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誤字報告いつもありがとうございます。
そろそろ夕食の時間になる。
今日は結局モニターを見ているだけで日中が終わってしまったな。カメラ越しに確認できたことは多少あり、侍女っぽい人が3人ほど部屋に入ってきて清掃を始めたのだ。
作業内容は、ベッドの周辺の清掃とシーツなどの取り換え。ベッドヘッドに活けてあった花瓶の花も取り換えられていた… これはつまり、今晩この部屋を使うって事なのかい? なんというか… お盛んですな。
「それで今日はどうするの? さっきの様子を見る限りじゃ多分今晩この部屋を使うと思うけど」
「そうね、私としても突撃のタイミングは知っておきたいわ。それで… あえて意見として言わせてもらうと、その… 事を始める前に取り押さえたいのよね」
「ああ、それは分かる。俺だってあんな奴の行為を待ってやれるほど人間出来ちゃいないからな、明かりを落とした時点で良いんじゃないか?」
「そうだよね! よーし、なんかやる気が出てきたよ! もうぼっこぼこにしてやる」
「ちゃんと話が出来るよう手加減を忘れないようにな、特に美鈴。」
「ええ? 特に私なんだ?」
「そりゃそうだろ。霞ならとっくに手加減を習得しているしな、美鈴は感情のままにフルスイングしそうだから忠告してるんだよ」
「ん… 努力する。最悪の事態が起きたら私が回復するから!」
「ある意味それが一番の拷問なのかもしれないな」
「そうね、苦痛だけ与えてから治し、また苦痛をってエンドレスよね。精神が先に壊れてしまうわ」
「怖い怖い。じゃあとりあえず話をまとめてしまうか… 夕食後は戦闘準備をして待機という事になるな、ただ戦闘といっても無力化する事が最優先なので、武装はスタンガンのみにしよう。突撃するタイミングについては、事が始まる前… ぶっちゃけて言えば服を脱ぐ前にやってしまうって事でどうだ?」
「私はそれで良いと思うわ。ちなみに無力化した後は牢屋で良いのよね? でも確か牢屋の中って時間の経過が無かったはずよね、気を失わせたら失ったまま止まってしまうのはちょっと考えものよね」
「そうだな… なんでそんな仕様になっているのか」
「牢屋がそんな仕様なのは多分… 牢屋に入れるような奴に食事とかトイレとか不要にさせるためなんじゃない? 確かに気を失わせてから放り込んじゃえば、いざ尋問って時に目を覚ますまで待たなくちゃいけないのは面倒だけど」
ふむ… まぁ牢屋の仕様はこの際どうでも良いか。ある物を出来る限り有効に使う、この考え方で行くしかない。
しかしまぁ、仕様といえばアレなんだよな… 俺達が一緒に牢屋の中に入っていれば時間の経過が止まることは無いんだよな、何とも都合の良い事で疑問が残るが。
「じゃあそう言う事で、準備だけはしておこうか。もしも気になる事があるんだったら今の内に言ってくれよ」
「私は特に問題は無いわね。準備が済んだら軽くウォーミングアップをしておこうかしら」
「お、確かにそうだな。じゃあモニターの監視を交代制にして、順番に体の方をほぐしておくって事にするか」
「「了解!」」
方針は決定した。
まぁ方針という程の内容ではないけど、行動の指針は無いとまずいからな。しかし改めて思うが… あの贅沢を尽くして磨き上げられた肥満ボディにスタンガンが効くのかどうか、何よりもスタンガンのショックで心臓麻痺とかは止めてくれよな… かなりマジで。
食後、30分もかからずに全員が黒装束に着替えて準備は完了、いつでも出られる状態になったところで作っておいた手で押し付けるタイプのスタンガンを配布。
俺達の中で一番動きが速く、戦闘力もずば抜けている霞を先陣に起用するために霞だけはモニター監視係から排除する。霞についてはこちらが呼び出すまでの間、好きなだけウォーミングアップをしてもらう事になった。
美鈴についてはアニスト王が連れてくるであろう女性を連れてきてもらうので、監視係は少なめという事で… まぁアレだ、俺が女性にスタンガンを押し付けて、担いでくるのが嫌だという事だが… まぁ腕力については美鈴のような小柄なタイプでも、アホみたいについているから大丈夫だと思う。
俺としては、別に王の相手の女性に性的に襲い掛かる訳でもないから気にする必要も無いと思うんだがな…
とにかくだ、今回俺の役目はかなり少ないという事だ。でも話し合って分担した事だから、現状自分がやれることを全うする事にしよう。まずはモニターの監視だな!
午後8時を過ぎた。
霞はトレーニングルームに入ったきり一度も出てきていないが、美鈴は交代要員として何度か戻ってきていた。俺も美鈴と交代している間にトイレとか諸々済ませてきている。
そして時計が8時半を指した時、蠟燭のような灯りを持った女性と肥満体であるアニスト王が部屋に現れた。
「美鈴、王が来たぞ! すぐに霞を!」
「了解!」
ちょうど近くにいた美鈴に頼み、霞を呼び戻してもらう。
蝋燭を持った女性が、ベッドのヘッド部分にある台に火を灯し、ベッドの周辺だけほんのりと明るくなる。そして持ち込んできたであろう瓶とグラスを持ち、乾杯をしているようだった。
おい、霞はまだか! あれを飲み干したら始めてしまうと思うぞ! 別に俺はどうでもいいが、あの肥満体をオールヌードでなんて鑑賞するべきものじゃ無いだろう! 相手の女性だけならともかく!
その相手の女性は、さすがは王が連れてくるだけあって物凄い美女? もしくは美少女だ。赤外線カメラ越しだから細かい所までは見えないからいまいち年齢が分からない… ただ美人だというのだけは分かる。
「大樹さん待たせたわね、まさか始まってはいないわよね?」
「おお、まだ大丈夫だ。今ワインのような物を飲んでいて、気分を盛り上げているんだろう」
「そう… それじゃあ一気に行くわね、美鈴も遅れないようにあの女性を沈めてちょうだい」
「任せてよ! 声すら出させる暇も与えないよ!」
「大樹さんは私達があの2人を黙らせてから出てきて、牢屋の扉を開けて待っていて」
「おう! それじゃあ作戦開始と行くか!」
「「了解!」」
音を立てないようスルリとマイホームの扉を開け、様子を窺う。ボソボソと話声が聞こえるだけでこちらに気づいている様子は全く無いようだった。まぁベッドの近くに明かりがあるだけで、それ以外は闇の中だからな…
ハンドサインという訳では無いが、先頭の霞が人差し指をベッドの方を指してから指でカウントを始める。
5、4、3、2、1… 音も無く走り寄った美鈴と霞がそれぞれの目標に向かってスタンガンを押し付けた。
 




