253
誤字報告いつもありがとうございます。
特に何事も無く、本日の営業は終了した。
魔物が出ると言っても街道付近じゃせいぜいブラッドウルフしか出ないからな、出た所であの魔物相手だと困る事は全然無い。
実際に、日中数匹の群れに遭遇したけど… 美鈴と霞による銃撃と、レイコの魔法攻撃によって瞬殺されていた。そして死体もそのまま…
「いやぁ、こうして1日いっぱい座っているとさすがに疲れるね… 肉体疲労じゃなくて精神的に」
「そうね、だから私はトレーニングルームで体をほぐしてから寝るようにしているわ」
「凝り固まっちゃう感じがするからね… 最初に乗ってた軽よりは何十倍も良いけど」
カオリが疲れたとか言っている… でもな、同じ車内でも後部座席に座っているんなら狭いなりでも多少は動けるだろ? 運転席にいる俺はそれすら無いんだよ!
しかしまぁ、日本にいた頃からの習慣か、運転を教えたにもかかわらず自然に助手席や後部座席に乗り込むあたり、それほど運転には興味無いんだなって思うね。俺の若い頃とは違うな… 俺なら運転するのが嬉しくて、とりあえずダメだと言われるまで運転席に乗り込もうとしていたからな… まぁ免許取りたての頃の話だが。
「さて、マインズには明日か明後日には着くと思う。体を鈍らせるような事だけは無いようにな、せっかくトレーニングルームがあるんだから」
「もちろん汗は流しに行くよ。なんかもう習慣になってるもんね」
「そうね、私も体を動かさないと寝れなくなった感じがするわ」
そんな訳で、夕食も運動も終わり風呂に入る。
俺は相変わらず最初から備え付けられている小さな風呂だが… 無駄に広いのもたまにはいいが、この狭さが俺としては妙に心地良いんだな。
「ふぁ~、今日も1日が終わるなぁ。しかし、アニスト王をヤった後はどうするかな…」
これはまだ話し合いの議題にあがったことは無いが、アニスト王国の件が片付いたら俺の考えていた当初の目的はほぼ達成だと言っても良いだろう。もちろん考えた通りに進んだわけではないが、現状までの結果を見れば、概ね問題ないレベルで思惑が進んでいる。
まぁ? マインズダンジョンに着いてからも数日はダンジョン探索になると思うが、その期間内で現状が崩れるという事も無い… 美鈴達が仕入れた情報では、王家の命令を受けて異世界人を探す部隊が出ているらしいからな… 王都に戻らなければ今回の事は知りようもないから遭遇すれば襲ってくるかもしれない。
「でもなぁ、こればっかりは予想を立てた所でどうにかなるもんじゃないからな。ただ心構えが出来るというだけだ」
まぁアレだ、今後の事は牢屋に入れてある者達の事にケリを付けてからでも良いだろう。それに…
「例の果物を食べるって話だからな… しかし俺が若返る? 全然想像できないな。10代後半まで計算してって話だったよな、どうなってしまうんだか」
こっそりと試した結果、今まで生きてきた時間が巻き戻るという事は無かったという事なので、今の知識や経験を持ったまま肉体だけが若返るという結論を出しているようだが… 若い体か、今よりもパワフルになったりするんかねぇ。
「よし、まずは風呂上がりのビールを飲んでからベッドで続きを考えるとするか」
異世界生活165日目
午前10時になったあたりでようやくマインズの町が遠くに見えてきた。
昨日着くんじゃないかと思っていたけど、案外予想よりも距離があったという訳だな。ともかく町が見えてきたからそろそろ徒歩移動に切り替えるか。
「よし、そろそろ車を車庫に入れるぞ。残りは歩きだな」
「了解だよ」
「いいとこ2~3時間ってところかしら? ちょうど良い感じの距離ね」
「何なら走っていく? ダンジョンに直行するんでしょ?」
「そうだな、ギルドに行っても欲しい情報は… なんかあるか?」
「そうだねぇ、一応消えたという勇者の事でも聞いてみる? それなりに名前が売れるくらい実力があるのなら、話題くらいにはなっているかもしれないし」
「それもそうね、名前だけでも聞ければ十分だわ」
「え? 勇者と賢者って名前あったんだ?」
「普通あるでしょう? 勇者マサキと賢者ジュンジよ… 確か」
「マサキ、ジュンジ… 普通だね」
姦しい会話を聞きながらハイ○ースを車庫に入れ、マインズに向けて歩き始める。
歩きだと馬車用に整えられた街道を進む必要は無いので、直線的に進んで行く。まぁ困ることは無いが、そこそこ大きな石などが転がっているため歩きにくいと言えば歩きにくいが、今の身体能力では特段問題には感じられないのが慣れという事か… 日本にいた頃だと間違いなく回避する獣道だな。
途中で昼になったが、さすがに全員が姿を消すなんて事を見られたら騒ぎになりそうだったので、美鈴だけマイホームに入れてお弁当を用意してもらい外で食べる。
そしてマインズの町に着いたのは午後3時になった時だった。
「よし、時間的に都合も良いし先にギルドで情報収集だな。そして門が閉まる前に町を出てダンジョンに入ればいいだろう」
「そうね、タイミングとしては悪くないと思うわ。それじゃあ私はいつものように受付に行ってくるから、そっちは分担でお願いするわ」
「ああ、了解した」
俺もいつも通り資料室に向かい、色々な冊子を漁っていく。美鈴を筆頭にカオリとレイコの3人は依頼表を見たり、そこらにいる冒険者達の会話を盗み聞きをするとの事だ。
「考えてみたら、この町のギルドって資料室に入るのも初めてだな。以前来た時は1日で町を出たから…」
おいてある資料をパラパラと見ていると、他のギルドでは見かけなかった神聖教国のダンジョンについて書いてある物を見つけた。
まぁ宗教というのは興味が無ければ関わる事を避けた方が良い事案だが… ダンジョンだけは別だと考えるべきかな? さすがに冒険者相手に信仰を強制したりはしないだろうし。
「って! まるで冒険者かのような思考になっているな。間違ってはいないんだが、本職かと言われると違う気がするしな」
ともかくだ! 神聖教国のダンジョンについては一応コピーしておくか、後から知りたくなっても困らないようにな… そう、これは保険なんだ。
とりわけ欲しい情報が無いという事が分かったので、そろそろ美鈴達と合流でもするか。これ以上この場に用は無いしな… おっと、もう午後4時半じゃないか。暗くなる前に町からは出ておかないとな!




