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誤字報告いつもありがとうございます。

 SIDE:神聖教国、ガイル


 逃げ出した勇者と賢者の捜索は部下達に丸投げしたので、ゆっくりと旅支度を整えて教国を出発し、真っ直ぐ西に進んで間もなくプラム王国の王都というあたりまでやって来た。


 しかし、どうにも周囲の空気がきな臭く感じている… プラム王国を警備している国軍の兵達の士気がどう見ても低く見えるのだ。

 そして王都が近づくにつれてその原因がなんとなく分かってきた… なぜか帝国兵がのさばっているからだ。


 最新の情報だとガスト帝国は多方向からグリムズ王国の王都を強襲したが、王都近辺での戦でグリムズ王国側が防衛に成功し、ガスト帝国軍は壊滅に近い被害を受けて撤退したという。


 正直言えば、グリムズ王国の戦力でガスト帝国の攻撃を抑える事は出来ない… そう見積もっていたんだがな、この結果には驚いた。

 聞けば夜間に太陽が現れただの、星が落ちてきただのと言われているらしいが、総合的に考えると大規模な火炎魔法で帝国軍を焼き払ったとしか考えられない。

 そして敗走した帝国軍を、無能と名高い軍務卿が追い打ちをかけて殲滅したとの報告だった。しかしその無駄な追い打ちのせいで、せっかく無傷で追い払ったというのにグリムズ王国軍にも数千という死者を出したとかなんとか。


「やはりグリムズ王国の軍務卿は、噂通りの無能のようだな。だが、我らからするとあの無能ぶりが却って良い方に傾くという物だ。せいぜい功を焦ってやらかして欲しいものだ」


 グリムズ王国からの情報はそれ以降届いてはいない、だから聖女様を探す傍らでそこらの情報も収集しておくべきだな。

 ちょうどプラム王国の王都から北上すると、グリムズ王国の王都に向かう道があるからそこから向かうとするか。まぁ第一の任務は聖女様をお探しする事だから、他の些事については全てついでになるがな。


 あのなまっちょろい勇者と賢者の事を見た限り、どうも異世界から召喚された者達が住んでいた世界では戦う事が少ないらしい事は分かっている。だから聖女様も、恐らく魔物との戦闘と縁のない都会… つまりグリムズ王国の王都にいるのではないかと予想している。都会暮らしに慣れている雰囲気だったからな、勇者と賢者は。

 まぁあの未熟な勇者達であれば、部下達でも無理無く捕らえる事が出来るだろう… 見つけさえすればな。


 しかし、プラム王国における帝国軍の振る舞いについては不穏にも程があるので報告だけはしないとまずいな。何と言ってもプラム王国の隣は我が神聖教国領なのだから… 調子に乗って攻め込んでこられでもすれば非常に面倒な事になる、聖女様の捜索を中断して帰還しろなんて命令が出るだろうからな… それだけは何としても阻止しなければ。


 プラム王国の王都に着いたらまずは報告書を書いて、教国に送らなくては… これもまた面倒だが、先送りしてしまった方がさらに面倒になるから仕方がない。まずは潜入している工作員と合流しなければ…







 SIDE:来栖大樹


 異世界生活170日目


 昨日は45階層まではスムーズに進んだが、それ以降は新規エリア… 索敵も慎重に行いながら進んだら48階層で定時となって終了した。なので今日はその途中からのスタートとなっているが、出てくる魔物がいまだにオークばっかりなのでさすがに飽きてくる。


「しかしアレだな、ダンジョンごとに難易度は違うって知ってはいたが… このダンジョンは難易度低いんだな」

「そうかもね。これならビリーカーンの方が断然上だし、コベルコダンジョンもここより上かもね」

「コベルコダンジョンってどこにあるの? 初耳なんだけど」

「王都から更に西に行くとアベマス辺境伯領って言うのがあってね、その領地のコベルコって地域にあるダンジョンだよ。もう無いけど」

「ふぇ!? 何で無いの?」

「何でって、そのダンジョンも私達がクリアしたからだよ。最下層にいたボスはドラゴンゾンビだったよ」

「ドラゴン!? ファンタジーでは最強と言われるアレ?」

「どうなのかしら… 腐っているゾンビでとても臭かったわ。それに美鈴がワンパンで倒したわよ」

「ドラゴンをワンパンって…」

「相性の問題ってやつだね。霞は腐ったドラゴンに接近したくなかったみたいだし、私の魔法はゾンビに特効だったみたいだし」

「まぁゲームでは良くあるタイプの相性ね、聖魔法は死霊系に特効だって言うの… 本当だったんだ」

「どれだけ特効だったかと言われても分からないよ、比べる対象が無いんだから」

「ふーん… でもそのコベルコダンジョン? 潰される前に行ってみたかったな」

「止めた方が良いわね。むしろ行かなかった事を幸運だと思うわよ… もうゾンビが臭くて臭くて鬱になりそうだったわ…」


 もう止めてくれ、あのダンジョンの話をするのは… 思い出しちゃうから。


 しかし、このように会話をしながらも全然問題無く進めているほどこのダンジョンに現れる魔物は弱いのだ。まぁカオリ達が40階層に到達する前の最高は20階層だか25階層だったらしいから、この世界の冒険者にとっては弱くは無いんだろうけどね。

 異世界補正と思われる根本的な能力が元々高いとアニスト王国の兵士も言っていたが、戦闘を重ねるごとに底上げされている感も確かにある。だからといって慢心はダメだけどな…


「階段を見つけたよ。こっちこっち」


 1人で索敵に出ていたカオリが戻ってきて報告をしてきた、次は49階層だな。この様子だと今日中に50階層に到達し、ボスまで倒す事が出来るだろう。

 そうすれば… いよいよだな。


 こうして逸る気持ちを抑えつつ、前衛は女性陣に任せてゆっくりと後に続いていく。前衛に立ちどんどんと現れる魔物達を打ち破っていく女性陣も、同じように気持ちが昂っているのだろうか… 見た感じでは危なげなく戦っているので大丈夫だとは思うがね。


 途中で昼休憩を挟み、午後2時には50階層へと到着。

 ここからは遊び要素と言うか、おちゃらけた雰囲気がすっかり無くなって真剣に探索を進めている。なんとしても夕方までにはボスを討伐してやろうという気概が見えているな… いや、別に偶になら残業しても良くないか? そうは思うが、彼女達なりの思惑もあるんだろうから敢えて口には出さないでおくか。


 こうして探索は進んで行った。

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