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誤字報告いつもありがとうございます。

「うん、皆黒装束だけど暗視ゴーグルのおかげでちゃんと確認できるね」

「そりゃそうだろ…」


 マイホームから飛び出し、人気の全くない城下町の中を小走りで抜けていく。足音を極力抑えるようゴム底のシューズも良い仕事をしているな。


 しかしこれは… 日本と全然違って人っ子一人いやしないな。日本の… それも東京であれば23時に辺りが真っ暗で、誰も歩いていないなんて事はあり得ないからな。街灯やネオン、果ては自販機の灯りだけでも相当な明るさを出しているからな。


 それに警備らしき人の姿も全然いないな… こんな様子じゃ王城への侵入なんて容易く出来てしまいそうって油断が生じそうだ。もしかしたら暗視なんて言うスキルもあるかもしれないし、やはりここは慎重に行くべきだろうな。


 光も音も無い今の時間帯、話し声すら遠くまで聞こえてしまいそうな程の静寂。小声でもやり取りができるようインカムを装着しているが… そのせいで2人の吐息が常に聞こえてしまっている。

 つまり、俺の呼吸音も2人には聞こえているんだろうな… これはちょっと気にして見るとかなり恥ずかしいんじゃないか? まぁ2人にうるさいと言われたら対処法を考えるか。


「ん、あそこに明かりが見えるわ、どうやら門のようね」

「人数とか分かるか?」

「門の前には誰もいないわね。近くに詰め所でもあるんじゃないかしら」

「そうか、じゃあ防壁を乗り越える方向で静かに行こう。塀の上もチェックしてみてくれ」

「了解よ」



 こうして平民街、貴族街と順調に抜けていき王城に辿り着いた。


「近くで見ると大きいねぇ、こういうお城って構造そのものが侵入者対策がなされているんでしょ? 城の探索だけで数日かかりそうだね」

「そうね、中でもとりわけ王族の寝所とかは迷路の先にあるような物だと思うわ。大樹さんのマイホームが無ければとてもじゃないけど無理な作戦よね」

「まぁある物は十分に活用すればいいだろ。今後同じ所で迷ってしまわないようにマッピングもしないとな」



 美鈴の調べにより、王城の入り口付近には侵入を感知するような魔法的なナニカは無いとの事、静かに速やかに防壁を乗り越えて内部へと入っていく。

 そして日本の建造物で例えれば、3階部分程度の高さの場所にテラスだと思われる所があり、かぎ爪を取り付けたロープでもって城内への侵入に成功した。ここまでは恐らく誰にも見つかっていないはずだ。


「さて、ここからは美鈴が先頭に立ってくれ、魔法的な罠とかに注意を注いで欲しい。マッピングは俺がやるから霞は後方を頼む」

「了解だよ。一応明らかに王のいる場所とは思えない方は無視して進むからね?」

「ああ、それで構わない。別に宝探しでも盗賊でもないんだからな」

「一応物理的な罠にも注意しておいてちょうだい。なんだったら前方に障壁を展開しておくとかも有りよね」

「そうだね、仮にも国一番の権力者が住まう城なんだし、最大限の注意を払うよ」




 異世界生活157日目


 こうして王城に侵入してかれこれ4時間が経過。最初の移動に1時間ほどかかっているので現在時刻は午前4時になるところだ… すでに日付は変わっている。もう1~2時間もすれば朝日が昇り、視界が良くなってしまう。どこか区切りの良い所でマイホームに入った方が良いだろうな…


 ちなみに探索の方は全くもって進んでいなかった。

 ちゃんとマッピングはしているものの、やはり城の全容が分からない以上現在位置が城のどこらへんなのかが全く把握できていないせいだろう。もしかしてちゃんと進んでいるかもしれないし、明後日の方向に向かっているのかもしれない。これはこれで結構なストレスを感じるな…


「大樹さん、なんとなくだけど視界が良くなってきてるね。そろそろ闇に紛れる事が出来なくなりそう」

「そうだな、俺もそろそろって考えてたところだ。次に曲がり角があったらその角で扉を出そう」

「それが良いわね、壁を背にしておけば出る時の警戒が楽になるわ」

「お、あそこの角にしようか。あそこなら出てくる時に周囲を見やすそうだし」

「「了解!」」


 ちょうどL字型に折れ曲がっている通路の壁に向かってマイホームへの扉を出し、全員で中に入る。ついつい静かに入ってしまったがそこはご愛嬌だろう。


「あーっ! 物音を立てられないってかなり疲れるね、もうストレスで爆発しそうだよ!」

「大丈夫よ、トレーニングルームはあそこにあるわ。私も同じ思いだから少し汗を流しましょうか」

「これからしばらくは昼夜逆転するが、飯の時間はどうする?」

「それこそ昼夜逆転で良いんじゃない? 朝の6時くらいに夕食って感じで」

「まぁその方が分かりやすくて良いかもな。じゃあ飯は6時くらいって事だな? 俺は先に風呂に入って来るかな」

「私はストレス発散が先だね! ちょっと行ってくるよ!」



 お風呂と食事を終えたら書き込んだマップの整理をしなくてはな… ちゃんと窓のある場所は書き込んでおり、そこから見える目立つものも明記してあるので何とか方角だけは理解できそうだ。


 しかし王城というやつは… 基本最終防衛の場所でもあるから初見には非常に厳しい造りになっている。これはアレか? 城で働いている誰かをちょろっと拉致って質問してみた方が良いのかな?

 まぁあの王に忠誠を誓うような奴はいないとは思うけど、それは日本人の感覚だけだとしたら何とも言えないんだよな。もしかしてあんな王にも絶対の忠誠を誓っている奴がいるかもしれないし、この世界ではあの王みたいなのが普通だと言われているのかもしれない。


 ここはアレだな、そういった事に詳しそうな霞に聞いてみるか。



「そうね、恐らくだけど忠誠を誓っている者は非常に少ないと思うわね。権力に逆らえない者たちや、権力に縋り付いてくるような者たちで周囲を固めているのだと予想できるわね」

「つまりどういう事だ?」

「つまり、あの王を裏切った方がお得だという事を理解させればいいのよ。私達が王族を捕らえる旨をしっかりと伝え、王家が居なくなったその時の初動で立場が手に入るかも? みたいな感じかしら」

「ふむふむ、まぁほとんど買収のような物だな」

「そうね、もちろん金貨をチラつかせるのも忘れないようにね」

「なるほど? というか霞は城内にいる者を拉致する事には異存は無いのか?」

「正直言って無いわね。王家を捕まえるのが速くなるならむしろ歓迎と言った所かしら」


 ふむふむ、拉致か… これは美鈴も呼んできて作戦会議をしないといけないな。

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