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誤字報告いつもありがとうございます。
ゴトリとアニスト王の首が地面に落ち、崩れるように胴体も倒れる。
「終わったね… 終わったんだけど、何と言うか」
「ああ、何と言うか思ったよりもスッキリしないよな」
「それはそうよ。王族を殺したからって元の世界に帰れるでもなく、現状何も変わる事は無いのだから」
「確かにその通りだな。国に帰した王女の事だって、本当に言われた通りやるのかなんて分からないし、もしも言いつけ通りやったとしても、数年から数十年と時間をかけなきゃいけない事だからな」
「まぁ良いんじゃない? とりあえずやる事の一つが終わったって事で。後は私達がどう生きるかって事を優先して行けばいいと思うしね」
「それもそうね。じゃあ次に警戒しないといけない事… それらの対処をどうするかという事ね」
「うんうん、それで一つ提案があるんだけど、聞いてもらえる?」
警戒しないといけない事… それは明確に敵対していたヤンキー君カップルの事だな。それと現状敵だと思われる勇者と賢者… こっちの方はまだまだ確定じゃないし、アニスト王国から自分達の意志で逃げ出したって事だから、どう転ぶかは分からんな。
あの2人が俺達の事をどう聞いているかも不明だし、なんなら王家に噓の情報を教えられて俺達の事を憎んでいる可能性すらある。
まぁともかく、美鈴の提案とやらを聞いてみるとするか。
「まず、大雑把に言ってしまうとこの先二手に分かれた方が良いって事だね。間違いなく100%敵対関係にあるサムライとその彼女? あの2人の動向がどこのギルドに行っても全然情報が入ってこない。もしかしたら私達が行っていない国に逃げたのかもしれない…
ここで、あの2人に特に恨みのあるカオリとレイコに追って欲しいと思ってるの。ギャフンと言わせたいでしょ? あのボンクラに。そして私達は勇者と賢者の動向を探るわ、もしも敵対した場合、職業的にあの2人と相性がいいのは私達だからね」
「ちょ、ちょっと待ってよ。せっかくおじさんと合流できたのに別行動って無くない? それなら別に美鈴と霞がセットで動いたっていい話でしょう?」
「まぁ落ち着いて話を聞いて。もちろん相応の支援は考えているよ、クリーンの魔法を使いつつも髪の毛やお肌のケアの仕方とか、大樹さんのマイホームで作れる物での支援とかも」
お? そんな話は初耳なんだが? しかもなんか支援する事になっているし… でもまぁ最後まで聞いておくか、口出しするタイミングではないよな。
「私… 知ってるんだ。大樹さんの製造の項目に… レトルト食品が増えている事に!」
「なっ!? それってつまり… カレーが持ち運べるって事?」
「そう! カレーだけじゃなくシチューや親子丼、中華丼まであったよ! もちろん白米も!」
「おおお… それで、クリーンの魔法でのケアって言うのは?」
「それは簡単。もちろん製造で色々と作ってもらわないとできないけど、基礎化粧品とかをね…」
むむ? なんか女性陣だけで固まってこそこそと話を始めたが… まぁいつもの事か。
それよりもだ、製造にレトルト食品が増えていた? やべぇ… 全然知らなかった。頻繁にチェックなんてしていなかったからな。
これは後でじっくりと確認しないとダメだな、面白い物があるかもしれないし。というか、美鈴はいつ見たんだ? 気が付いたら見ておくと大分前に言ってたかもしれんが良く見てたな。
「分かったわ、その話に乗ってあげる。ただ… 準備だけは手を抜かないでよねっ!」
「もちろんだよ。カレーにシチュー、味噌汁系と白いご飯にどんぶり系。後は替えの下着や衣類関係に化粧品ね… もちろんマイホームで製作する以上大樹さんの魔力が必要だから1日で用意は出来ないと思うから、それは理解してね」
「うん!」
「そんな訳で大樹さん、大変かもしれないけど手を貸して欲しいの」
「あー… まぁうん、必要経費って事だな?」
「そうそれ! よろしくね!」
「大樹さん… ゴールドアプルを食べるのはあの子達と別れてからにしましょう、その方が絶対に良いと思うわ… これは私と美鈴の共通の意見よ」
「なるほど? 後で詳しく聞かせろよ?」
「了解よ」
美鈴がカオリとレイコの相手をしていると、こそっと霞が声をかけてきたが… まぁ確かにあの2人がいるとなれば困るのは確かだな。あの2人の分なんて無いから… まぁそれに、あの2人の事は俺もいまいち信用できていないし、お互い納得してるみたいだから良いかもしれないな。
カオリもレイコもあのヤンキー君に犯されたって言ってたし、恨みも大いにあるんだろう… ある意味良いキャスティングなのかもしれんな。
「それで、これからの動きなんだけど… 2人は知らないと思うから教えておくと、大樹さんのマイホームは引き籠り続けると10日前後で魔力がほとんど無くなってしまう事が分かったの。だから日中はこうして外にいて、夕方からマイホームに入って製造の方を手掛けてもらう。だから全部揃うのは2~3日後って事になるね…
どうする? その時間をこのダンジョン攻略に当てるか、ちょうど転移陣があるから町に行って時間を潰すか」
「それならダンジョン攻略しようよ。勇者連中に抜かれたままなのは嫌だし、町にいたら日中の時間潰しは出来ないでしょ?」
「それもそうよね… せっかくだから60階層を目指してみて、そこの転移陣を使って戻るって事でいいと思うわ」
「話はまとまったか? それなら一度マイホームに入って、製造に時間のかかりそうな物をセットだけしておくか」
「「「「賛成!」」」」
そんな訳でマイホームに戻ってきて、個数の多い物からセットする事になった。
カオリは全く魔法が使えないという事だが、レイコは収納魔法を覚えているとの事で荷物量が多くても平気だそうだ。
レトルトカレーの甘口と中辛を200個ずつ、シチューを400個をセットして製造ボタンをポチ。数が多いせいか全部で7時間ほどかかるみたいだな… でもタイミング的には夕食時には完成しているはずだから次にかかれるだろう。
「よし、それじゃあ攻略といきますかね」
「あ、下着とかは選んでもいいかな?」
「ああ、好きにしてくれ。美鈴も霞もその辺知ってるから2人に聞いてやってくれ」
「うん!」
うむ、俺も魔力はかなり増えていると思われるが、この様子だと2~3日は結構消耗しそうだな… でもまぁ大丈夫だろ、多分。




