは違った方向に進んだものと考えるべきだろう。
俺達は隣国であるグリムズ王国とその周辺しか知らないからな、後は行った事のない場所に行くしか情報は手に入らないだろう。
そして何かしらあった場合の連絡については、ギルドの情報網を活用する事になった。もちろん現代日本のようにタイムラグ無しで円滑な連絡はできないだろうが、無いよりはましという事だな。
そして… 今回俺が知らなかった製造項目があったため、俺としても把握しておかないとと思い調べてみた結果… なんと! 乗り物が増えていた!
一つは攻撃ヘリAH-64アパッチだ。これは俺も聞いた事のある軍用ヘリだよな… まぁただ、乗り込める人数が2名なのが残念なところだ。それに… 何の訓練も受けていない俺達に操縦が出来るのかという問題もある。ああいった乗り物で問題が発生し、墜落なんて事になれば… まぁほとんどが即死するだろうからな、それが一番の大問題だ。
まぁ美鈴が言うには、今の俺達であれば墜落しても死なないんじゃないかとの意見もあったがね… これは余裕が出来たら試そうと思う。
そしてもう一つは、秋月型一等乙型駆逐艦、1番艦秋月だ。
これは… 無理だね。3人で運用できる物じゃないだろ!
色々と兵装などが記されていたが、なんせこういった乗り物は動かすのに人数が必要だ。秋月に至っては乗員273名と書いてあったからな… まぁこの人数全員で動かすわけじゃないと思うが、これは無用の長物だな。個人的には興味はあるけどね…
そしてこれを見て思ったんだ、ヘリと船が増えたって事は格納庫とドックが増えたんじゃないかってね… 確かに増えてたよ、本当にどうなっているんだろうな、このマイホームベースってやつは。
まぁこの2つはとりあえず置いておく事にしよう。試すんならまずはヘリからだな、乗員2名なのは困った話だが、移動用と考えれば車よりも相当早く移動が出来るようになる。森を越えるなんて事も朝飯前だよな。
最悪美鈴が小柄なので、霞の膝の上にでも座らせて運用するとか考えても良いな。
おっと、考え事をしていたらどうやらボス部屋に着いたようだ。
「さて、ちょうど昼食前の時間だけどやっちゃうでしょ? 食後にボス戦とか嫌だもんね」
「そうね、せっかくだし倒してからゆっくりしましょう」
「ここまでの流れから言えば、ゴブリンとオークの上位種が取り巻き状態で配備されていて、最上位… オークロードとかゴブリンキングみたいなのがボスである可能性が高いよね。配置はどうする?」
「私の広域魔法でドーンとやっちゃう? そして討ち漏らしがいたら各個撃破という事で」
「私はそれで構わないわ、ゴブリンとオークじゃなんか燃えないし」
そういう問題なのか? 慢心、油断はダメだぞ?
「大丈夫だよ大樹さん、私達は軍隊じゃないんだから言葉が軽口に聞こえるかもしれないけど、それと戦闘は別だよ」
「そうか? それならいいが、緊張感を感じられない会話だったもんだからな」
「それは10代女子に求められても困るとしか?」
「それもそうだな… じゃあレイコ、ボス部屋に入ったら開幕に1発お見舞いしてやってくれ」
「りょっ!」
こうしてレイコを先頭にしてボス部屋へと入っていった。




