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誤字報告いつもありがとうございます。
異世界生活150日目
グリムズ王国ではどこにも寄らずに東へ向かい、今日の昼になってから俺達が冒険者登録した辺境の町に到着した。
なんだか懐かしいというか、こんな町だっけ?っていう印象が強いな。そういえば町の名前も思い出せないし。
「いやぁいつぞやの辺境の町だね、やっぱり来た時と違って直行で進んでいるから到着が早かった感じだね」
「そうね、こっちに来た時はこの町でも何日か狩りをしたし、途中で襲われてた馬車もいたし」
「ああ… あったねぇそんなテンプレ」
とはいえ、特に用事も無いのでスルー確定なんだよな。
「それよりも、なんだかんだとアニスト王国内をまともに行動するのは初めてなんだよな、情報収集もしておかないとな」
「そうだね、前回通った時は絶賛脱走中だったもんね、夜間に人目を避けるよう通ったから何も見えてなかったし」
「あれからもうすぐ5か月になるんだ、警備もしてないだろう」
「そうね、あの王ならもう忘れていそうだわ」
もうすぐ国境か… 確か国境から馬車で15日前後だったはずだから、車で移動すれば半分近く短縮できるはずだろう。道が悪いみたいで随分と馬車も揺れてたし、速度も全然出ていなかったからな。もしかしたらもっと早くに到着できるかもしれない。
しかし車についてはあまり人目に晒すのは良くないだろうな。その辺の民にならともかく、ちょっと豪華な馬車とかを見かけたら道を外れた方が良さそうだ。まぁこれはどこの国にいても同じなんだけどな、商人とかに見つかるとうるさいのなんのって… まぁ馬も無しに勝手に動いているように見えるから仕方がないんだろうけど。
ともかくだ、王があれだけ傲慢な性格してたんだ、当然アレに付き従う貴族達も同じような質なんだろうと予想できる。
つまり… 「なんだその乗り物は、ヨコセ!」ってな感じで絡んで来るんだろう、相手にしてられないよな。もうそれならいっそ…
「よし、国境を越えたら装甲車に乗り換えるか。何と言っても俺達にとっては敵国になる訳だ、防衛もしっかりしておいた方が良いと思うんだ」
「そうだねぇ、装甲車なら弓とかで攻撃されても大丈夫そうだし良いんじゃないかな?」
「それに上部ハッチから周囲の索敵も出来るから、順番に1人はそこで双眼鏡を見るのが良いかもしれないわね」
「うんうん、安全第一だね」
美鈴と霞の了解を得られたのでもう少し走ったら装甲車に交換だな、機銃も付いているし安心感が違うから気持ちも楽になるってもんだ。
ぶっちゃけどれだけの攻撃に耐えられるかなんて言うのは知らない、でも普通の乗用車よりは遥かに頑丈に出来ているはずだ。乗用車だと弓でさえフロントガラスに当たったら割れる所か貫通すると思うしな、うん、危険が半端ないね。
国境といっても明確な線が見えている訳でもなく、関所すら見当たらないので何となくもう越えただろうってポイントで乗り換える事にした。
1人は運転して1人は助手席で運転補助、そして1人が銃手席にて双眼鏡を片手に前方などを監視するというスタイルだ。やはり目視よりも双眼鏡の方が遠くまで見渡せるしな、後方は追いついて来れる馬車は無いだろうし、ブラッドウルフ程度でも大丈夫だろうという判断で、偶に後ろを見る程度だ。
そして配置だが… やはりというか、俺が運転席にいるんだよな。
「言っておくがそれぞれの配置は交代だからな?」
「もちろん分かってるよ。ただ銃手席は最初に座りたかっただけ!」
「その次は私ね、風に当たるというのも悪くないから楽しみだわ」
「あ、ブラッドウルフ発見! 撃って良いかな?」
「やめてくれ…」
まぁアレだ、いよいよ俺達はアニスト王国の国土へと侵入した。
その日はいつも通り夕方5時までしっかりと走り続けた。
想定通り各ポジションを2時間おきに交代しながら走ったが、やはり偶には運転席以外の場所も悪くないな。特に銃手席、皆がこの場所を好むのが良く分かる。
速度を上げると風がうるさく感じるが、何となく爽快な気分になって来るんだよな。時々双眼鏡を覗いて周辺の警戒をして、俺の担当する時間は過ぎていった。
それに美鈴も霞も運転が上手くなってきていて、俺が助手席についてあれこれ指導する必要もなくなっていたのは良い事だよな。これなら3台の車を使っての陽動作戦とかできるかもしれない、まぁ多分やらないけど。
道中町というよりは村といった規模の集落を見つけたが、満足に情報を集められないだろうという偏見でスルーした。その後は前方に見つけた馬車を回避するため、道から外れて大きく迂回しながら追い抜いたりと、なかなか運転手にとっては忙しい感じだった。
「もう5時になるよー、どうする?」
「もちろん終業時間に決まってる」
「王都に近づくまでは前回同様夜間の移動に切り替えた方が良いかもしれないわね、その方が距離も走れると思うわ」
「それも考えてはいるが、その前にどこかの町に入ってアニスト王国について調べないとな。正直言ってこの国の事何も知らないからな… 俺達は」
「それもそうね、せめて王都の広さとか規模だけでも知っていかないと着いてから苦労するでしょうね」
「うんうん、王城の場所は見ればすぐに分かるだろうけど、最低でも広さくらいは知りたいよね。まぁ侵入経路とかは現地で見ないと分からないけれど」
そう、何もわざわざ正面からドンパチする必要は無いからな、こっそり王城に侵入できるんならそれに越したことは無い。
もちろん一国の王が住まう場所だ、普通に考えてバレずに侵入なんて出来ないよう作られているんだろうけど、日本人の目線で見てどこか穴でも開いてないかを調べるつもりだ。
もちろんそれは俺達の現状での身体能力でって事だけどな、今の俺達であれば外壁を越えるくらいどうにでもなる。もちろんジャンプして越えるとかじゃなく、道具を使ってだけどな。
単純にロープをかけて登るにしても、アレって意外と体力と腕力を使うから日本にいた頃の俺では厳しかっただろう。
うん、そういった道具… 作っておかないとな。
現在運転手の美鈴が街道から外れだし、今晩泊まる場所を探し始める。この辺はそれなりに木が生えているのでそれほど場所に困る事は無さそうだ。
「到着~、本日の営業は終了しました!」
「はいよ、お疲れさん」
「早速夕食の準備に取り掛かるわ」
今日も何事も無く終える事が出来た、だけどこれからが本番だ。




