251
誤字報告いつもありがとうございます。
カオリとレイコがカレーの時と同じで、まるで子供が大好物の料理にがっついているかのように食べていた。
この世界の食べ物は露店の物と、貴族の… ハワード伯爵家で出された料理くらいしか知らないが、そこまで不味かったっけ? 貴族料理だったから普通に食べられたのかな? それに串焼きも不味くは感じなかったがね… まぁ味は薄かったが。
「さて、それじゃあ今後の動きだが… とりあえず牢屋にいる連中はマインズダンジョンでって事にする、これは予定通りだな。ぶっちゃけ俺はあのダンジョンって入った事無いんだが、結構奥まで進んでいたのか?」
「私達は45階層まで進んだね、まぁ途中で引き返したんだけど」
「何か相性の悪い魔物でもいたのかしら?」
「いや…その」
なんだ? 急に歯切れが悪くなったな… 説明していたレイコも横で聞いていたカオリも同じような顔をしている。
「そのね、食料が足りなくなって引き返したんだよ。その辺全然考えてなくてさ」
「なるほど。でも5階層分戻るのなら進んでも良かったんじゃない?」
「いやいや、全く知らない未知を警戒しながら進むのとはわけが違うっしょ。そこまで逼迫してたから戻ったんだよね」
「ふむふむ」
「でも当時はそれが最高到達点だったはずだよ」
「そうか、それじゃあ45階層まで行けば絶対に誰もいないって事になりそうだな」
「抜かれてなければね」
45階層か… まぁ5人で進めばかなり早く行けるかな? 俺達だけでも1階層にそれ程時間もかからないだろうし。それにカオリとレイコに案内してもらえばさらに加速できるだろう。
「それじゃ45階層以降を目指すという事で良いな? 帰りの事も考えると50階層まで進んだ方が楽だよな」
「そうね、現状50階層を目標で良いと思うわ。途中まではこっちの2人の方が詳しいでしょうし、そこは任せた方が良いわね」
「大丈夫だよ、今ここで道順を説明しろって言われたらちょっと困るけど、行けば思い出すよ!」
本当かよ… でもまぁ、今回は斥候職もいるんだしその辺は心配していないが。
「まぁアレだ、今日は色々とあったからこの辺でお開きにするか。この後は自由時間って事で」
「「「「了解!」」」」
「明日の出発は7時から8時を予定してるから、夜更かしして寝坊しないようにだけ頼むぞ」
時計を見るともう午後8時を回っている、俺もさっさと風呂に入って寝てしまうかね。
今日は生まれて初めて人を殺した。でもなんか、もっとこう精神的にクル物があると思ってたんだが今のところそんな感じはしていない。やはり魔物とはいえ戦闘を経験し、敵だと判断して戦い殺してきたから慣れてしまったんだろうか…
考えてみたらゴブリンとかオークにオーガ、人型の魔物とも結構な回数戦ったもんな。人間だけは特別かと思っていたが、俺の精神はそう捉えなかった… そんな感じなのだろうか。
横で見ていたはずの美鈴と霞も嫌悪感は一切感じさせない対応だったし、あの2人も同様に思っているのだろうか… まぁこればっかりは聞いて確認するにはデリケートだからな、ちょっとおかしいなって感じたら声をかけてみるとするか。
SIDE:女性陣
「そういえばね、大樹さんのマイホームのレベルも結構上がっているみたいで… こっちの新しいシャワー室には大浴場が増えたんだよ」
「「本当に!?」」
「だから湯船にしっかり浸かる事も出来るようになってるの、もちろん綺麗に使う事前提だけどね」
美鈴の言葉にカオリとレイコが大いに反応する、2人でマインズに残ってからはお風呂所かシャワーすら入っていないからだ。
「お風呂なんて久々すぎるぅ、早速入ってこようかな!」
「そうだね、レイコの魔法か濡れた手拭いで拭く事しか出来なかったからね」
「美鈴、案内してよ!」
「はいはい」
4人は大浴場へと入っていき、ちょっとした銭湯並みの大きな湯船に目を輝かせる。
「ヤバいヤバい、もう飛び込んでも良いかな?」
「ダメよ! ちゃんとかけ湯をしてからがマナーでしょう? 例え私達しか使わないからと言ってもそこだけはしっかりしてちょうだい」
「「はーい」」
「はぁ~、ヤバイね、お風呂ってこんなに気持ち良かったっけ? これなら毎日だって入れちゃうね」
「うんうん、日本にいた頃は時間の都合もあったから、ついついシャワーだけで済ましちゃうのよね」
湯船に浸かりながらとろけているカオリとレイコの会話を、生暖かい目で見つめる美鈴と霞。この2人は湯船に浸かる前に髪の毛と体を洗ってしまうようだ。
「ところで、美鈴も霞もおじさんの事名前呼びしてたけど… おじさんとうとうハーレムにしちゃったの?」
「残念ながらそういった関係では無いわね」
「うんうん、特に私なんかはいまだに子供扱いだよ。それで… そんな事を聞いてきたって事は?」
「いやー、もしも可能ならおじさんのハーレムに入れてもらおうかなって考えてたから。この世界に来ておじさんだけなんだよね… 私の事を厭らしい目で見なかったのは」
「私は… まぁレイコがそれで良いなら特に問題は無いと思って。こう離れてみておじさんの能力の凄さは身に染みたからね」
「ふーん… ところでカオリ、アンタちょっと感じ変わりすぎじゃない? 以前はもっと生意気だったでしょ」
「生意気って… 美鈴がそれを言う? まぁ私だって色々と考える事があったってだけだよ、レイコに頼らないとダメかもってくらいだったし」
「まぁ私も最初、カオリの変わり様にはちょっと引いたんだけどね。でもなんだかほっとけなくて」
「それはそうと、ハーレムについては諦めてちょうだい。少なくとも私と美鈴との間で約束をして、2人で大樹さんの妻になるつもりだから」
「ええ? ああ、別に私は妻じゃなくても良いんだよ、一緒にいさせてくれるだけで満足できるから」
「つまり寄生したいって事だね?」
「いやいや、ちゃんと魔法使いとして出来る事はやるし! それに今の感じだとおじさんに直接交渉するよりもあんた達を味方につけた方が良いかなって思ったから…」
「ま、ある意味それで正解だったかもね。大樹さんなら集団行動している都合、必ず私達に確認してくると思うし、突然そんな話をされたら少なくとも私は反対してたね」
「そこをなんとか…」
「まぁ今後の行動というか、態度次第じゃないかしら? 最低でも絶対に害意が無いという事を認められるだけの行動をして、不利益になるような事をしないよう努める事ね」
「そっか、大変そうだけどやるしか無いね」
お風呂場会議はこの後も続いたのだった。




