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誤字報告いつもありがとうございます。
16時45分、どうやら待ち合わせ場所に戻ってくるのが少々早かったようだ。まだ誰も戻ってきてはいない。
しかし今日は、戦闘技術について色々と考察しながら戦ってたせいかドロップアイテムが多かったな。通常バナナが7本にブラックチェリーが1個、そしてなんとバナナスカーレットまで1本拾ったのだ! ちょっと運が良すぎないか? 果たして女性陣がどれだけ拾って来ているかで、ボス討伐後の動きが決まってしまうな。
逡巡する暇は無いって事かよ…
まぁ元々やるって決めてた事だ、それが早くなるだけ。しかしいよいよもって国家相手に戦争か… 俺も若さに流されてしまったかな? でもこれはやっておかないと今後の為にならないからな、自国の兵を損耗させる事無く召喚した異世界人だけに戦争をやらせるなんて、そんな事はあってはならないからな。別に正義感なんて大して持ち合わせちゃいないが、アニスト王国のやり方にはうんざりだからやるしかない。
「いい加減覚悟を決めろ! おっさんらしく飄々として前に進まないと若者の心に傷が付く」
自分の頬をパンパンと2回張り、昔ながらの気合を入れてみる。
ここは日本じゃない、生きるためには殺さなければいけない時があるんだ。偽善だろうが独善だろうが何と言われても構わない、今の自分と俺について来てしまった若者の未来のために!
ちょっと格好良い事を考えてしまった気がする… 実際にはただビビっているだけのおっさんなんだがな。まぁそれくらい、思うくらいは良いだろう。多分アレだ、大義は我にありってやつだな。
「うわぁ、おじさんがなんか気合入れてるよ… 一体どうしちゃったの?」
「うおぉぉ! いつの間にそこに?」
「今来た所だけど、気づいてなかったんだ」
「ちょっと考え事をしててだな…」
振り向くと美鈴が立っていた。
どうして美鈴も霞も気配を消して俺の背後に立つんだろうな… まぁ気づかない俺が未熟だって事なんだろうけど、全くもって心臓に悪いぜ。
「それで? 気合注入するほど何を考えていたの?」
「いやぁ、決戦は近いなって思ってただけだよ。ああ、ボスじゃなくてアニスト王国な」
「なるほど、つまりボス部屋の扉が開いたと?」
「いや、それはまだ確認していないな。ただブラックチェリーとバナナスカーレットが手に入ったから、このダンジョンでの用事が減ったなって思ったからだな」
「あ、ドロップしたんだ? 私もバナナを1個拾ったよ、おじさんは何個?」
「俺も1個ずつだな。バナナはともかくチェリーを3個って言うのが目標だったろ?」
「うんうん。後は霞が拾って来ているかだね… それにしても今日に限って私もおじさんもレアドロップするなんて、やっぱり周期とかあるのかもね」
「ああ、これで霞も拾ってきたって言うなら信憑性が増すよな。今は16時55分か、今日は霞が遅れてるな」
「まぁ霞なら怪我して戻って来るとかの心配は無いから大丈夫じゃない?」
「まぁな、油断する性格でもないしな」
待っている間に美鈴からバナナを預かり、梱包して倉庫に入れておく。もちろん俺が拾ったものも同様だ、1ヵ所にまとめて置いておかないと後で訳が分からなくなるからな。
これで現状の在庫はっと… ゴールドアプルが2個、バナナスカーレットが7個、ブラックチェリーが3個だな。いやいや、結構あるんじゃないか? 5年若返るアプルとバナナで計9個、この時点で45年分もあるじゃないか! チェリーと合わせれば48年分かぁ…
俺を2人と近い年齢になるくらいにしたいって言っていたから、仮に23年分俺が若返ると17歳になるって事か。青春時代真っただ中の頃だな… そして残るのは25年分、5年の物が5個って事だよな。つまり3人だと割り切れないって事になるな、まぁ霞が何か拾って来てたらまた変わるんだが。
「ごめんなさい、ギリギリになってしまったわ。ちょっと奥まで行き過ぎてしまったようね」
「お帰り!」
「お疲れさん」
霞が戻ってきた。時刻は16時58分だ、まさにギリギリ。まぁあくまでも待ち合わせの時間にってだけだがな。
「今日は良く分からないけどドロップが多かった気がするわ」
「あーやっぱり? 私も大して狩れていないのにバナナスカーレットを1個拾ったし、おじさんはバナナとチェリーを1個ずつだって」
「そうなの? 私はゴールドアプルが1個にブラックチェリーも1個、通常のバナナが10個くらい拾ったわ。とりあえずゴールドアプルとブラックチェリーはおじさんに渡しておくわね」
「ああ、丁重に保管しておこう」
「それじゃあボス部屋の扉を確認して夕食の準備をしよっか」
霞もまた貴重なレアドロップを拾って来ていた。これでゴールドアプルが3個、バナナスカーレットが7個、ブラックチェリーが4個で計54年分。
いやはや結構集まってしまうもんだ、さっきの計算だと俺を17歳にしたとして31年分が残る訳だ。1人頭10年分の在庫と1年分は誤差って事で片付きそうだな、まぁこれは後で話し合いをしないといけないな。
マイホームに入る前にボス部屋の前まで移動し、開くかどうかの確認をしてみる。はい開きません、終了です。
前日と同じようにボス部屋の真ん前でマイホームへの扉を出して中に入っていく、これで明日の朝の確認も楽になるね。
夕食の準備を女性陣に任せて製造のモニターを眺めてみる。対人戦闘という事で、何かスプラッターにならないような武器が無いかと気になったからだ。
以前はこんな事考えないで、対魔物用の殺傷力を重視して見ていたからそれ以外の武器については良く覚えていないのだ。
やはり軍が相手となるだろうから、相手はほぼ鎧を着ていると想定しても良いだろう。そういえばあの手の鎧ってやっぱり鉄なのかな? それであればスタンガン系統の武器が猛威をって思うんだが… まぁ希少といえどもミスリルとか知らない素材があるんだし、決めつけない方が良いか。
「おじさん、ご飯の準備が出来たよ」
「おっ、そうか、今行くよ」
いつものように気配を感じさせずに背後に立つ美鈴… 本当にどっきりするから止めて欲しいんだが。
「何を見てたの?」
「ああ、対アニスト王国に向けてちょっとな」
「軍隊というか、騎士を相手にするための対策?」
「そうだな、何か良いネタは無いか?」
「そうだねぇ… 大人数を手早く無力化するとなると、やっぱり暴徒鎮圧とかに使う催涙弾? ああでも、それだと動きは止められるかもしれないけど無力化という訳じゃないか。まぁ霞からも話を聞いてみようよ」
「そうだな、腹も減ったし」
話を中断して夕食を取りに向かった。




