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誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活159日目
また例によって探索中に日付が変わった。
警戒しながら通路を進んで行くと、大広間のような開けた場所に出た。まるで高級ホテルの玄関ロビーのようだ… そこからは上に昇る階段があったり、目につくだけでも4か所ほども通路が見える。
「どうやらここから先は居住区になってるかもしれないわね」
霞が小声でボソっと言う。だけどその感想なら俺も抱いていたんだよな… 本当にホテルのような造りになってるし、階段の向こうには多分客間であったり寝室があったりするのだろう。だとすると… 先ほど拠点にしたあの部屋の用途は一体何のためなのか気になってしまうな。
まぁもしも情事をするためだけの部屋だというなら、それはそれで納得しそうだが… こういった建物は防音をあまり出来ていないとか? そうだと仮定して、わざわざ離れた部屋でヤルって事なのね。もしそうなら部屋の外で待機していた兵士は気の毒にも程があるな…
「もう日付が変わっている時間だ、人がいるんだとしても寝ている頃合いだろうけど… どうする? 進むか?」
「あの大きな扉、外に通じていそうじゃない? さすがに今扉を開けるのはリスキーだけど、近くに窓があるから外の確認だけでもして行かない?」
「それはそうだな。じゃあ窓の外を確認して、ここに来るまでに見えていた景色と一致するか確認をしよう」
足音を忍ばせて窓がある所まで移動をし、窓越しに外の様子を窺ってみた。玄関らしき大きな扉の前には魔道具か何かだろうか… 街灯のような形をした光源があり、地面を照らしていた。
「なんだ、電灯のような物があるんじゃないか。今まで見かけなかったけど」
「多分物凄く高価なんじゃない? というか、あの明かりが邪魔で遠くまで見えないね」
「人の気配は感じないが、さすがにこの辺で警備が薄いなんて事は無いだろうな。とりあえず今日はこの辺にしとくか?」
「そうね、これ以上はリスクが高いと思うし仕方が無いわね。まぁここから外に出られるって事が分かったから良い事にしましょうか」
「そうだね。さっきのベッドがあった部屋で何も起こらなかったら拠点をここに変えれば良さそうだしね」
「よーし、それじゃあさっきの部屋に戻るとするか」
「「了解」」
まぁ霞の言う通り、ここから外に出られると分かっただけ良しとするべきだな。
ぶっちゃけ来た道を戻るとなれば、かなりの距離を歩いた気がするから普通に大変そうだし… それに屋内よりも屋外の方が移動速度も高められるしな。
先ほどの部屋に舞い戻って、同じ場所にマイホームの扉を出す。引き込んであった配線の確認を済ませて時計を見ると…
「もう2時半だったか、どうする? このまま寝てしまって起きてから飯にするか?」
「そうだねぇ… いつもなら6時にご飯食べてた訳だし、ちょっと早いよね」
「起きてからで良いと思うわよ? それならお腹が空いてちゃんと起きられそうだし」
「なるほど! じゃあ起きてから飯という事で、本日の営業は終了とするか」
「「了解!」」
俺はすでに眠たいが、あの2人は多分そうでもないんだろう。きっとこれからシャワーを浴びたりと時間を潰すんだろうな… そうなれば朝食は8時とかそのくらいになりそうだな。
まぁ誰も起きてこないようならコソっと間食すればいいし、俺はこのまま寝るとするか。風呂? それも起きてからにする。
じゃあ寝るとしますかね。
SIDE:勇者君
「ビリーカーンって町はこの方角で間違い無いんだよな?」
「ああ、ギルドで何度も地図を確認したから大丈夫だ。どの道マインズからは王都方面に行く道と、ビリーカーン方面に行く道しか無いという事だから、街道を歩いて行けば迷うことは無いそうだ」
「そうか。次のダンジョンもどうなっているのか気になるよな、新しい剣の調子も気になるし」
「剣なら移動中に使えるんじゃないか? ちょっとした魔物は出るみたいだから」
「ま、そうだな。ブラッドウルフが出るとか言ってたもんな、それならそれで肉が確保できて良いしな」
俺達は旅支度を整えてマインズの町を後にした。次の行き先はビリーカーンと言うこれまたダンジョンがある町で、ハワード伯爵領になるという。
俺個人としては、マインズダンジョンでの最高到達地点の更新をしたかったんだが… 賢者の奴が移動を急かしてきてな、まぁアイツが言う事は最初に決めていた事だから俺もおいそれと反対意見を出す事は出来ないんだ。まぁ他の日本人が何をやっているのかって言うのも非常に興味があるし、いつまでも女っ気が無いというのも味気が無い。
だってそうだろ? 勇者である俺がいるんだぜ、勇者パーティと言うのはどんな物語であっても華やかであるべきなんだ。確かに片腕の勇者なんて物語は無いのかもしれない… でも俺は、この世界に認められた正真正銘の勇者なんだ。有能な仲間を引っ張っていく司令塔のはずなんだよ。
有能な仲間… そういった考え方だと賢者と言うのは確かに外せないメンバーなんだよな、だからこそ俺はコイツの指示にはある程度従っている。まぁ実際頭は良いからな、俺だけだとどうにもならない事でもコイツがいれば何とかなってるって事も実際あった。それに… マインズで手に入った情報にあるカオリとレイコ、この2人のうちカオリと言うのは悪評もあったが、現実に最高到達地点をマークできるほどには腕は良いはずだ。それに全然顔を覚えていないが、他にも武闘家に侍、治癒師に聖女。まぁ治癒師ってのは間違いなく聖女の下位互換だよな… この辺は顔を見てから判断すればいいか。
なんせ勇者パーティだ、有能であって華がある。そんなもんだろ? 当然そのパーティのリーダーは俺の訳だし、色々と捗るな!
しかし侍は確か男だったよな… まぁ実力次第では使ってやってもいいが、できれば男はパスの方向で考えるか。もう一人おっさんがいたはずだったけど、どんな能力だったっけ? 顔どころか能力ですら思い出せないくらいだから大したもんじゃなかったんだろうが、一応賢者の奴にも聞いてみるか。
「そういえばよ、確か異世界転移された時におっさんがいたよな?」
「んん? ああ、そう言えばいたかもしれないな。スマンが全然覚えてないんだ」
「そうか、実は俺も覚えてないんだけど… どんな能力だったっけ?」
「それもな… 気になって思い出そうとした事はあるんだが、全く思い出せないんだ。だから大した能力じゃ無いんじゃないか?」
「まぁそうだよな。他の奴らは顔は覚えてないけど能力は覚えてるもんな」
「まぁ気にしなくても良いだろう。他の日本人と合流できた時に聞いてみれば良いんだからな」
ま、賢者の言う通りだな。他の連中にあった時に聞けばいいだろ。
………ん? なんか遠くで土煙を上げながら走っている奴がいるぞ? それも2人か? 遠くて良く見えないが… どこに行くのか知らないが全くもってご苦労なこったな。




