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誤字報告いつもありがとうございます。
「よし、アレが貴族街と平民街を分けている防壁だな?」
「そうだね、来た時と同じで篝火はあるけど人の姿は見えないね」
「どちらにせよ、クリスティンがここで見つかっても問題でしょうから、少し建物の陰にでも入った方が良くないかしら?」
「そうだな… 俺は詳しく知らないが、全く普通の人だった感じだったもんな」
「そうね、さすがにこの闇夜でスタスタ歩けるような人ではなかったわ」
そんな訳で、どの屋敷がクリスティンの家なのかは知らないが、とりあえず約束なのでこの辺で解放してやる事にする。
牢屋に入った時はさすがに驚かれた… まぁ向こうにしてみたら、俺達が出て行った直後だったはずだからな、それは仕方がない。
そしてこの真っ暗な状況で「さぁ帰れ!」って言っても無理だろうから、保険で作り置きしていた暗視ゴーグルを1つ装備させる事にした。これで闇夜でも安全に帰れるだろう。
「まぁ! こんな闇の中なのにクッキリと見えますわ! これは頂いてもよろしいので?」
「ああ、アンタがくれた情報は正確だったし、俺からの報酬だと思ってくれ」
「こちらこそ感謝いたしますわ。貴重なアイテムをくれただけでなく、あの王から解放してくださったのですもの…」
「もう会うことは無いだろうけど、次は良い男を見つけなさいね」
「そうそう、人生まだまだこれからだよ!」
「貴女達にも感謝していますわ、どうかご武運を」
ネグリジェっぽい服の上からマントを着て、更には暗視ゴーグル装備というなかなか訳の分からない姿になってはいるが、その仕草はさすが貴族という物であった。
走り去っていくクリスティンを見送り、俺達は来た時同様に塀を乗り越えて平民街へと進んで行った。
「さて、王都脱出はどうやる? このまま一度マイホームに入って休んでからにするか?」
「クリスティンの話を聞く限り、午前中であれば何も問題なく出られそうだよね」
「そうね… さすがに一番外側の防壁は背が高いから、明るくなってから普通に出た方が良いと思うわ。正直言って速くシャワーを浴びたいわ」
「そうだね、なんだかんだといっぱい動いたもんね… 結構な距離も走ったし」
「じゃあそうするか。とりあえず一度休んでしまおうか」
「「了解!」」
マイホームに入るなり女性陣はシャワー室へ飛び込んでいく… まぁ俺も汗は流しておきたいから風呂にでも入るとするか。
「いやぁ長かったような短かったような… やっと王城でのやる事も完了したな。後は王家の者達に対する処分? 処罰?」
まぁそんな事を言ってられるほど偉い訳ではないが、あの王族共はこのまま放置していい人種じゃないと思っている。
自分が一番俺様最強、恐らくそんな事を思っているであろうアニスト王は人として終わっていると思う。王女に関しては詳しく知らないから何とも言えないが、クリスティンの話を信じるのならただの悪女なんだそうだ。
最悪なのは長女と次女で、常に2人で何かしら争っているとか… それを見て育った三女はかなりずる賢く育っているとも聞いている。
まぁ生まれながらに権力を持ってしまっている王族だと、余程屈強な精神を持っていなければこうなってしまうものなのかもしれないな。それじゃダメなんだけど。
とりあえず元凶であるアニスト王だけはダメだ。コイツが俺の人生で初の人殺しの犠牲者になる事は間違い無いだろう… 俺自身がやる気満々だしな。まぁ最悪、ビビってしまって殺せないってなったとしても、間違いなく死ぬ運命を辿れるようには考えている。ダンジョンの最下層で放り出すとかね… あの王ならそれだけで間違いなく魔物にやられるだろう。
風呂から上がり、一息つきながら時計を確認。まもなく午前5時になる所だな、もうすぐ夜が明けるからこのまま寝るという事は出来ないか… さすがに王都の中にいるというのは落ち着かないので、ゆっくりするんなら王都を出てからだな。
ここで1杯冷えたビールでも飲めれば最高だったんだが、そんな理由で自重する。まぁアレだ、カフェオレでも飲んでおくか。
この世界の人間は朝が早い。なので夜が明けたらすぐにいろいろな職種の人達が動き出し、それに合わせて王都の門も開いていく。
出来れば早急に門から外に出て安心したい所だが… 朝一というのは非常に混雑するためちょっとだけ避けたいと思っている。まぁこれは2人が戻ってきたら確認だな、のんびり出てくるのを待つかね。
シャワー室内
「やっぱり予想通りだったみたいだね、試してみて正解だったよ」
「そうね、クリスティンには悪いけれど、この検証結果は非常に有益なものになったわ… なんだったらお礼をしたいくらいよね」
「うんうん、まぁでもアニスト王国の貴族で、しかも王の妾だというのに無傷で城を出られたんだから、それが礼になるんじゃない? 知らんけど」
「それはともかく、これで安心してあの果物を食べさせて上げれるわ。クリスティンにとっても良い事だったと思うし、win-winだから良いんじゃないかしら」
「そうだね! これで大樹さんも憂いなく若返られるし、保管してある私達の分も価値が確定したしね」
「ええ、1年若返るというチェリーを食べたにもかかわらず、記憶などの障害も無くただ純粋に肌が綺麗になったんだから間違いないと思うわ」
「なんというか、今回の後始末をしてしまえばようやく一区切りがつくと思うんだ、私達の戦いはこれからだ! ってやつだね!」
「ちょっと落ち着きなさい美鈴。別にこれから戦い続けなければいけないという事は無いわよ」
「でもダンジョンは入るでしょ? もしかしたらまた例の果物が手に入るかもしれないし… 多分ずっと戦っていくんだと思うよ」
「まぁ… 否定はできないわね。魔物を相手に戦う事は嫌いじゃないし… まぁ魔物にもよるけれど」
「そうだね… さすがにゾンビ系は無理だよね、臭いし」
「まぁいいわ、それよりも手早く済ませて食事にしましょう。大樹さんにも説明しないといけないし、今後の事もあるから」
「とりあえずこの国からはさっさと出たいよね、もう一生関わらなくてもいい程離れてやりたいな」
「まぁ他の国がどんな感じなのかは知らない事が多すぎるけど、帝国以外では賛成ね」
「よし! じゃあ朝ごはんにして大樹さんと会議しよっか」
「了解よ」
汗を流した2人は体を拭き、ロビーへと向かって行った。
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