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異世界生活148日目
予定通りマイホームから出ると、そのまま徒歩でビリーカーンの町を目指して歩き始めた。
大体距離的には2~3時間も歩けば到着するだろう、歩く速度も速くなってるしな。
「いやぁなんか久しぶりだね、この町も」
「そうね… なんだったらミスリルゴーレムの手足でも拾いに行く?」
「んー、でも前回拾ったやつもまだ残ってるんだよね、使い道無くない?」
「そうとも言えるわね」
まぁそうだな、いくら希少金属であるミスリルとはいえ、現状使い道が無いのは事実だ。マイホームの製造で素材として使えるんならいくらでも拾いに行くんだけど… さすがにそんな機能は無いようだ、残念。
総ミスリル製の装甲車とか強そうだと思うんだけどなー、弾丸をミスリルにするのも良いかもしれないし… 夢が膨らみそうなんだけど無理な物は無理だ。
想定通り2時間と少しで町に到着し、門をくぐってギルドに向かう。久しぶりに来たけど何となく道のりは覚えているもんだな、特に迷う事も無く進む。
「ギルドに着いたねぇ」
「そう言えば昨日の紙、ちゃんと清書したんだよな?」
「したよー、霞が」
「ええ、私が清書して、おじさんが用意してくれた封筒に入れて封をしたわ」
「そうかそうか、お疲れさん」
そう、紙とかそういった備品は製造で作れるのだ。異世界ではあまり使わない系の物だったので今までスルーしてきたけど、紙とボールペンなどはマイホームのロビーに常備している。
席を外すけど伝えたいメッセージがある時とか、メモがあれば便利だもんな。ただ封筒はね、この世界にいれば普段使うことは無いため急遽製造した物だった。
霞が業務用の茶封筒をピラピラしながら見せてくれているが、封はしっかりとされていて今から開けるのは無理な状態だった。
「よし、それじゃギルドで話を聞いてみて、レイコに渡してもらえるよう伝えるか」
「了解! その後はどうするの? ダンジョン入っちゃう?」
「いや、用事が済んだらすぐに行った方が良いだろう。マインズの町は素通りの予定で」
「そうね、この町は鍛冶屋もギルマスも感じ悪い人だったし、長居はしたくないわね」
そうだった… ふざけた態度の鍛冶屋に俺達の情報をハワード伯爵に売ったギルドマスター… そいつらがいたから早々にこの町を出たんだよな。
でも結果的にはこの町を出た事は悪い事じゃなかったけどな、王都では魔道具の事を少し知れたし、王都を起点にしてコベルコダンジョンにも行けたしな。
まぁともかく、ギルドに到着したのでさっさと用件を済ませてしまおう。
「私が話をつけて来る?」
「いや、これしか用事は無いんだからみんなで行こうじゃないか。依頼表見たって仕方がないしな」
霞が1人で行こうとしてたので、それを止めて全員で受付に行く事にした。
しかしここのギルドは午前中だというのに結構冒険者が残ってるな、ダンジョンは別に時間が関係ないからいつ行っても同じだからかもしれないが、依頼表は朝に張り付けられるから割のいい仕事はすでに無くなってるだろう。
それなのにギルドに残っているなんて、今日は休みの連中か夜通しダンジョンに入ってた連中って事になるのかね… ああ徹夜で仕事なんてブラックにも程があるだろうに。
「ちょっと良いかしら」
「冒険者ギルドビリーカーン支所にようこそ。って、カスミさんじゃないですか! お久しぶりですね」
「ちょっと聞きたいのだけど、レイコという冒険者はここのギルドに出入りしているかしら?」
「レイコさんですか? 来てますよ。5~60階層の素材を持って来てくれています、現在の稼ぎ頭ですね。カオリさんと一緒に今日もダンジョンに入っているはずです」
「カオリも一緒に? レイコ1人じゃなかったのね」
「最初はレイコさん1人でダンジョンに潜っていたんですけど、いつの頃からか2人で潜るようになっていましたね。3日ほど前に素材を売りに来て、今日からまた潜っているはずですよ」
「そう… それじゃあレイコに渡してもらいたいものがあるのだけど、ギルドで頼めるかしら?」
「渡す物ですか? それだとギルド宛に依頼を出すという形式になり、依頼料が発生しますけど… 大丈夫ですか?」
「そうなのね、もちろん構わないわ。ちなみにおいくらかしら?」
「依頼料は物の大きさと重さによります」
ふむ、なるほど。ギルドも慈善事業じゃないもんな、物によっては倉庫の邪魔になる事もあるだろうし、合理的だ。
「頼みたいのはこの手紙なのよ、軽いし小さいと思うけど値段を教えてちょうだい」
「あー… これでしたら銀貨1枚ですね。最低基準がこの金額なので、手紙一つでは高いと思われると思いますが…」
「いえ、それで構わないわ。それじゃあお願いするわね」
「確かに… 承りました」
「もう一つ、レイコは一度ダンジョンに入るとどのくらい潜ってるのかしら?」
「そうですね、大体1週間から10日といった感じでしょうか」
「そう、じゃあ間違いなく渡してね」
「はい、お任せください」
話が終わり受付から離れ、そのままギルドから出てきた。
「そっか、カオリもこっちに来てたんだね… まぁ受付嬢の様子だとあの2人に問題は無さそうだし、元気そうみたいだね」
「そうね、それならそれで良いと思うわ。それにカオリがここにいるんだったらマインズの事は気にしなくても良さそうね」
「そうだな、寄るつもりは無かったけど、元気にしてるならそれでいいさ。確認できただけで十分だ」
「じゃあ後は、アニスト王国の王都まで直行だね? 途中の町にはどうする?」
「途中の町はどうするか… まぁアニスト王国の国家としての力量を知るには何か所か寄って確認した方が良いだろうな」
「出てくる時は何も見れなかったから、確かにそこは気になるわね。でもあの王から察するに、重税で民を苦しめているような感じしかしないわ」
「まぁな。まぁどうせ移動だけだと飽きるだろうし、気分転換できれば良いって程度で良いんじゃないか?」
「うーん、でも重税を課された町を見て逆にストレスだったりしてね」
うむ、それは確かにあるかもしれない。しかしまぁグリムズ王国ともそれほど離れていないしそこまでの変化は無いんじゃないかと思っている。
確か王都から国境まで馬車で15日程だったはずだ、国民だっていよいよとなれば逃げだせる距離なんじゃないかな。まぁ先祖から受け継いできた土地を手放すのは難しいかもしれないけどな。
そんな訳で、用事も済んだのでさっさと町から出てしまう。ビリーカーンの町の滞在時間は1時間程度だった。




