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牢屋に到着。
当然前回入った時から時間が止まっていたはずなので、王は失神したままの状態だった。他の部屋も確認してみると、王女もその他護衛の兵士も倒れたまま…
「そういえば兵士をどうするか考えてなかったな」
「そうね、適当に殴って放り出せばいいんじゃないかしら」
「もしくは王女を王都まで連れていくんじゃなくて、この兵士に護衛させて自力で帰らせるか」
「いやいや、王都まで車で1日半も離れているんだぞ? 途中で襲われてしまうんじゃないか?」
「うーん、それはそれで困るね。それじゃあ今後の態度次第って事にしようか、あまりにもふざけた態度を取るようなら、王と一緒にダンジョンの糧に…」
「とりあえずアレだ、兵士に関しては後回しで良いな。まずは王女をアニスト王がいる部屋に移動させようか。手錠はかけてるんだよな?」
「大丈夫よ、どの道あの細腕ではどうにもできないわ」
「ま、まぁそうかもしれんけど…」
とりあえず国王を収容している部屋に3人の王女を入れ、王女を捜索している最中に倒した警備兵と別々にする。当然兵士の方も手錠をかける。
「さてさて、目を覚ますのを待つか、強制的に起こすか…」
「それは2択にする意味が無いわね、強制的に起こすで1択じゃない?」
「そうだね、叩き起こそうよ」
うん、美鈴も霞もキレ気味だな。カオリとレイコを見ても目がイっちゃってるな… まぁ仕方がないか。皆が怒りで興奮しているせいか、なんだか俺は急に冷静になれた気がするし。
「よし、じゃあ美鈴は万が一のために魔法の準備な」
「むー、でも仕方がないか、了解」
「それとカオリ、その金棒はどっか置いて来い。まさかそれで殴るつもりじゃないだろ?」
「え? ああコレ? これ持ってたらなんか落ち着くんだよね…」
金棒持って落ち着くとかどんなんだ? それ以前にお前は斥候じゃ無かったか? これもアレか? 聖女がハンマーとかと同じ進化なのか? 深く考えても無駄か…
「じゃあ王を起こすわよ?」
「ああ、頼むよ。分かってると思うがくれぐれも…」
「手加減よね? もちろん分かっているわ」
ゴスッ!
分かっていると言い終わった瞬間、倒れている王の頭を踏みつける霞… かなり良い音がしたんだが大丈夫なのか?
「ぐ…、頭が…? ん? また貴様らかっ!? いい加減これを外すんだ!」
「本当に学習能力が無い男ね… 普通であればとっくに現状を把握しても良い頃だと思うのだけど」
「まぁこんな奴だから、今の状況になっているとも言うがな。アニスト王よ、今言いたい事は一つだ。気分がむしゃくしゃするからお前を殴る! 以上だ」
「もちろん万が一死んでしまわないよう、聖女である私が瀕死になったとしても回復してあげるよ。嫌だけど」
「おい待て! なんか人数が増えてないか?」
「確かに増えているが… お前達が何人召喚したのか覚えているだろ? まだまだ足りないと思うんだけどな。よし、それじゃあ俺からやらせてもらおうかな」
「ちょっと待って大樹さん。その前にこっちも起こしてあげないと…」
「ああ、イラっときていて忘れてたよ。じゃあその3人も起こしてやってくれ」
危ない危ない。王女達の気勢を削ぐとか言っておいて、それをやらないで殴り飛ばす所だった。
そんな事を考えていると、美鈴と霞が倒れている王女達に近寄っていく。そして…
「グハッ!」「おえぇ…」「うぐぅ」
順番に王女の腹を蹴りつけ、その衝撃でだろうか… 王女達は呻きながら目を開けた。
「あら、目が覚めたかしら? 御機嫌よう、お久しぶりね」
「これからいっぱい可愛がってあげるからね? しっかりと覚悟をしておいた方がいいよ」
美鈴も霞も悪党ですら裸足で逃げ出しそうなくらいの悪女を演じる。演じてるんだよな?
「だ、誰よ貴女は。私が誰か分かっていてこんな事をしているの? 王家への不敬罪は1親等処刑なのよ!」
一番先に口を開いたのは、一番体が大きいから長女なのだろうか… 態度もやはり大きいな。
「処刑? やれるものならやってみると良いよ。もちろんこっちにとってはあんた達は全員処刑対象なんだけどね」
「そうね、そんな細腕で何が出来るのか気になるわ。頑張ってやってみなさいな」
「きー! なんて生意気な女なの? 誰か! この者たちを捕らえ… え、ここはどこ?」
ようやくここが自分の部屋と違う事に気が付いたのか、キョロキョロと周囲を窺い始め、同じように倒れているアニスト王の姿を見つけたようだ。
「お、お父様? これは一体どう言う事なんですの?」
「知らん! 気が付いたらこやつらが… おごっ!」
「誰が喋って良いと言った? このボンクラ王が」
アニスト王の声が聞こえた瞬間、とにかくイラっときてついつい蹴ってしまった。まぁこれくらいはいいよね?
他の2人の王女は俺達のやり取りを黙って見ているが、一番小さい王女は意外と冷静そうで何かを探っている感じだな。さて、一体何が出来るのかな?
残念ながら俺は王女達にはノータッチの予定だから、そっちは女性陣に任せるとして俺はアニスト王がうざい行動をした時に蹴り飛ばすだけの簡単なお仕事中だ。
「ちょ、ちょっと話し合いましょう? 何がどうなっているのかさっぱり分からないわ」
「話し合い? もちろん構わないわ。私達はアニスト王国の気まぐれで召喚された者よ、私達から元の生活、家族、学校とか全てを奪っておいて追放して殺すと言ったあなた達に報復に来たのよ」
「当然タダで済むとは思って無いよね? あんた達がどれだけ傲慢な事をしたのか、その身に分からせてやるために王城に侵入し、あんた達を捕らえたんだよ。もちろん私は絶対に許すつもりは無いからね」
美鈴と霞の言葉にカオリとレイコも頷く、そして自分も早く殴らせろという感じで拳を握り締めている。
「いや、だってあれはお父様が急にやるっていった事だから、私は関係無いわ! 娘だからと言ってもお父様の言う事に反対なんかできる訳ないじゃない… だから私は無関係なの! 今なら許してあげるから解放しなさい!」
ほほーぅ。最初は責任逃れの言い訳かと思ったけど、最終的には傲慢王女である事を隠しもしないか… やるな。
ふと見ると、美鈴が革手袋を装備したまま黙って見ているほかの王女に近づいて、首根っこを掴み上げた。
「きゃぁぁ! ちょっと何するのよ!」
「いや、なんか他人事のように見ているからさ… 当事者だっていう事を教えてあげようかなって…」
美鈴さん、ちゃんと理性あるよね? 美鈴しか回復出来る奴はいないんだからな?




