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誤字報告いつもありがとうございます。
蹴りだされたダンジョンコアはコロコロと倉庫の方へと向かってくるが、俺の方が待ちきれなくなって手でダンジョンコアを押していき、倉庫の中へと収める。
「回収完了! 急いで撤退するぞ!」
「「了解!」」
台座からダンジョンコアが離れた瞬間から、小刻みな地震のような現象が始まっていく。それが次第に揺れが大きくなり、いよいよ崩壊が始まったようだ。
今回は転移陣がある扉を最初から開けているし、転移陣がある場所も知っているので特に慌てることは無かったな。さすがに2回目だしね。
3人揃って転移陣に乗り、陣が発動して一瞬の間に1階層へと辿り着く。グラグラと揺れているけどお構いなしで出口に向かって小走りで進み…
「やったー! 外だー!」
「ああ、やっぱり明るいって良いわね。それに風の匂いも」
「おいおい、外の空気に浸る前にこの場から離れるぞ。多分すぐにダンジョンは崩壊して騒ぎになる」
「それもそうね。でもダンジョンが崩壊した時に、ダンジョン内にいる他の冒険者がどのように外に放り出されるかは見ておきたいわ」
「まぁそれは… 俺も気になるな」
ダンジョンの出入り口から距離を取りつつ、周囲の様子を伺えるようなポジションに落ち着き事態の経過を見つめる。
コベルコダンジョンのように不人気すぎて冒険者が誰も来ないって場所ならともかく、ここのダンジョンは結構な数の冒険者が探索をしているからな… ギルドにあった資料では、ダンジョンコアを破壊後に外に放り出されたという記述があったが、一体どんな感じでその現象が起きるのか… 気になる。
美鈴も霞も気になっているようで、収納からお茶を取り出して飲みながら見ている。いいな、俺もお茶にするか。
ゴゴゴゴゴゴ!
「危ない! 急いでダンジョンから離れるんだ!」
「うおおおお! 一体何が起こってるというんだ!?」
「とにかく下がれー!」
出入り口付近にいた冒険者やギルドの職員が大騒ぎをしている姿が目に入り、地鳴りがひときわ大きくなったと思ったら… まるでウォータースライダーからプールに飛び出してくるかのように、大量の冒険者がポイポイって感じで文字通り外に放り出されていた。
「うわぁ… アレはダメだね。即行で撤退して正解だったよ」
「そうね、アレだと着地点でもみくちゃになってしまうわ。他の人の上とかに落とされるのはちょっと嫌よね」
「すっごい嫌だね」
美鈴と霞は目の前で起きている現象を見ながら嫌そうな顔をしているが、全くその通りだなこりゃ。まぁ中にいる人間が無事に外に出てこれるっていう点だけは良いと思うがね。
「よし、それじゃあとりあえず東の方に向かって移動するか」
「そうだね、アニスト王国に向かうルートも煮詰めないといけないし。とりあえず宗教国家は完全スルーだよね?」
「ああ、一度グリムズ王国サイドに入った方が安全だろう」
「この場所から北上したら、グリムズ王国のどの辺に出るのかしらね」
「うーん… 地図が曖昧だから何とも言えないが、アベマス領あたりなのかもしれないな。まぁそれでも構わないと思うけど、一応森の中だって途中で崖があったりしたら面倒だろ? だから来た道というか、その辺で良いんじゃないか」
「そうね、そうしましょう」
そんな訳で、多くの冒険者達の騒ぎを尻目にその場を立ち去るのだった。
「さて、大体前回と同じようなルートで進もうと思っているが、森のどの辺から出てきたかなんて覚えられるわけないからそこは適当に入ろうと思う」
「まぁそうだね。確か前回通った時は10日か11日くらいかかったよね」
「そうね、斜めに進んでいたからかもしれないけど、長い間森の中にいた記憶はあるわ」
前回の事を思い出しているのか、美鈴も霞も顔を顰める。まぁそれは仕方がないよな、森の中と言えば端的に言って虫の宝庫だ。女子高生で虫が大好きなんて子は中々いないだろうし… 今回も虫除けが大活躍しそうだな。
そして猿っぽい魔物に蛇の魔物が遭遇率が高かった気がするな、草むらの見えない所からの奇襲的噛みつきには要注意だな。
「そういえば、前回途中から美鈴の障壁を使って戦闘を無視する方法があったわよね」
「そうだね。あれならいつでも使えるし、奇襲にも効果があるからどんどん使って行こうよ」
「それには賛成ね。障壁があれば木の上から落ちてくる虫にも対応できるから、心配事が減るのが良いわね」
「あー… そういや蛭みたいのが結構落ちてきてたな。アレは確かに気持ち悪いもんな」
「気持ち悪いのもあるけれど、病気を媒介してたりする可能性だってあるわ、回避できるなら全て回避した方が良いと思うの」
「賛成! 私も虫は好きじゃないから!」
「まぁそうだな、それで行こうか。んじゃまずは… 今日の移動なんだけど、車種はどうする? 2人にも運転させようかと思っているんだが」
「ええ?」
「私が運転するのであれば、まだまだ未熟だから視界の良い車が良いわね。だとするとエス○ードかしら」
「ああ確かに、軽じゃ狭いしワゴンは大きいし… 装甲車は楽しいけど運転するとなれば別だよね」
「そうか、それじゃあエス○ードにするか。晩まで東に向かって走って定時で休み、明日はその場所から森に入って行こう。一応北東を目指してになるな」
「了解だよ。じゃあ森に沿って移動する感じだね?」
「そうだな、その方が迷う事も無いし間違いないだろう。それに森に近い方が通行人もいないしな」
「それもそうね、朝から車で移動となると、途中で馬車とかにも遭遇するだろうから街道は避けるという事ね。オフロード車だし多少荒れていても大丈夫という訳ね」
「多分な… まぁ通れないような場所があればさすがに避けるけどな」
とりあえず車庫へと続く扉… というかシャッターを出して持ち上げる。中の広いスペースに、初期の頃活躍してくれたジ○ニーがあり、その隣に今回使うエス○ード、ハイ○ースと続き、そして装甲車が並んでいる。やっぱり荒れ地にはRV車だよな、ワゴン系じゃ跳ねまくって全く落ち着けないから…
そんな訳で車両をガレージから出して準備をする。うん、燃料はちゃんと入っているね。
「よし、それじゃあ出発と行くか」
「「了解!」」
そして即行で後部座席に乗り込む美鈴に、助手席へと座る霞。あれ? 俺はアンタらに運転させるって言ったよね?




