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誤字報告いつもありがとうございます。

「さて、昨日よりも少し早い時間だしどうしようか。ご飯は6時くらいにしておく?」

「今は… 4時を過ぎた所か。まぁそうだな、それでよろしく頼むよ。俺はちょっとモニターでも眺めているから」

「了解。何か変化があったら教えてね」



 頼むよー? あそこが王の部屋であってくれよー? 人目を気にしてこそこそと暗闇の中を探索なんて、正直言ってダンジョンに籠っているよりも気が滅入るよ。どうせならさっくりと終わらせてこの国から脱出したいぜ。


 もしも王がいるんだったら霞が言ってた通り、気配を消しながら護衛に近づき、牢屋の扉を出してその中に蹴り入れる。多少の打撃音はするだろうが、転ばしたりするよりは静かだろう。

 その直後に部屋の中になだれ込んで王を捕獲し、コイツもまた牢屋に放り込んでやる。そしてちょいと痛めつけながら質問し、残りの王族の居場所を問いかけてやればいいだろう。


 しかしながら、やるんだったら一晩のうちに全部終わらせないと王の不在により騒ぎになる事は明白。明日の行動開始は21時くらいにしようか… まぁこれは護衛の交代のタイミングを計ってみないと何とも言えないがな… まぁ都合よく行くんなら、一晩丸ごと交代無しで夜勤してくれるのが一番良いね。それなら朝までバレることは無いだろう。

 もしも深夜にでも交代してしまうんなら、護衛がいないと部屋の中まで確認してしまうかもしれない。でもまぁ大丈夫か? なんか怠慢な連中しかいないイメージだし。


 まぁアレだ、段々と都合の良い方向にしか考えが向かなくなってきてるからこの辺にしておくか。多分脳が疲れているんだよ… 飯まではモニターでも見ているかね。



 配線を引き込んでいるため、こちらからズームの調整ができるんだが何とも画質が良くないな。まぁ俺達が過ごしていた時代のカメラは性能が良いからな、スマホのカメラですらこのカメラよりも大分良いくらいだ。


 でも、暗闇の中で浮かぶ篝火、それに照らされている護衛兵士の姿はちゃんと確認できている。明るくなればまた違うだろうけど、現状でこれなら許容範囲の内だろう。


 しかしアレだな… 美鈴や霞に対してもそう思ったが、俺もなんだか考え方が過激になっている気がするな。まぁ相手があのアニスト王だからって言うのは確かにあるが、それでもアイツを捕らえるための手段として拉致とかね… いくら王城勤務のほとんどが貴族とは言え、完全にとばっちりな人だっているはずだ。


「でもまぁ、国そのものを改善するって言うなら必要悪なのかねぇ… その考えは都合良すぎかな?」



 ボヤーっとしながらカメラと接続してあるモニターを眺める。

 時計はもう朝の5時を過ぎているんだが、明り取りの窓が近くに無いせいかいつまで経っても暗いままだ。ただ、護衛兵士のいる辺りには篝火があるおかげで部屋の出入りなんかは分かるのが救いだな。


 しかし… あの立っている兵士もすごいもんだな。いつから立っているのかは知らないが、喋っているようなそぶりも見せず、ただただひたすら立っているだけだ。よく我慢できるもんだ… 俺には厳しい仕事だな。

 ま、無駄話なんかしていると、あの王にお叱りを受けたりするんだろうな… 日本ではあり得ない事だが、この国ではそれだけで処刑とかされたりするのかもしれない。そりゃお喋りなんか出来っこないよな。



 んー、しかし動きが無いね… どんだけ真面目なんだよ。

 そろそろ食事の時間だしいったん席を離れるか、それともここでモニター見ながら食べるか。時間的に大丈夫だとは思うけど、あの部屋を利用しているのが王だという事をしっかりと突き止めておきたいんだよな。

 こんな早朝から動き出してくることは無いと思うが、何が起きるか分からないからな… なんせ王族の生活なんて知る由も無い。


「大樹さーん、ご飯できたけど?」

「お、ありがとな。ちょっとモニター見ながら食べるかな」

「そう? こんな時間から起き出してくるような働き者には到底思えないんだけど… まぁ一度しか会ってないけどね」

「それには同意しかないが、万が一を考えたらな… 一応録画してあるから大丈夫なんだけど、気になるだろ?」

「それはねー、でもモニター越しでも見かけたら飛び出しちゃいそうだよ。そんでもってぶん殴るの」

「全くこの聖女と来たら… 完全に物理なんだもんな」

「そうそう! 別に聖女が物理で悪い事なんて無いでしょう? ゲームとかでも杖で殴ったりするじゃん」

「あー、確かにそうだな。大したダメージは出てないと思うが」


 まぁそうだな、せっかく集まって食事の時間を取っているのに、あの王のためにそれを止めるのは惜しいかもな。まぁ食事中の分は後で録画を見よう。



「ところで大樹さん、これからの事なのだけど」

「ん? なんか気になる事があるのか?」


 時間的に朝食を食べていると、霞がなにやら神妙な顔をしながら声をかけてきた。これは何か重い話でも来るのかな?


「もしもあの部屋にいるのが王だった場合は最良の結果として良いと思うけれど、違った場合は今晩にでも誰か情報源を捕まえた方が良いと思うの」

「情報源…か、確かにこっちも時間をかけてられないからな。まぁできるならやらない方が良かったと思うけど、ここはスパっと割り切るしかないよな」

「ええ、日本人としてのモラルだと確かに重い犯罪だけど、ここは日本じゃないと割り切るしか無いと思っているわ。他にも王族を探して捕まえないといけないし、これ以上時間を割くのは良くないと…」

「ああ、承知したよ。せっかくカメラを設置したんだ、どんな人がこの辺をうろついているのかも要確認だな」

「そうね、できるなら簡単に心が折れてくれそうな女性が好ましいわね。貴族の女性なら体に傷がつくのを極端に恐れると思うから、すぐにいろいろと教えてくれると思うのよね」

「女性か… うーん」

「あ、私達でやるから大樹さんは心配しなくていいよ。さすがにここが異世界だからって、女性に手を上げるなんてやりたくないでしょ? 私なら必殺の魔法障壁で囲ってしまえば無傷で連れてこれるから」


 おおう、美鈴もなんかやる気だな。

 特にこの王城に入ってからこの2人は殺気立っている気がする… まぁその矛先はあの王なんだろうけど。


「まぁアレだ、その辺は臨機応変だな。俺だってやらなきゃいけない時なら躊躇はしないさ。とりあえず早めに寝て、15時くらいに起きようか」

「了解よ。それから録画の確認という訳ね、時間的に良いと思うわ」


 急がば回れ… 昔の人はそんな事を言っていたが、さすがにこの状況では回り道をするのは致命的な気がするよな… だから、出来る事をサクッとやってしまおうか。

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