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誤字報告いつもありがとうございます。
「え? マジでやったの?」
「うん… まずかった?」
「まずかったというか… いや、なんて言うか」
「でも大樹さん、相手はアニスト王国の貴族なのよ? それにもしも危惧していた通りの結果だったとしても1年分なら被害とは言えないんじゃないかしら」
「まぁな… まぁいいか、ここは一つ結果オーライという事にするか」
「「賛成!」」
若返りの果物… その効果をクリスティンを使って実際に試してみた、そんな告白を受けた訳だが… なるほど、確かに若返りを餌にしたというのであればクリスティンがあれほど協力的だったのも頷ける… のか?
まぁいいか。本人がそれで良いって言うんなら俺がとやかく言う必要も無いし、数量的にあぶれている分を使ったって言うんならそれもまた良し。
「さて、一晩中動き回っていたからゆっくりと休みたい所だが、朝食を取ったら王都を出る所までは動きたいと思う。あるかどうかは分からないけど、王都の出入りを制限されたら面倒だからな」
「そうね、さすがに閉鎖するまでは無いだろうけど面倒になるのは確かだと思うわ」
「よし! じゃあ急いで朝ごはん食べて、王都から脱出しよう! ところでこれからの動きなんだけど… どっち方面に行くの?」
「ん? 西でいいんじゃないか? グリムズ王国の方が多少知っているから動きやすいし、ダンジョンも複数あるし」
「ダンジョン… そうね、考えてみたらマインズダンジョンは全然潜っていなかったわね」
「そうだね、あの時はアニスト王国から離れたい一心だったからねぇ。まぁあそこのダンジョンもあまり深くは攻略されていなかったと思うから、深層に行けば人も来ないと思うよ」
「ああ、アニスト王を折檻するのにちょうどいいじゃないか」
「そうね、ふふふ」
霞… 王を折檻するって内容の話だったのに、妙に艶っぽい顔で笑ってやがる… もう完全に委員長のイメージは壊れてしまっているな。
まぁイメージと言えば、大人しそうな理系女子に見える美鈴はもうとっくに壊れているけどな。まさかの脳筋女子だった訳だし… ハンマー抱えて喜ぶタイプだったなんて想像もつかなかったよ。
まぁいい、とりあえずこの国でのやる事は無事終わった事だし、後はさっさと国から出て行って… それからどうするかを考えようか。
ああ、そういえば王女の誰かを生かして帰すんだったっけ… そうしないと異世界召喚は恐ろしいってこの国に伝承されて行かないからな。まぁその選別は後でやればいいか…
まぁそんなこんなで、今はもう昼になる。
朝食後、特に何事も無く普通に王都を出る事が出来、少し離れた所から車を出して西に向かって移動中だ。
しかし本当に門では何も無かったな… 普段から王族はだらしない生活をしているから、朝が多少遅くなったって誰も不審に思わないって言うのはガチだった訳だ。クリスティン情報網もやるもんだ。
「ふー、さすがにこれだけ王都から離れられれば安心じゃない? 結構眠くなってきちゃった」
「そうだな、俺も眠いかもしれん。今日はこの辺にしておくか?」
「「賛成!」」
そうと決まれば、踏み固められた街道から逸れて人気の無い方へ進みだす。この辺には車の姿を隠すにはちょうどいい岩や木々があるからそこまで移動だ。
別に見られたって大したことじゃないのかもしれないが、一応マイホームに入る前は周囲に誰もいない状況を作っておかないとなんか安心できないんだよな。
「さて、ちょうど昼だし、お昼ご飯を食べたら本日の営業は終了ってことで良いかな?」
「ああ、それで問題は無いな。まぁ今から寝てしまったんじゃ絶対変な時間に目が覚めて寝れなくなるから、少しトレーニングルームで運動でもした方が良いかもしれないな」
「それもそうね。まぁ私は朝まで寝てられる自信はあるけれど」
「それだったら無理して起きてなくても良いんじゃない?」
「どうしても眠くなったらそうするわ」
とは言った物の、昼食を食べたら睡魔がすごい事になってきた。もうアカン… 寝るか。
異世界生活162日目
一昨日は明るい内から寝てしまったため、昨日はすこぶる体調が良く1日中走り続けて、日暮れと共に活動を終了。
そして今日… 朝食の席でなんとなく会議っぽい事が行われていた。
「ちょっとさ、王様殴りに行かない?」
「おいおい、それは俺も賛成したい所だが、今やったら壊れるんじゃないか?」
「そうよ、アニスト王にとっては殴られて失神した直後なのよ、そもそも気を失っていると思うわ」
「うーん… という事は当然霞に殴られて気絶している王女達も同じだよね。うーん…」
「なんだよ、なんかストレスでも抱えているのか? ちょっと魔物でも狩るか?」
「ストレスっちゃストレスなんだよね。だってアニスト王が手の届く場所にいるんだよ? イラっと来ない?」
「まぁ分かるわ、分かるけど今は我慢の時よ。マインズについたらすぐにダンジョンに入っていける所まで降りていきましょう、そうしたらアニスト王と王女達をダンジョン内に出してあげれば良いわ」
「うん、それは分かってるよ。ダンジョン内ならたとえ死んだとしても、ダンジョンが吸い取ってくれるからね。汚物なのに有難い事だね」
「そこで回復を入れながら気の済むまで罵倒して殴ってやればいいのよ」
「実はご褒美になってたりしてね…」
「それは何とも言えないわね。まぁ大樹さんには随分な態度を取っていたらしいから、男性に殴られるのは癪に障るのかもしれないけれど…」
「マジか! じゃあ王女は任せるから王は俺が…!」
「ダメダメ! 独占は禁止だよ!」
「もちろんそうよね。でも… 王女を任せるのもどうかと思うわ」
んー? まぁ王女に関しては任せてもいいとは思っている。いくらアニスト王と同罪だとは言え、女性を手にかけるというのはやはり抵抗があるからな。
まぁアレだ、これも綺麗事だというのは分かっている。
異世界から誘拐してまで召喚し、自分達の好みに合わないと分かれば殺害する… どう考えても今のうちにその考え方が変わるほどの衝撃を与えておかないといけない。そうしないと… これからもこの国の王家は、子々孫々同じことを繰り返していくんだろうと簡単に予想が出来てしまう。
そして… そう考えている俺本人が偽善者である。確かにこれからの未来、俺達と同じような犠牲者を無くすための良い行動のように思えるが、結局は俺自身がやられた事に対してキレているだけなんだ。
それを理性で理解したうえで、俺はアニスト王を殺そうとしている。もう始まってしまっている、若い2人までもを巻き添えにして… 唯一の救いは、美鈴も霞も今回の事に賛同してくれているって事くらいか…
まぁ… あの2人にだって思うところはあるはずだから、殴りたいというのなら存分に殴らせてやろう。トドメは譲れないがな。




