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 遠くから見えていた森っぽい所、森なんてもんじゃなかったよ。大森林と言っても差し支えないほど先が見えないほど深かった。

 道に迷わないように木に傷をつけながら進み、周囲を警戒する。


「んっ なんかいるよ 動きが速いからブラッドウルフかも! 単独で移動中!」


 ほんの少し先行していたカオリが声を出して戻ってくる。素手の霞と盾を持った俺が入れ替わり前衛になり、美鈴とカオリが中衛、最後尾にレイコという配置でブラッドウルフが視認できるまで進む。


「おじさん、銃を使うのを待ってもらっていいかしら。 相手が単独なら1対1をしてみたいのよ」

「それはいいけど…危ないと思ったら介入するってとこが妥協点だな」

「ええ それでいいわ。そう思われる前に倒してみせるわ」


 これも異世界補正なのか… 霞もなんだか好戦的になってるよな。見た目は真面目そうな委員長キャラなのに…

 聖女ちゃんもいる事だし多分大丈夫だろう。


 真っ赤な毛皮で体長が150センチ程、結構でかいし重そうだ… こっちは5人いるが、弱そうに見えるのか、特に迷う事も無く飛びかかってきた。


「ふんっ!」  


 ドゴッ!


 先頭にいた霞に向かって放たれた狼パンチをスルっと回避し、がら空きだった側頭部に正拳を撃ち込んでいた。とてもじゃないけど生き物を殴った音には聞こえなかった。

 そんな霞の正拳を受けたブラッドウルフは生きてはいるが、意識が朦朧としているのか… 荒い息使いのまま体を横たえて動かない


「レイコ! 氷系の魔法を頭部に!」

「おまかせー えいっ!」


 レイコが差し出した指先から氷の塊が放たれ、ブラッドウルフの頭部を貫通した。完全に息絶えたようだ。


「結構手加減したけれど、ブラッドウルフにはこのくらいで十分みたいね」

「手加減してたの? あんな重そうな獣が吹っ飛んでったけど」


 霞に殴られたブラッドウルフは見た感じ体重は軽く2~300㎏くらいありそうなんだけど… 怖いなこの子。


「そうね、割合でいったら半分も出してないわ。破裂とかしたら嫌じゃない?」

「ソウデスネ…」

「みんなはどうだった? ブラッドウルフくらいなら分散しても平気じゃないかしら。登録料は借金してるようなものだから、早めになんとかしたいと思ってるけど おじさんはどう思う?」


 霞の言葉にカオリとレイコはうんうんと頷いている、大した脅威に見えなかったって事かな。まぁそれよりも迷う事も無く顔面パンチする霞に、軽い調子でとどめを刺したレイコ…生き物を殺すという事にさほど抵抗を感じていないのかね。


「分けるにしてもどうしようか、というか美鈴は大丈夫か?」

「え? ああ私は大丈夫だよ。ただ私の攻撃手段は銃のみだから爆音注意ってくらいかな」

「そうか、それじゃあ俺と美鈴がセット、霞とカオリレイコの3人で分かれるか。サイレンサー付けてるとはいえ、爆音はまとまってた方が良さそうだしな」

「私はそれで構わないわ」


 カオリとレイコも頷いているのでそうしよう


「それじゃあ今日はこのくらいにして一度マイホームに戻ろう。 分散して動くんなら連絡手段の確保と位置情報がわかるものを調べてみないとな。こんな森の中で迷ったらヤバイだろ」

「それもそうね、これだけ深い森なら目印付けても迷いそうだわ」


 日が暮れる前だけど全員マイホームに入る事にした。それぞれ訓練するためにトレーニングルームへ入っていった。

 やる気があるのは良い事だけど、なんかみんな好戦的だよなー。日頃のうっ憤を晴らすかのように… まぁいいか。


 さて、まずは連絡手段だな。出力が高めのトランシーバーに、片耳イヤホンのヘッドセットを付けたインカム。それでも有効範囲は遮蔽物が無い状態で200m前後か… おお、中継アンテナがあるのか、高い場所にセットすれば3~400mくらい電波が届くようになると、って事は… 中継アンテナをベースポイントにして、両サイドに向かって探索すれば結構範囲が広くなるな。

 よし、これを制作っと。

 後は位置情報か、発信機と受信機とかないかなー… うん、ないな。原始的だけど方位磁石なら作れるからそれでいこう。後はセンサー?SF映画でよく見る自分を中心に動く物を捉えるタイプのがあるのでそれもっと。



「と、いう訳で 出力の高いトランシーバーと普通の方位磁石を作った。中継アンテナを設置した場所を中心地として索敵しようと思う。トランシーバーの機能で中継アンテナから届く電波の強弱が分かるようになってるから、それを基準に離れすぎないようにやる事にしよう」

「方位磁石ってなんか懐かしいね、小学生の時に見た記憶あるわ」


 まぁそうだろうね、今時はみんなGPS使うから、方位なんか調べなくともどうにでもなってたもんね。


「それじゃあ明日は朝から狩りに出るという事で、借金返すのと戦闘経験を積むために効率よく行こう。後はゴム手袋と皮手袋ね、狩った獲物を素手で触りたくないだろ? 最後に獲物の運搬用のリヤカーに電動モーターが付いてるやつ、引く力が少なくて済むから 進む道は考えるようにな」


 そんなこんなで寝る事にした。異世界生活19日目… とりあえず順調と言ってもいい感じかな。



 翌朝、朝の支度を済ませ外に出る。森で索敵しながら狩りをするなんて、当然だが全員初体験。 安全を考え、中継アンテナを設置したのは森の切れ目が視認できる所で、森の外側にもカラースプレーで目印を付け、遠くからでも分かるように旗まで立ててみた。最悪アンテナの位置がわからなくなっても森から出ればなんとか探し出せるようにするためだ。心配性かな? 俺1人ならどうにでもなると思うんだが相手は子供だからなぁ。 


「さーて それじゃあ行こうか。ノルマは特に設定しない、安全第一でな」

「おじさんも気を付けてね」

「俺は大丈夫だろ、聖女ちゃんいるし」


 軽口を叩いてから出発した、中継アンテナを基準に東に向かって進みだした。


「センサーのスイッチオンっと、 おお 早速動いてる物があるな 警戒してくれ」

「わかったよ、誤射して私を撃たないでよ?」

「お互い様だろそれは」


 美鈴もあまり緊張はしてないようだ、センサーを頼りに近づいて行くと途中から異臭を感じた。こっちは風下だったんだな、態勢を低くして進んで行くとブラッドウルフが2匹何かを食べていた。これはチャンスか?


「俺は右側を狙う、美鈴は左側で」


 小声で言うと美鈴が頷いた、距離にして20メートルくらい…練習なら当たってる距離だ、しかも相手は動いてない。右側のブラッドウルフに照準を定め、左手で指折りカウントダウンを始める…

 5、4、3…


 パパン!


 ほぼ同時に撃つことが出来て、しかも命中している。1発で仕留められたようだ。素人がこんな簡単に当てられるとは思っていないが、異世界補正で強化された身体能力がうまいこと作用してるんだな。それに銃弾1発で仕留められるってわかったのも良い事だ。

 センサーで周囲を確認しつつリヤカーにブラッドウルフを2匹載せる。


「ああ、血抜きしないと肉がまずくなるんだっけ」

「そういえばそうだね、 それじゃあここで血抜きして 匂いにつられて来た奴を狙い撃ちにする?」

「その手もあるな、それで行くか。 後、無線で血抜き忘れないようにって伝えといて」

「りょーかいっ」


 一度リヤカーに乗せたブラッドウルフをまた下ろす事になった。

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― 新着の感想 ―
2~300kgとかサイズ2~5mクラスの重さを軽々扱うのは設定雑過ぎません?
[気になる点] もぐもぐ [一言] 奴らかなぁ ガクブル
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